最近旦那の様子がおかしいのだけどこちらから関わる気はございません

塩沢ぷじゃん

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 目的地である、邸から程よく離れている緩やかな丘に降り立った時、私は何かに引っ張られるように駆け出していた。

 息を弾ませながら辿り着いたのは、小さな滝の流れる池がある場所だった。先ほどの丘とともにお気に入りだった場所。
 腹が立った時も、落ち込んだ時も、思案に暮れた時も、気持ちを鎮めるまで、心を決めるまで何時間でもここにいた。
 王宮に出仕するよう命じられるまでよく来ていたのに。王族や貴族の振舞いに嫌悪感を抱き、はならないと決意をしていたはずなのに……
 全て忘れて嫌っていたはずの王侯貴族の枠にはまっていただなんて、私は、私こそいったいどうしてしまっていたのだろう!


 ガサリと音がした方へ振り向く。カミーユとマキシムが追ってきていたようだ。

「こんなにきれいな所があったんだなぁ」

 派手な印象を与える金髪に、切れ長で青みの強いやや小さな瞳、細めの鼻に薄い唇とが相まって冷酷な印象を与えるその顔には、いかにものんびりとした和やかな表情が浮かんでいた。
 かたわらには柔らかな色合いの金髪にまだまだ可愛らしい幼さを宿したぷくぷくの頬、くりっとした黒目は眼前に広がる美しい景色を映して輝いていた。
 愛すべきその存在を抱え上げる。喜色に満ちた表情を浮かべるカミーユを見て、これまで寂しい思いをさせてしまっていたことに胸が痛んだ。

「カミーユ、ここは母さまのお気に入りの場所なのよ。素敵でしょ!」

 そのままマキシムの方へと顔を向ける。

「あなたも、ここに連れてくる事ができて嬉しいわ」

 皆でしばらく景色を眺めて過ごした。独りで居た時より木々の緑も水も色鮮やかにえていた。


 小高い丘に戻ってきた私たちはそのままそこで昼食を取る。

「かーさま、これ、とーさまといっしょにつくったんです!」

 カミーユは敷物を広げた上にメイドから手渡された籠を置く。中にはいろいろな種類のサンドイッチが入っていた。
 その内の一つを手に取り口に入れる。

「とても美味しいわ、カミーユ、ありがとう。マキシムあなたも」

 いつの間にかマキシムに対しての疑念はどこかへ消えてしまっていた。私がこうして変わったように──元に戻ったというべきかしら──彼も変わったのだろう、おそらく、あの時から。
 そばに来たそうなカミーユを膝に乗せて食事をとる。侍女たちが目を白黒させているが貴族のマナーなど知ったことではないわ。もちろん公私の区別はつけるつもりだけど。これからはでろでろに溶けるくらい愛を注ごう。かつて心に決めていたように。


 帰り際、従者に目をやるとニマニマとした笑顔を向けてきた。私が元々どんな人間か知っていた彼には、なることは分かっていたのだろう。
 結局、私が警戒していた事は伝わってなかったのだが、今となってはそうならなくてよかった、なって良かったと心の底から思えた。
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