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 深夜、妙な気配がして飛び起きて壁際に移動した。

 トストスットス。

 さっきまで寝ていた布団には小刀が刺さっている。

「・・・お前、布団弁償しろよな」
「ええ~ケチくさ~い」
「銀時んちだぞ!クソが」

 気配の先にある人影に文句をつける。

「何年も前に足洗ったくせに随分動けるじゃなーい。生意気~」

 小刀を回収しつつ近づいてくる。

「さすがお師匠さまのお気に入りぃ♪」

 刃先を俺に向けて愉快そうにしている女は出来れば関わりたくない過去の繋がりだ。

「久しぶりだねぇ、《篝》」
「会いたくは無かったけどなぁ《白妙》?」

 暗がりの中、ジリジリとにじり寄ってくる白妙は赤い唇を上げる。

「そう警戒する事ないじゃなぁい?」
「いきなり投擲してくる奴の台詞じゃねぇよな?」

 平仄に火を点けようと動くと白妙がそれを止め腕に体をも巻き付けてくる。

「なんだよ」
「人が来たらマズいだろう。耳貸しな」
 みっちりと胸を押し付け、耳元に顔を出して寄せてきた。

「それならいきなり投げ物打ってくんじゃねぇよ」
「相変わらずお堅い男だねぇ。感が鈍って無いかは知っときたいじゃないの」
「で?何の用だ?」

 幻惑香も麻痺香も誘眠香も匂ってねぇが何されるか分かったもんじゃねぇからな。なるべく近寄ってほしくない。

「都の方で大仕事入っていてねぇ。人が足りないんだよ。こっちにも末端が悪さしてんのはあんたも知ってるんだろう?」

 里を離れた時はここまで婀娜っぽい女じゃ無かった気がするが未だ色仕掛けでくるか。

「俺は仕事は出来ねぇんだ。分かってんだろ?」
「お師匠の許可が有ってもかい?」
「何?」

 師匠まだ生きてやがったのか。でも許可なんか出すわけなぇ。

「まぁ仕事って言ってもあんたに任せられるのは諜報だけだよ。殺しは許可されてないわね」
 
 半端なことを!!

「あんただって、町で悪さしてる悪党放置したくないだろう?」

 全部知ってる口ぶりだな。イラつく。

 どんどん機嫌が急降下してくる中、ふと慣れた匂いを感じる。
 
「・・・はぁ、俺の保護者は過保護なんだよ」
「なん・だっ・・・てっぇ・・・?」


 バン!!

 ザンッ!

「ちょ!あぶっ!??っ何しやがるんだい!!!」
 白妙が俺を突き飛ばして離れる。

「人の留守に上がり込む野良猫は追い出さんといけないだろう?」
 
 気配を消していた銀時が、障子と側にあった文机をぶち壊して白妙に短刀を飛ばし怒鳴った。

「《白妙》お前、コイツに何させようとした?」
 短刀を引き抜いて改めて白妙の首に突きつける。

「ちょっと手伝ってもらおうとしただけだろう!?」
 銀時の威圧に冷や汗を滲ませながら白妙が喚く。

「コイツはに足を洗ったんだ。許すわけないだろう?」
「なんでよ!!一番使える奴を使わないなんておかしいだろ!!《白狼》!!」

「長が命じたならまだしもテメェ勝手に来たんだろう?」

 ふだんの口調をガラリと変えてドスを利かせた声で白妙の首に刃先を滑らす。

「使えようが使えまいがテメェ如きが俺たちに指図するな!」

 銀時は里は出たものの、養子先が任侠家だったから闇から抜けたわけではない。
 雇先が変わったようなものだ。

 とは言え、大義名分があろうと人を殺せば、犯罪者だ。まぁはっきり言えば里の仕事も黒だけどな。

「ここらの仕事ならさっき《青蛇》たちが終わらしたぞ。都に戻るんだな」

「なんだって!?」
 白妙は愕然として銀時を見る。

「テメェら司令系統はどうなってるんだ?里は危ういのか?」
「ふざけんな!!そんなわけ無いだろ!!」

 
 とりあえず喧しいしいい加減帰って欲しいから、ついでに嫌な事を一つ押し付けようとお蝶さんから渡された組紐をスッと白妙の首に巻いて少し絞めてやった。

「師匠のこと、二度と嘘に使うんじゃねえぞ」
「ぐっ!!」

 銀時にも俺にも簡単にヤキ入れられて随分弱いな?

「その紐、〔巡り巡って繋がったならまた縁結ばれん〕って《村雨》兄さんの呪言付きだ。譲ってやるよ」

 多分俺宛だけど要らんから白妙に繋がっとけ。
 
「・・・竜、ちょっと捨ててくる」

 銀時が白妙を抱えて外に出て行った。

 打ち壊されて風が遮れねぇ部屋をどうするべきかな?
 子飼いたちなぜ来てくれないんだ。

 ん?この辺りの仕事が解決?
 あれ?代官どうなった?
 

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