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第四部 また追放されました!?
第29話『薬師、謎の熱病と戦う』
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工房を飛び出したわたしは、ロヴェル君と二人で、熱が出たという子どもたちを診て回る。
どの子も症状は同じで、高い熱が出ている一方、汗をかいている様子はなかった。
そのために体に熱が籠もってしまっている状況だ。
「……アンナちゃんもですね」
最後にアンナちゃんの家に赴くも、その症状は他の子たちと同じだった。
ティナさんいわく、水で冷やしたタオルを額に置いても、すぐに温かくなってしまうのだそう。
心配顔の母親の隣には、村長さんの姿もあった。
「……先生、これ、普通の熱じゃないよな」
そんな中で、ロヴェル君は以前のように取り乱したりはせず、冷静に症状を分析していた。
「そうですね。たくさんの人が同時に発症しすぎです。おそらく、感染症のたぐいだと思います」
熱に浮かされるアンナちゃんを見ながら、わたしは思案する。
それにしても……この症状、どこかで見たことがあるような。
……そうだ。これはマイラさんと初めて出会った時、彼女がかかっていた熱病と症状が似ている。
マイラさんは、幼い頃にかかった熱病の後遺症だと言っていたけど……まさか、マイラさんの故郷の村を滅ぼした熱病が、この村でも発生した? もしそうなら、一大事だ。
そんな結論に至った時、わたしは背中に冷たいものが走る。
でも、どうして突然、そんな恐ろしい病気がこの村にやってきたのか。
少し考えて、すぐ原因に思い当たる。先日の収穫祭だ。
あの日は、旅人も多くやってきていた。その中の誰かが熱病を持っていても不思議はない。
「……エリン様、どうかされましたか?」
思考を巡らせていると、村長さんが不安げな顔で訊いてくる。
「……もしかすると、これは恐ろしい病気かもしれません」
一瞬迷ったあとにそう口にすると、村長さんは青ざめる。
「なんと……どうすればいいでしょうか」
「村の皆さんに、しばらく外に出ないように伝えてください。収穫祭の直後ですし、食料はあると思いますので」
「わ、わかりました」
小声でそう伝えると、村長さんは血相を変えて表に飛び出していった。
病気がうつる原因はいくつかあるけど……なるべく人と人が接触しないこと。今はこれが一番だと思う。
村長さんの背を見送ったあと、わたしはロヴェル君に向き直る。
「今すぐに工房に戻って、薬を調合しましょう。ミーナちゃんたちにも、なるべく外に出ないように伝えてください」
「わかった。この熱、うつるんだな」
ロヴェル君は神妙な顔でうなずいて、外へと駆け出す。
わたしもティナさんに薬を作ってくる旨を伝えたあと、彼のあとに続いた。
◇
それからニグラード工房に戻ると、一足早く戻っていたロヴェル君が他の子どもたちにこれまでの経緯を伝えていた。
「……というわけで、しばらくは外に出ちゃダメだ。メアリーも我慢してくれな」
「あたしたちと一緒に、家の中で遊ぼうねー」
「うんっ」
申し訳なさそうに言う兄と姉に、メアリーちゃんは笑顔を見せる。聞き分けのいい、素直な子だった。
そんな子どもたちの様子を微笑ましく見たあと、わたしは調合室へと向かう。
そして薬棚を前に、この熱病に対処するための薬を考える。
あの熱病は以前、ミラベルさんが薬で治療したと言っていた。
つまり、薬で対処可能な病気のはず。
村の皆を診た限り、患者は全員子ども。これは、抵抗力が弱いからだと思う。
続いて、主な症状は高熱。なぜか汗をかいていないので、このままだと熱が体に籠もり続け、やられてしまうだろう。
対処法としては、水分を多めにとったうえで、発汗作用のある薬でたくさん汗をかいてもらうしかない。
そうなると、必要な薬材は……。
「……エリン先生!」
「うひゃあ!?」
頭をフル回転させていたところに耳元で声をかけられ、わたしは小さく飛び上がる。
「あっ、ロヴェル君。どうしましたか」
「さっきから話しかけてんのに、全然反応してくれねーからさ……それで、薬作るんだろ?」
「は、はい。そのつもりです」
「手伝うよ。村の皆が困ってるんなら、俺も力になりたいしさ」
続くロヴェル君の発言に、わたしは内心嬉しくなる。
……あれだけ村民を嫌っていたこの子が、ここまで言うようになるなんて。
「そ、そうですか。それなら、よろしくお願いします。それで、必要な薬材なのですが……」
そんな気持ちを隠しつつ、わたしは薬棚に手を伸ばしたのだった。
……それから調合作業に入るも、すぐに問題が浮上する。
「……ビリビリ草が足りませんね」
「薬材倉庫のもこれで全部だぜ? 何か、代用できる薬材があったっけ……」
「パープルアイでも代用はできますが、どうしても効能は落ちます」
「そのパープルアイも残り少ないぜ? 森に取りに行くのか?」
「今の時期のパープルアイは花が咲いていないので、見つけるのは至難の業なんです。むむむ……」
わたしは思わず、薬研を動かす手を止めてしまう。
この熱病は、わたしにとっても未知の相手だ。できることなら、効能マシマシの薬を処方したい。
けれど、手持ちの薬材では、患者さん全員に同じ効能の薬を出すことすら難しい。
「せめて、ビリビリ草があれば……!」
誰にともなく呟いて、わたしは調合作業を再開する。これ以上患者さんが増えないことを願うしかなかった。
どの子も症状は同じで、高い熱が出ている一方、汗をかいている様子はなかった。
そのために体に熱が籠もってしまっている状況だ。
「……アンナちゃんもですね」
最後にアンナちゃんの家に赴くも、その症状は他の子たちと同じだった。
ティナさんいわく、水で冷やしたタオルを額に置いても、すぐに温かくなってしまうのだそう。
心配顔の母親の隣には、村長さんの姿もあった。
「……先生、これ、普通の熱じゃないよな」
そんな中で、ロヴェル君は以前のように取り乱したりはせず、冷静に症状を分析していた。
「そうですね。たくさんの人が同時に発症しすぎです。おそらく、感染症のたぐいだと思います」
熱に浮かされるアンナちゃんを見ながら、わたしは思案する。
それにしても……この症状、どこかで見たことがあるような。
……そうだ。これはマイラさんと初めて出会った時、彼女がかかっていた熱病と症状が似ている。
マイラさんは、幼い頃にかかった熱病の後遺症だと言っていたけど……まさか、マイラさんの故郷の村を滅ぼした熱病が、この村でも発生した? もしそうなら、一大事だ。
そんな結論に至った時、わたしは背中に冷たいものが走る。
でも、どうして突然、そんな恐ろしい病気がこの村にやってきたのか。
少し考えて、すぐ原因に思い当たる。先日の収穫祭だ。
あの日は、旅人も多くやってきていた。その中の誰かが熱病を持っていても不思議はない。
「……エリン様、どうかされましたか?」
思考を巡らせていると、村長さんが不安げな顔で訊いてくる。
「……もしかすると、これは恐ろしい病気かもしれません」
一瞬迷ったあとにそう口にすると、村長さんは青ざめる。
「なんと……どうすればいいでしょうか」
「村の皆さんに、しばらく外に出ないように伝えてください。収穫祭の直後ですし、食料はあると思いますので」
「わ、わかりました」
小声でそう伝えると、村長さんは血相を変えて表に飛び出していった。
病気がうつる原因はいくつかあるけど……なるべく人と人が接触しないこと。今はこれが一番だと思う。
村長さんの背を見送ったあと、わたしはロヴェル君に向き直る。
「今すぐに工房に戻って、薬を調合しましょう。ミーナちゃんたちにも、なるべく外に出ないように伝えてください」
「わかった。この熱、うつるんだな」
ロヴェル君は神妙な顔でうなずいて、外へと駆け出す。
わたしもティナさんに薬を作ってくる旨を伝えたあと、彼のあとに続いた。
◇
それからニグラード工房に戻ると、一足早く戻っていたロヴェル君が他の子どもたちにこれまでの経緯を伝えていた。
「……というわけで、しばらくは外に出ちゃダメだ。メアリーも我慢してくれな」
「あたしたちと一緒に、家の中で遊ぼうねー」
「うんっ」
申し訳なさそうに言う兄と姉に、メアリーちゃんは笑顔を見せる。聞き分けのいい、素直な子だった。
そんな子どもたちの様子を微笑ましく見たあと、わたしは調合室へと向かう。
そして薬棚を前に、この熱病に対処するための薬を考える。
あの熱病は以前、ミラベルさんが薬で治療したと言っていた。
つまり、薬で対処可能な病気のはず。
村の皆を診た限り、患者は全員子ども。これは、抵抗力が弱いからだと思う。
続いて、主な症状は高熱。なぜか汗をかいていないので、このままだと熱が体に籠もり続け、やられてしまうだろう。
対処法としては、水分を多めにとったうえで、発汗作用のある薬でたくさん汗をかいてもらうしかない。
そうなると、必要な薬材は……。
「……エリン先生!」
「うひゃあ!?」
頭をフル回転させていたところに耳元で声をかけられ、わたしは小さく飛び上がる。
「あっ、ロヴェル君。どうしましたか」
「さっきから話しかけてんのに、全然反応してくれねーからさ……それで、薬作るんだろ?」
「は、はい。そのつもりです」
「手伝うよ。村の皆が困ってるんなら、俺も力になりたいしさ」
続くロヴェル君の発言に、わたしは内心嬉しくなる。
……あれだけ村民を嫌っていたこの子が、ここまで言うようになるなんて。
「そ、そうですか。それなら、よろしくお願いします。それで、必要な薬材なのですが……」
そんな気持ちを隠しつつ、わたしは薬棚に手を伸ばしたのだった。
……それから調合作業に入るも、すぐに問題が浮上する。
「……ビリビリ草が足りませんね」
「薬材倉庫のもこれで全部だぜ? 何か、代用できる薬材があったっけ……」
「パープルアイでも代用はできますが、どうしても効能は落ちます」
「そのパープルアイも残り少ないぜ? 森に取りに行くのか?」
「今の時期のパープルアイは花が咲いていないので、見つけるのは至難の業なんです。むむむ……」
わたしは思わず、薬研を動かす手を止めてしまう。
この熱病は、わたしにとっても未知の相手だ。できることなら、効能マシマシの薬を処方したい。
けれど、手持ちの薬材では、患者さん全員に同じ効能の薬を出すことすら難しい。
「せめて、ビリビリ草があれば……!」
誰にともなく呟いて、わたしは調合作業を再開する。これ以上患者さんが増えないことを願うしかなかった。
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