女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる

紫楼

文字の大きさ
81 / 120
一章

海ダンジョン 5

しおりを挟む
 階段にある部屋、セーフゾーンで休憩。
 十階層でやるよりはと、ブランはボロボロになった荷物の入れ替えをする。
 と言っても替えのリュックはないから獲物やドロップ品入れる麻袋みたいなのを使ってる。
 何か作っても良かったんだけどやり過ぎるのはなっと様子見。

 野営道具やらはほとんどが直せない状態で半泣きだ。仲間の分なら捨ててやれば良いんでないか。
 その中で今回のダンジョンで得たらしいドロップ品をさっきのポーション代や十階層までの護衛代として出して来た。

「全然足りないでやんすが今出せるのはこれが精一杯でやんす」
「気にするな。十階層まではついでだ。ポーション代だけもらうな」
 何も貰わないのは気にしそうだから、ドロップ品の牙を一個貰った。
「・・・ありがとでやんすよー」

 着替えと鍋とか一部の金物と火打石くらいしか残って無かったようだ。

「仲間は何も持ってないのか?」
「武器と防具とワインくらいでやんすかね」
 ほとんどブランに持たせていたのか。荷物持ちってそんなもん?
 ドットたちもランガたちもそれぞれ容量の差はあれどマジックバッグは持ってたので荷物はそれぞれって感じだった。

 ブランの腰にはワインの皮袋を付けてるが破れてる。
「やる」
 俺はマジッグバッグから取り出したテイで、ギルドで買ったワイン入り皮袋を渡す。
 飲みたくないって言うと悪いけど、コーヒやビール飲んじゃうからな。

「えええ~、命の水でやんすよ」
「俺、まだ持ってるし?」
 腰のマジッグバッグを指差して見せる。
「キィーーー!!お金持ちでやんす!」
 お金持ちに何かされたのか?地団駄を踏んでる。
「ありがたくいただくでやんす」
 必要なものは甘えておけば良いよ。

 そんなわけでいざ九階層。
 ・・・草?大草原みたいな。

「これはとんでもねぇハズレ階でやんす!」
 ん?
「食えない植物はただの雑草でやんす!」
 んー・・・、青々としてるけど稲だと思うんだ。実をつけてないから草と言われると草。

 俺的には育っている状態で見つけたかった。
 周りを見渡しても青色しかない。泣ける。
 だが見つけたとして稲刈りする気力が・・・あ、おれコンバイン持ってるんだった☆いつかぼっちの時に黄金色の稲穂見つけたら、この大田園を全部刈り取ってやるぜ。
 生きているんだぁ♫って大声で歌真似してやる。

 今は時期じゃないから諦めるしかないので十階層行きの階段まで走り抜けることに。

 途中で可愛くない顔の狐とイボカエルにワイルドボアに遭遇した。
 ブランは戦闘力はゼロだけど罠を作るのは得意だった。草結んだり、落とし穴作ったり。
 まぁ襲ってくる勢いのが早いんだけど、小さい身体でちょこまか可愛い作業してるの和む。
 能力を見るに農家に婿入りが一番良さげだと思うが冒険者がしたいのなら仕方ないよな。

 イボガエルのドロップ品は軟膏と皮。カエルの皮は水を弾くので雨靴とかに使えるらしい。
 ボアは肉を落としてくれた。

「大当たりでやんす!!」
 地上で狩れば普通に肉も皮も牙も全取りなのにって思えば、質が良いんだって。

 特に問題はなく、十階層に出る階段を見つけた。
「ブラン、体力は持ちそうか?」
「まだまだ行けるでやんす」
 
 元気と言ってもまずは腹ごしらえとイノシシ肉を焼いて食うことに。
 ブランはほとんど装備品が無いので、俺が魔道コンロと鉄板を出した。

「良いモノ使ってるやんすねぇ」
 そうか?とりあえず自分で作る用の見本で買ったやつだよ。

 ブランは消し炭は作らないようで俺が肉を切って塩を掛けて渡すと器用に焼いた。

「この前何もかも焦がして、貝を爆発させた奴がいるんだよ」
「あー、わっちの仲間も火の調整が下手でやんしたよ。どうしてそうなるのか見ててもわからないでやんす」
「なー」
 なんでじっくりコトコトやれないんだろ。

「ハフ、こんなまったりしてる食事は久々でやんすよ」
「なんだ。ゆっくり食べれないのか?」
「ダンジョンに入って一週間、干し肉と採れた木の実でパパッと食べて移動しないと安全な寝床が探せないでやすからねぇ」

 ン?一週間??八階層で出会ったから一日で一階層ちょいずつって感じ?
 
「ジェイルさん、付与魔法使ってるので足速いし、道順もパッパ決めちゃってすぐ階段見つけちゃうでやすからびっくりでやんすよ」
 あちゃー。俺の方がびっくりだよ。
 そっかー、マップ買ってるしMAPで確認もしてたし、ブランをとっととゲートに案内したかったから寄り道してなかったよ。
 普通は一日一階層か。三日しかいられないから気が焦っちゃってさー。

「わっちはダンジョンでたら実家に帰って家を継ぐことにするでやんす。冒険者向いてなかったでやんすね」
 ギャァ!若い子の夢を潰してしまった!
「あ、ジェイルさんとの格の違いとかでは無いでやすよ。仲間に裏切られたし、荷物持ちのわっちでは新しくどこか入れてもらうのも難儀するでやすから」

 そっか。ランクが上がってマジックバッグが買えるようになると余計に仕事が無くなるなぁ。

「まぁ、両親のそばにいられるならいた方が良いかもな」
 俺は兄貴や姉貴が地元に残ってるし心配ないからって思ってたら、まさかの先に死んじゃうって言う親不孝しちゃったしな。

「でやすかねぇ。彼女待たせてるしお土産持って帰りたかったでやすが身一つで帰ることになっちゃいやしたね」

 ギャフン!!

 彼女を待たせてるだと!?

 俺に一生言えないセリフが出て来たぞ。

 可愛い見た目が小憎たらしくなってしまったじゃないか。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...