追放薬師は人見知り!?

川上とむ

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第五部 薬師学校の先生になります!?

第11話『薬師、同類と出会う その2』

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 そのままの流れで授業が始まるも、わたしは特になんの準備もしてきていない。

 ルシアン先生によると、わたしは今日一日、授業を見学する形になるそうだ。

 ちなみにルシアン先生の専門は薬材学で、今日の授業も薬材の採取地やその効能についての解説が主だ。

 淡々と進みゆく授業を聞きながら、わたしは手元のクラス名簿を確認する。

 先程おちゃらけた質問をしてきた男子生徒は、コルネウス・ワイルズ。薬材を中心に扱う商家の三男で、準貴族の家の子になる。

 同じくわたしに質問をしてきたポニーテールの女子生徒が、ナタリア・マルト。この街で一、二を争う大商家マルト家の次女で、このクラスの委員長らしい。

 そして、例の窓際の席の女生徒……彼女はフィオナ・オルネ。平民の出身で、飛び級でこのクラスにやってきている。

 ……見れば見るほど、本当に様々な身分の生徒たちが集まっている。

 一見同じ制服に身を包んでいるけれど、身につけているちょっとした小物や文房具で、身分の差が垣間見える気がする。

「それでは、シロイモの特徴について誰かに答えてもらいたいのですが……エリン先生、好きな数字はありますか?」

 そんなことを考えていた矢先、ルシアン先生の声が飛んできた。

「えっ、そ、そうですね。7ですかね……」

 唐突な質問に、わたしは頭に浮かんだ数字を答える。

「それでは、生徒番号7番、答えてください」

「は、はいっ……!」

 やがて椅子から立ち上がったのは、フィオナさんだった。

 どう見ても焦っていて、立った拍子に椅子が大きな音を立てる。

 その反応を見て、ルシアン先生は明らかに『しまった』という表情をした。

「シ、シロイモは……日当たりの悪……いて、細い葉が……球根の……」

 フィオナさんは説明を始めるも、その声は消え入るようで、ほとんど聞き取れなかった。

 さらに目が泳いでいて、遠目でもわかるくらい大量の汗をかいている。

 ……あれ、あの状況、すごく見たことあるような気がする。

「聞こえませーん!」

「ひぃっ、す、すみません……」

 直後、コルネウス君から野次のような声が飛ぶ。

 フィオナさんの声はますます小さくなり、その顔は今にも泣き出しそうだ。

 ……間違いない。彼女は人見知りだ。

 まるで自分自身を見ているような気分になりながら、わたしは状況を見守る。

「フィオナさん、聞こえませんわよ。もっと大きな声で、自信を持ってお話しなさい」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 続いて、サンドラ様がフィオナさんを睨みつける。

 その眼力に気圧されたのか、フィオナさんは何度も謝りながら席に座ってしまった。

 指名されたフィオナさんが沈黙してしまったことで、その場はなんともいえない空気に包まれる。

 ああ……わたしには、あの子の気持ちがわかる。

 皆に注目されればされるほど、何か言おうと思えば思うほど、頭が真っ白になって声が出なくなるのだ。

 ……とても他人事とは思えなかった。わたしは自然と口が開く。

「シ、シロイモは、日当たりの悪い場所に群生する、細葉が束になった見た目をした植物です。細い葉を持つ植物は多々ありますが、シロイモは青紫色の実をつけるのが特徴で、球根状に肥大した根を薬材として使います。街の路地裏にも生えていて、比較的安全に採取できる薬材の一つですが、街で採れるものは土の栄養の関係で総じて品質が悪いです。その根は淡い黄色をしていて、えぐ味があり、食用には向きません。食べると口の中がしびれたようになります。薬効としては吐き気止めや咳止め、消化不良、不眠に効果がありますが、強い薬材なので使用時はジャールの根とセットで……」

「あの、エリン先生?」

「……はっ」

 そこまで一気に話したところで、ルシアン先生の声で我に返る。

「す、すすすみません。つい、熱が入ってしまって」

 わたしは平謝りし、壁際へと移動する。

「いえ……教科書も見ずにその知識量。おみそれしました」

 ルシアン先生が感服した様子で言うと、誰からともなく拍手が巻き起こる。

 先程まで顔を伏せていたフィオナさんも、その大きな目を見開いて拍手を送ってくれていた。

 嬉しいやら恥ずかしいやら、わたしはなんともいえない気持ちになったのだった。
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