イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~

川上とむ

文字の大きさ
3 / 54

第2話 幽霊部長は神出鬼没

しおりを挟む

 俺の通う京桜けいおう高校は県内でも珍しく、美術科がある。
 厳しい試験を突破した才能あふれる学生が集まるわけで、そんな彼らが所属する美術部はレベルも高く、卒業生には有名な芸術家やデザイナーが数多くいる。
 ただ、美術科の生徒でないと美術部に所属できない謎ルールが存在するらしく、それを知らなかった俺は門前払いを食らい、現在はイラスト部(仮)の所属となっている。

 ……それにしても、部員探しか。
 教師の声が淡々と響く中、俺は思わずため息をつく。
 父親が転勤族だったこともあり、俺は小さい頃から転校ばかり。コミュ障……というわけではないが、友達を作るのは正直得意じゃない。部活の勧誘なんてやれるんだろうか。

「やっほー、内川くん、頑張っておるかね?」

 悶々としながらクラスメイトたちの顔をチラ見していると、どこからともなく雨宮あまみや部長がやってきた。
 その登場に一瞬どきりとするも、教師はおろか、クラスの全員が無反応だった。
 やはり彼女は幽霊で、その姿はおろか、声さえも俺以外には届いていないらしい。
 その事実に改めて驚愕していると、真剣にノートを取るクラスメイトたちの間を抜けて、雨宮部長が俺のそばへとやってきた。

『部長、何しに来たんです?』

 授業中に声を出すわけにもいかず、ノートの端に走り書きをして彼女に見せる。

「部員の授業態度を見に来たんだよ。うわ、ノート真っ白。ずいぶん余裕だねー」

 部長は俺の肩に手を置きつつ、背後から覗き込むようにノートを見てきた。
 ……昨日から感じていたけど、この人はすごく積極的にスキンシップを取ってくる。
 本人いわく、長いこと人と話す機会がなかったこともあり、『触れ合いたい』のだという。

『色々心配事があって、授業どころじゃないんですよ。それより部長、部室にいなくていいんです?』
「別に私、地縛霊ってわけじゃないし。出ようと思えば学校の外にだって出られるよ? あそこが落ち着くから、動かないだけで」

 言いながら俺から離れ、後ろ手を組みながらその場でくるりと一回転してみせる。
 その拍子に彼女の腕が隣の机に当たり、その振動で消しゴムが転がり落ちた。

「おっと失礼」

 振り向いた部長が謝るも、消しゴムの持ち主である女生徒は不思議そうな顔をしながら、リノリウムの床に落ちた消しゴムを拾い上げる。

『見えなくても、物には触れるんですね』
「あるものを除いて、ほとんどのものには触れるよー。人にも触れるけど、基本気づいてくれない。内川くんだけが、特別だよ」

 口元に指を当てながら悪戯っぽく言って、俺から離れていく。
 そのまま出ていくのかと思いきや、彼女はその後も教室に留まり、まるで巡回でもするかのようにクラスメイトたちの様子を見ていた。
 ……もしかして、彼女は俺と出会うまでの三年間、こうして人知れず時間を潰していたのかもしれない。

「隣の席の女の子、ノートの端にネコのイラスト描いてたよ。制作時間に対して、なかなかのクオリティ。もしかしたら部員にスカウトできるかも」

 やがて授業も後半に差し掛かった頃、部長が俺のもとへ走ってきて、そう教えてくれた。

『その子はクラス委員長ですよ』
「ほうほう。かわいいし、イラスト上手かったよ。誘ってみたら?」
『いや、話したことないですし……というか、かわいいとか関係ないでしょう』

 そう書き記してから隣の席へ視線を送ると、その子と目が合ってしまった。
 直後にいぶかしげな顔をされたので、俺は慌てて視線をノートに戻す。
 どうやら部長はただ教室内をうろついていただけじゃなく、イラスト部の部員としてスカウトできそうな人材を探してくれていたようだ。

「あとはね、入口に一番近い席の男の子もロボットだか何かの絵を描いてた。ああいう才能って大事」

 熱心にそう教えてくれるも、彼は野球部所属のはずだ。確か、入学直後の自己紹介でそう言っていた記憶がある。

「それともう一人、窓際の一番後ろの席の子も何か描いてた。イラストじゃなくて、魔法陣みたいなやつだったけど」

 それって厨二病こじらせているだけなんじゃ……? さすがに声をかけるのはためらわれる。

「それじゃあねぇ……」

 そんな感じに雨宮部長は様々な情報を教えてくれ、授業が終わると同時に手を振りながら去っていった。
 それにしても、なんか視線を感じるような。気のせいだよな。

  ◇

 そして迎えた昼休み。
 教師が教室から出ていくと同時に、クラス全体が開放感に包まれる。
 女子たちが机をくっつけて弁当を広げはじめれば、一部の男子は学食や購買に向けてダッシュをかます。その動きは様々だった。
 ちなみに俺の昼食は登校中にコンビニで買ったたまごサンドとカフェオレだ。
 育ち盛りの男子高校生がこの食事量で大丈夫なのかと心配されそうだが、俺はそこまで食べるほうじゃない。体育の授業がない日はこれで十分だった。

「……ねえ、ちょっといいかな?」

 サンドイッチの袋を開け、カフェオレのパックにストローを刺したところで、すぐ近くから声が飛んできた。
 顔を向けると、委員長が隣の席から俺をじっと見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について

古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。 すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!? 「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ? 俺、君と話したことも無いんだけど……? カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...