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第四部 また追放されました!?
第2話『薬師、前途多難』
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やがてルークリッド村に到着し、わたしは村の代表者さんと会うことになった。
「いやー、お話はうかがっておりますよ。村長のウィゼルです。遠路はるばるご苦労さまでした」
「ど、どうも……エリン・ハーランドです……」
村で一番大きな建物に招き入れられ、村長さんと挨拶を交わす。
さっそく人見知りが発動していた。村に着く前に胃腸薬を調合しておいたのだけど、すでに胃が痛い。先に飲んでおくべきだった。
ちなみにレリックさんは村の商店に品物を卸すと、足早に別の街へと旅立ってしまった。
つまり、今は完全にわたし一人だ。
「聞けば、エリン様は王家お抱えの薬師様とのこと。我が村の工房を、何卒よろしくお願いいたします」
「は、はい……誠心誠意頑張ります……」
まったく視線を合わせられないまま、村長さんとの会話は続く。
「あの、この村の薬師工房のオーナーさんは、どんな方なのでしょうか。亡くなった前任者の、あとを継いだとうかがったのですが」
「そ、そうですな。ロヴェルは……多少変わっておりますが、きっとなんとかなるでしょう」
おずおずと尋ねてみると、村長さんはどこか言いにくそうにそう教えてくれた。
……変わっている? それってどういうこと?
「それでは、さっそく薬師工房のほうへ行かれてください。ここから少し離れていますが、看板が出ているので、すぐにわかりますよ」
一応、話は伝えてありますので……と、村長さんは続けた。
えぇ、一緒に来てくれないんだ。
なんともいえない不安に襲われながら、わたしは村長さんの家を出て、村へと繰り出した。
……へっぴり腰になりながら、わたしは村の中を進む。
この村は周囲を深い森に囲まれていて、木々の間に溶け込むように、木造建築の建物が並んでいる。
生活用水は森から流れ出る小川の水を使っているらしく、各家々に小さいながら畑もある。
その畑は害獣被害を防ぐためか、どこも立派な木の柵が張り巡らされていた。
……あれ?
そんなふうに村のあちこちを見て回っていると、あることに気づく。
いたるところから、視線を感じるのだ。
わずかに空いた家の窓から。もしくは建物の陰から。
自意識過剰とかそういうものではなく、確実に見られている。
……田舎の村だし、外から人が来ること自体が珍しいのかな。
……頑張れエリン。負けるなエリン。
そう自分を励ましながら視線に耐え、やがて目的の薬師工房へとたどり着く。
そこには古い看板があって『ニグラード工房』と書かれていた。
どうやら、ここで間違いない。
「あの、こんにちは」
できるだけ大きな声を出して、扉を叩く。反応はない。
……誰もいないのかな?
「あの、こんにちは!」
もう一度、声を振り絞る。普段出さない音量だったせいか、明らかに裏返っていた。
それでも、反応はなかった。
おかしいなぁ。村長さん、話は伝えてあるって言ってなかったっけ。
不思議に思いながら扉に手をかけると、何の抵抗もなく開いた。
鍵がかかってない。いくら田舎の村でも、さすがに不用心……。
「来たぁ!」
「おばーちゃんの工房に入るなー! ヨソモノー!」
直後に二つの声が聞こえ、家の中から色々なものが飛んでくる。
「ひいいっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
次から次に向かってくる薬瓶や薬皿から頭を守りつつ、わたしは全力で家から飛び出した。
そのまま勢い余って地面を転がったあと、工房の入口を振り返る。
そこには、まるで鏡写しのようにそっくりな少女が二人、仁王立ちしていた。
見た目は10歳くらいで、どうやら双子らしい。
「ニーナちゃん、ミーナちゃん、いきなり追い返したらかわいそうだよ」
そんな少女たちの背に隠れるように、青い髪の女の子がわたしを見ていた。
「メアリー、よそから来た人は、おばーちゃんの工房を乗っ取ろうとする悪い人なんだって」
「そうだよー。ロヴェルが言ってたもん。だから、絶対にお家に入れちゃダメ!」
「いやあの、わたしの話を聞いてくださ……」
「もんどーむよー!」
「ひー!」
赤髪の双子ちゃんは全く同じ動作とセリフを口にしつつ、わたしに物を投げてくる。
必死の思いで近くの木の陰に隠れるも、これ以上は近づけそうになかった。
「……お姉さん、諦めて帰ってよ。ここ、俺たちの工房だからさ」
その時、金髪碧眼の少年が工房から顔を覗かせる。その見た目はスフィアより少し年上で、12~13歳くらいといったところ。この子がロヴェル君かな。
彼らの中では最年長者のようだし、話せばわかってくれるかも。
「あの」
「それー!」
その少年と会話を試みようと木の陰から顔を出すと、双子ちゃんの猛攻撃に遭う。
「かーえーれー! かーえーれー!」
「ひーーー」
声を揃えての大合唱。これは無理だ。取り付く島もない。
わたしはその場での説得を諦めて、逃げるように村の宿屋に向かったのだった。
「いやー、お話はうかがっておりますよ。村長のウィゼルです。遠路はるばるご苦労さまでした」
「ど、どうも……エリン・ハーランドです……」
村で一番大きな建物に招き入れられ、村長さんと挨拶を交わす。
さっそく人見知りが発動していた。村に着く前に胃腸薬を調合しておいたのだけど、すでに胃が痛い。先に飲んでおくべきだった。
ちなみにレリックさんは村の商店に品物を卸すと、足早に別の街へと旅立ってしまった。
つまり、今は完全にわたし一人だ。
「聞けば、エリン様は王家お抱えの薬師様とのこと。我が村の工房を、何卒よろしくお願いいたします」
「は、はい……誠心誠意頑張ります……」
まったく視線を合わせられないまま、村長さんとの会話は続く。
「あの、この村の薬師工房のオーナーさんは、どんな方なのでしょうか。亡くなった前任者の、あとを継いだとうかがったのですが」
「そ、そうですな。ロヴェルは……多少変わっておりますが、きっとなんとかなるでしょう」
おずおずと尋ねてみると、村長さんはどこか言いにくそうにそう教えてくれた。
……変わっている? それってどういうこと?
「それでは、さっそく薬師工房のほうへ行かれてください。ここから少し離れていますが、看板が出ているので、すぐにわかりますよ」
一応、話は伝えてありますので……と、村長さんは続けた。
えぇ、一緒に来てくれないんだ。
なんともいえない不安に襲われながら、わたしは村長さんの家を出て、村へと繰り出した。
……へっぴり腰になりながら、わたしは村の中を進む。
この村は周囲を深い森に囲まれていて、木々の間に溶け込むように、木造建築の建物が並んでいる。
生活用水は森から流れ出る小川の水を使っているらしく、各家々に小さいながら畑もある。
その畑は害獣被害を防ぐためか、どこも立派な木の柵が張り巡らされていた。
……あれ?
そんなふうに村のあちこちを見て回っていると、あることに気づく。
いたるところから、視線を感じるのだ。
わずかに空いた家の窓から。もしくは建物の陰から。
自意識過剰とかそういうものではなく、確実に見られている。
……田舎の村だし、外から人が来ること自体が珍しいのかな。
……頑張れエリン。負けるなエリン。
そう自分を励ましながら視線に耐え、やがて目的の薬師工房へとたどり着く。
そこには古い看板があって『ニグラード工房』と書かれていた。
どうやら、ここで間違いない。
「あの、こんにちは」
できるだけ大きな声を出して、扉を叩く。反応はない。
……誰もいないのかな?
「あの、こんにちは!」
もう一度、声を振り絞る。普段出さない音量だったせいか、明らかに裏返っていた。
それでも、反応はなかった。
おかしいなぁ。村長さん、話は伝えてあるって言ってなかったっけ。
不思議に思いながら扉に手をかけると、何の抵抗もなく開いた。
鍵がかかってない。いくら田舎の村でも、さすがに不用心……。
「来たぁ!」
「おばーちゃんの工房に入るなー! ヨソモノー!」
直後に二つの声が聞こえ、家の中から色々なものが飛んでくる。
「ひいいっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
次から次に向かってくる薬瓶や薬皿から頭を守りつつ、わたしは全力で家から飛び出した。
そのまま勢い余って地面を転がったあと、工房の入口を振り返る。
そこには、まるで鏡写しのようにそっくりな少女が二人、仁王立ちしていた。
見た目は10歳くらいで、どうやら双子らしい。
「ニーナちゃん、ミーナちゃん、いきなり追い返したらかわいそうだよ」
そんな少女たちの背に隠れるように、青い髪の女の子がわたしを見ていた。
「メアリー、よそから来た人は、おばーちゃんの工房を乗っ取ろうとする悪い人なんだって」
「そうだよー。ロヴェルが言ってたもん。だから、絶対にお家に入れちゃダメ!」
「いやあの、わたしの話を聞いてくださ……」
「もんどーむよー!」
「ひー!」
赤髪の双子ちゃんは全く同じ動作とセリフを口にしつつ、わたしに物を投げてくる。
必死の思いで近くの木の陰に隠れるも、これ以上は近づけそうになかった。
「……お姉さん、諦めて帰ってよ。ここ、俺たちの工房だからさ」
その時、金髪碧眼の少年が工房から顔を覗かせる。その見た目はスフィアより少し年上で、12~13歳くらいといったところ。この子がロヴェル君かな。
彼らの中では最年長者のようだし、話せばわかってくれるかも。
「あの」
「それー!」
その少年と会話を試みようと木の陰から顔を出すと、双子ちゃんの猛攻撃に遭う。
「かーえーれー! かーえーれー!」
「ひーーー」
声を揃えての大合唱。これは無理だ。取り付く島もない。
わたしはその場での説得を諦めて、逃げるように村の宿屋に向かったのだった。
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