可愛いものは好きだけど【完結】

4

　お受けしたのはダメだったかしら？
　お好みに合わないとか？そもそも結婚を望んでらっしゃらないから怒っていらっしゃる？
　でもアルネス家のペナルティ扱いですからそちらからお断りされますと困りましたわね？

　グランディス様の反応にちょっと戸惑っていたら
「フランネス公爵、父上、こちらのせいで年上の借金のある家の人間を押し付けるのはクリスタニア嬢に申し訳ないのではないですか？」
　これはグランディス様のお断りの定番の「申し訳ないから」コースなのですわ！私は本日二回振られたと言う残念な令嬢になってしまったのです！
　今日こちらに参られて初めてのお声がお断り発言！！
　まさかこの状況でお断りされるなど余程魅力がないと言うことですのね・・・。
　断られないと思っていた傲慢さがあったのかと思い至ってお庭に穴を掘って埋まりたくなってきました。

「・・・家の娘に不足があるのかね？」
　常より数段低い不機嫌な声がお父様から発せられました。かつて聞いたことの無い低さです。
　おそらくおじさまたちも初めてのはずです。
「不満など滅相も有りません！ただ弟のせいなのにこんなに美しいお嬢様を私と婚姻など・・・もっといい縁談がいくらでもあると・・・」
　お父様の不機嫌さに臆した感じでは無く心底困りきった感じで説明するグランディス様。先ほどまでほぼ無表情でしたのに今は表情豊かで少し可愛らしいです。
　って、美しいって仰って下さった？社交辞令？

「・・・家の家格に合う婿に来れる良い子息など売れ残っておらん！残っておっても問題がある家や子息では迎えることは出来ん。アルネス家は借金を抱えているが災害が無ければ問題などない良い領地経営をしている。家が貸している分の返済も心配しておらん。サリオンもそなたも良い仕事をしておる」

　おじさまもグランディス様もお父様の言葉に嬉しさが隠しきれないようですが私はブルーですわ。

　アルネス領では昔から定期的に水害が起きて歴代領主はギリギリの状況でも一族総出で領地を守ってきた。復興に予算を取られて領民に税を納める余力がないほどで必死に立て直し、近年やっと技術が発達してきて将来的に頑強な堤防を完成させるため国から予算をもぎ取り、近隣領主と協力し合い工事を勧めている。少し見通しが立ってきて領地の発展のために名産となる予定のワインの葡萄農園を拡大させてと明るい兆しが出てきたところです。

　あら、やはり後継は奪えませんわ。振られても仕方のないことです。

　でもペナルティを周りに見せるには何かしら必要で婿以外だと借金一括返済か慰謝料増しってなるのかしら？
　そもそもお父様、今更思ったのですが私の結婚が罰扱いっていうのもひどいのですわ。






----------

ちょっぴり言葉を追加したり改行増やしました。大筋は変えてないです。一人称って案外難しいなってちょっと後悔。