515 / 765
33巻
33-2
(やはり、ゴブリンスカウトを狙うしかない、か。同時に瞬殺は難しくても、どちらか一方だけでも落とせれば……)
矢を番え、ゴブリンスカウト二体ができるだけ射線上に重なる時を待つ。
我慢には慣れている。我慢ができなきゃ社会で生きていく事なんかできない。
それからしばらく時間が過ぎ、ついに狙っていた瞬間がやってきた。悩む事なく矢を射る。チャンスなんて二回も三回もやってくるものじゃない。
放たれた四本の矢は、ゴブリンスカウトの頭部に一本、腹部に一本、腕に一本、そして外れてオークメイジに流れ弾として命中した。
頭部に当たったゴブリンスカウトはそのまま絶命したが、もう一方は腕にしか当たらず、健在。
追撃でさらに二本の矢を放ったが、ゴブリンスカウトがこちらの居場所を探し当てるのを妨害する事はできなかった。
命と引き換えに、こちらの居場所を仲間に教えたのだろう。
オーガの戦士達が自分に向かって一直線にやってくる。
敵ながらこれは見事というほかないな……オークメイジは完全にオーガの戦士達の陰に入ってしまっており、直接狙う事は難しい。なので、オーガの戦士達の頭部を狙って矢を放つ。
が、オーガ達も盾や武器を使って矢を弾く。流石は六〇〇階以降のモンスター、地上にいる連中よりもはるかに厄介だ。
だからこそ、こうして戦わなければならない場合以外はひたすら逃げを打ってきたわけだが。それに、こちらはまだアーツを撃っていない。
だから……矢を一本番えてアーツを放つ。
「《ブラストアロー》!」
久々に使う《ブラストアロー》。このアーツは相手を吹き飛ばす事に長けている。
今の自分の能力、使っている武器。それらを考慮すれば、オーガが盾で防ごうとしても……ぶっ飛ばせる。
「グガガガアアア!?」
「オオオオオ!?」
驚きながらもぶっ飛ばされ、地面に転がるオーガ達。
が、それを予想していたとばかりにオークメイジたちから魔法が飛んできた。
使われた魔法は、《フレイムスピア》《フリーズランス》《ライトニングパイク》。これらを大きな槍に変えて複数本放ってきた。プレイヤーが習得できる魔法とはちょっと違う。
特に《ライトニングパイク》という魔法が危険だ。ダメージもさる事ながら弾速が速い。
それが一気に複数飛んでくるのである。自分は《ライトニングパイク》の相殺を諦め、回避しながら他の二つの魔法を相殺すべく矢を弓に番える。
数本の《ライトニングパイク》が体を掠めたが、これは装備品のおかげで体力をほぼ減らす事なく凌いた。
相殺、そして反撃を兼ねた《ソニックハウンドアロー》を放つ。衝撃を伴った矢が飛ぶと、次々と《フレイムスピア》《フリーズランス》が砕け散って、一瞬の芸術を生み出して消えてゆく。
一方で《ソニックハウンドアロー》の方も、複数の魔法を相殺したが故に勢いを失い、オーク達に届く前に地面に落ちた。
が、これは予想通り。次の矢はもう番えている。
次に自分が放ったのは《風牢弓》である。これも久しいな……命中したところに風の竜巻が現れて牢を成し、相手を拘束する。
その後頭上から相手を射貫く矢が降ってくるのである。三本矢を番えて放っていたので、オークメイジ一匹ずつに脳天を貫く矢が降る事になる。
「ピギャアアア!?」
「ヒグッ!?」
「プィイイイイ!?」
三者三様の悲鳴を上げる。
だが、まだとどめを刺すには至らなかったようだ。
じゃあ追撃を――というタイミングで、オーガ達が立ち上がりオーク達の壁となった。
これ以上やらせてなるものか、とオーガ達のヘルメット越しに見える顔の一部から、その意思が窺える――
が、今壁になったとしても、オーク達の位置はもう十分に把握できている。ならば当然――
(角度よし、曲射!)
オーク達はまだ動けないだろうと判断しての曲射。三本の矢を番えて放ったこの一撃は――その後聞こえてきたオーク達のさらなる悲鳴と反応の消失から、ちゃんと命中したようだ。
よし、計算ミスはなしだ。
一方オーガ達は壁になったのにもかかわらずオーク達を曲射で仕留められた事で、激高したようだ。全員が一気に自分を押し潰さんと襲いかかってくる。
ここまでの戦いで自分を完全に射手だと考えているのだろう。が――ここからは【レガリオン】も持ち出して変則二刀流の構えを取る。
オーガ側はこれを苦し紛れと受け取ったのか、より突進速度を上げてくる。そして先陣を切ったオーガが、自分に向かって両手斧を振り下ろす。
まさにこの一撃で縦に真っ二つにしてやると言わんばかりだ。
もちろん自分はそんな事は御免被るので左に軽くステップを踏んで小さく回避。その直後にオーガの腕へと一撃を見舞う。
が、オーガの腕を断ち切るには至らず。それなりに斬撃は通ったんだが、切り裂けなかった。
これは流石オーガという事にしておこうか。
切りつけられたオーガは横にごろりと転がり、その後ろから今度は二匹の両手斧を構えたオーガが、自分を挟むように斜め上から両手斧を振り下ろしてくる。
これには一歩前に出て両手斧の横を激しく叩き、軌道をずらして対処。
さらに一歩踏み込んで、【八岐の月】の爪で自分の左側にいるオーガの首を狙う。しかし、これも決まらず。オーガは後ろに大きくのけぞり、爪の一撃を回避してみせたのだ。
だが、その体勢からさらに回避はできないだろう?
すかさず放った自分の追撃である【レガリオン】の一突きを、オーガはもろに食らう。
狙った場所は心臓あたりなんだが……だめか。オーガは後ろに飛びのいて胸を押さえてはいるが、今すぐ力尽きる様子はない。
外したか……いや、外されたのかもしれない。
いずれにしろ、こちらを侮ってくれているうちに、あと一匹でもいいから減らしておきたかったんだが、そうはいかなかったらしい。
オーガの片手剣と盾持ちが軽く叫んだ。その叫びはうまく聞き取れなかったが、意思はたぶん……相手を侮るなという事を伝えていたように感じられる。
事実、その一声? があった後にオーガ達は自分に突っ込んでくるのをやめて、一定距離を保っている。完全に警戒されてしまったな。
(向こうの、特に声を出したオーガはパワーだけじゃないという事か)
相手を認められる頭脳と、周囲を一声で従えるカリスマのようなものを持っているのだろう。扉前をガッチリ守っていた事といい……残りのオーガ軍団はそうそう簡単に倒させてはくれないようだ。
オーガ軍団と、さらに数合打ち合う。この打ち合いで一匹ぐらい隙を作って、そこを突くという動きをしたかったのだが……両手斧持ちのオーガ達の踏み込みが浅くなっている。大振りもやめて、斧の先で突くなど、隙が少なめな攻撃ばかりを繰り出してくる。
そして、ここに片手剣と盾を持っているオーガが参戦してきた。
片手剣と盾持ちが中央、左右に二匹ずつ両手斧持ちのオーガがいるという形だ。
さらにこいつら、少しずつではあるが自分の事を囲むような動きを見せている。今戦っている場所はそこそこ広いため、オーガが展開できるスペースがあるのだ、困った事に。
完全に囲まれると流石にきついので、左右に展開する動きを見せる両手斧持ちのオーガを牽制しつつ、中央で積極的に切り込んでくるオーガの相手をしなければならない状況だ。
ああもう、手が足りない。そして、そういうやり方をしてくる向こうのオーガの司令塔は、よく分かっている。
チクチクとちょっかいをかけてくる両手斧持ちのオーガ。
そして、積極的に盾を前に出して視界を潰しつつ、自分を叩き切ろうとしてくる片手剣と盾を持つオーガ。
じりじりと向こうの望み通りの陣が出来上がっていき――ついにその時が来た。
片手剣と盾持ちのシールドバッシュを自分が受け止めて、動きが止まったその瞬間。オーガ達が動く。
左右に展開していた両手斧持ちのオーガが大きく振りかぶる。片手剣と盾持ちのオーガも片手剣を大きく振り上げて――自分の脳天に向かって振り下ろしてきた。
まさに必殺の一撃、このためにこの状況を作り上げたのだろう。
でもね、それを食らってあげるわけにはいかないんだ。
天井に残滓となってしまった【真同化】のアンカーを突き刺し、体を後ろ斜め上に引っ張り上げる。これによって相手の振り下ろし攻撃から逃れる事ができた。
すかさず弓に矢を番えて、先ほどの攻撃に唯一参加していない、指揮を執っていると思われる個体の頭部を狙って放つ。
そのオーガは、え? といった疑問の表情を浮かべながら矢を顔に受け、そして倒れた。
「グア!?」
「オ、オオ!?」
残った五体のオーガは、手ごたえのなさにまず驚き――そして次に自分達の司令塔が殺された事に混乱したようだ。
それは戦いの場において致命的な隙となる。当然、逃す理由はない。彼らにも次々と矢のプレゼントを送りつける。だが一匹だけ、立ち直り矢を防いだオーガがいた。片手剣と盾を持った個体だ。
自分の仲間が殺された事に激高したようで非常に大きな声を上げる。その後、矢を撃ち終えて地面に着地した自分に向かって突進してきた。
その突進を、自分は《大跳躍》で飛び越え、後ろに回って【レガリオン】で首を刎ねた。憤怒の形相のまま、オーガの頭がゆっくりと転がり、そして消えた。
(パーティで連携してくるモンスターは何度も見たが……やっぱり面倒になるなぁ。この先はもっと増えそうだ……)
ああやだやだ、なんて思いながら扉を変化させ、中に入る。これで六四〇階に到達できた。時間的に今日はここまで。
先ほどの戦闘にかかった時間はさほどでもないけど、隠れていた時間が長かったため今日は時間切れとなってしまった。
でも、今後はこういう進み方がメインとなる。
どれぐらいの進行速度になるのかが分かったので良しとしよう。
(残されている時間はまだまだあるし、焦るような状況にはない。だからと言ってダラダラして良いわけじゃないけどさ……明日も確実に前に進もう)
と考えていたこのタイミングでインフォメーションが。もしかして、と思って見てみると、ツヴァイ達のパーティが白の塔を踏破したという告知が流れていた。昨日言っていた通り、今日で登り切ったのか。
でも、ツヴァイ達は今度は黒の塔の踏破を目指すと言っていたからな。休む間もなく挑み始めるんだろう。
(さて、完全制覇はどちらが先かな?)
一日遅れたツヴァイ側だが、黒の塔はとにかく戦闘オンリーで良い。一方で白の塔は力押しだけでは通じない。
これがどう運命を分けるかだな……グラッド達が白の塔の試練にちょっとでも躓けば、ツヴァイ達が追い抜くのは難しい話ではない。展開は予想しづらいだろう。
と、それはそれとして。自分は自分で白の塔を登り切らなきゃだめだ。まだまだ先があるし、特に七五〇階の試練はどんなものが来るか分からない。彼らの事にばかり気を取られていてはいけないな。
(明日もまたがんばろう)
そうしてログアウトした。
3
そんな塔の攻略が数日続き、そして、自分は七〇〇階に到達した。
「ようこそ、七〇〇階へ。ここまで来られたあなた達……ごめんなさい、あなただったわね。まずはお見事と言っておきます。ここまで来られただけでも、あなたがこの世界で上位に位置する猛者なのは間違いありません。ですが、この先に進めるのはその中でもさらに強く、諦めない人のみ。試練を始めましょう」
七〇〇階の試練の主は、これまた幼い女の子の外見をしていた。
だが、その喋り方は淑女。そのアンバランスさがなかなか面白い。そんな彼女は何を試練として出してくるのか。
「――ですがその前に言わせてください。まさかこの階層まで、試練によって強制的にパーティを組まされた時以外は単独で登ってくる人物がいるとは思ってもいませんでした。普段は単独でも、難関に挑む時はパーティを組むのが基本のはず。人は手を取り合い、困難に立ち向かって生きてきた。なのに、あなたはその在り方から完全に逸脱している。無論、装備などの入手、製作等で他者の手を借りているのでしょうが……」
なるほど、ソロ到達者としては自分が一番進んでいるって事になるのか。そしてこの反応……自分も立派に「他の人から見たら異常なプレイヤー」の一人なんだろうな。
「気を悪くされたら申し訳ないのですが、あなたの動きは他の方々よりも少々多めに記録させていただいてます。正直に申し上げて、この階層まで、たった一人で登ってくる事など不可能だと私達は考えていましたので。ですが、あなたの行動を見るたびに、私達の予想は常に裏切られ続けてきました」
別に、そんな事ぐらいで腹は立てない。こっちは別にやましい事は一切していないんだから。
「それぐらいかまいませんよ。好きなだけチェックしてください。やましい事も、後ろめたい事も何一つやってませんから」
微笑みながらそう口にすると、なぜかため息をつかれてしまった。
「あなたのおっしゃる通り、あなたは一切おかしい事をしていないと分かっています。だから私達には理解ができません。この塔の踏破はパーティを組んでなお、厳しい道程にしているはずなんです。特に五〇〇階以降は顕著に。しかし、あなたは今ここにいる。たった一人でこの塔をここまで登ってきた人物がいる。正直に申し上げます、驚異的だと」
何とも、驚愕と、敬意と、そして理解できないという感情が入り混じったお言葉だなぁ。
それでもずっとこのスタイルでこの世界を旅してきたから、このやり方が、この進み方が自分だ。
そうとしか言いようがない。
「その脅威的な姿を、ここでも示していただけるのでしょうか……楽しみでもあり、恐ろしくもあります。では、長くなってしまいましたが試練を発表いたします。あなたへの試練は……ドラゴンとの一騎打ちです。ドラゴンを打ち倒し、この先に進む権利があると示してください」
その言葉と共に、一匹のブルー・ドラゴンが奥からゆっくりと姿を見せた。
さらに部屋自体が轟音を上げて広がっていく。部屋が拡張を止めた時……広さは東京ドーム並みのサイズまで大きくなっていた。
「このドラゴンは塔の主によって生み出された存在……外に生きているドラゴンとは全くの別物です。ですが、強さは大差ありません。あなたが準備を整えたら、戦闘開始となります」
――ドラゴンとの一騎打ちか。懐かしいな……ずっと前に妖精国でやって以来か。だが、ドラゴンが立ちはだかろうとも自分は前に進む。それを、結果をもって証明しなければ。
手早く準備を整え、戦闘態勢を取る――前に一礼。
自分が礼をすると、ドラゴンが少々驚いたような表情になったが、向こうも軽く頭を下げてきた。その後は互いに戦闘態勢に入って、にらみ合う形となる。
「それではよろしいですね? 試練開始です!」
この階の担当者の声を合図に、自分とドラゴンはお互いに動き出した。向こうはまず空に浮かんでこちらを見ている。まずは様子見といったところか……こちらはもちろん弓による攻撃を真正面から行う。相手に攻撃が刺さるか否かを見るためだ。かつての戦いのように、鱗に対して攻撃が刺さらなければ、戦い方を考えなければならないのだから。
三本矢を番えて、ドラゴンに向けて放つ。最初はあえて受ける、そう考えていたのだが――ドラゴンはこの矢を、空中で急速に横にスライドする形で回避した。
対空状態からの急速な移動を可能としたのは恐らくドラゴンの魔法の力なんだろうが、重要なのはそこじゃない。ドラゴンが、回避行動を取ったのだ。
(つまり、あの矢を食らいたくない。自分の鱗では防ぎきれないと吐露したのと同じだ)
ならば、口を開けたところに【強化オイル】をぶち込んで内側からダメージを与えるしかなかったあの時とはすべての面で違う。真っ向勝負で十分やれるというのであれば、普段通りの動きでいい。
と、今度はこちらの番だとばかりにドラゴンが口を開く。ブレスを放つつもりだろう。阻止してもいいのだが――
(ここは一回見に徹するか。相手のブレスの特性を最初に見ておくというのは決して悪い事じゃない)
少し距離を取りつつ、ブレスが吐かれるタイミングを窺う。ドラゴンの喉の奥が青く発光し始め、徐々に圧を感じるようになる。そして発射されると同時に、自分は横に大きく飛んで回避した。
(まるでこちらに飛んでくる渦潮だな。もろに食らえばあの渦に巻き込まれて身動きが取れなくなり、あとはやられるがままになると見て良いな。それに渦の中に光を反射する何かがいくつもあった。ウォーターカッターみたいな水で作られた刃が交じっているのか)
相手のブレスも見られた。あとは近接戦闘能力、魔法による遠近攻撃能力がどれぐらいあるかだが、それは戦いの最中で見切っていくほかない。
再び矢を射かけるが、今度は魔法障壁っぽい壁を生み出して矢を防ぐ――いや、防ぎきれずに貫通した。
ただ、それでもやはり勢いは殺されるため、鱗に当たった矢は弾き返された。
ドラゴンからの攻撃はもっぱら魔法によるものばっかりになった。水、氷系の魔法をタイミングをずらしながらばらまいてくるのである。
一方でかなり至近距離まで寄っても、噛みついたり爪を用いた格闘戦はせず、すぐさま空中に逃げるのだ。あれだけ太い爪、立派な歯があるというのに……なぜだろうか?
(むー、魔法障壁による矢の威力軽減が面倒だなぁ。もちろん向こうからしてみれば、直撃なんて御免被るって話なんだから、障壁を解くはずもないんだけど)
接近戦を仕掛けるとすぐに逃げるんだよな……徹底的に遠距離戦のみで戦いたいというのが向こうの考えらしい。
もちろん、この行動すべてが釣りという可能性はある。ひたすら焦らして、こちらが突っ込んできたところに最高の一撃をカウンターで放つっていうパターンだな。自分もやった事があるから、その可能性は常に考慮している。
かといってこのまま遠距離戦に付き合い続けるのもなぁ。相手の手のひらの上で動かされている気分になるから、ちょっと嫌なんだよね。
ましてや相手は魔法障壁でこちらの矢の威力を常に下げている状態だ。このまま攻撃を続けて魔力消費を加速させてガス欠を狙うってのも、相手がドラゴンじゃなきゃありなんだけど……
(ドラゴンの魔力量なんて測る機会なかったもんねぇ。せめてデータがあれば、枯渇を狙うか他の手段を考えるかをすぐに決められるんだけど)
嘆いても仕方がないので、とにかく今は攻撃する。相手の魔法攻撃を相殺しつつ、こちらも遠慮なしに【八岐の月】で魔法障壁に矢をぶち込み続ける。
それにしてもひたすら滞空しながら魔法を引き撃ちしてくる。これ、インファイト特化のプレイヤーだと何もできないぞ?
ここまで極端な戦法をドラゴンが取るというところに、どうしても違和感を覚えてしまう。
(魔法障壁をどうにか破るしかなさそうだ……なら、複数方向からの射撃で揺さぶってみるか)
真正面から撃ち合っていてはキリがない可能性があるので、こちらも動く事にする。曲射やアーツを交えて、前面だけでなく上から襲いかかる攻撃も増やしてみたのである。
その結果、ドラゴンが展開している魔法障壁は常時展開されている球体であり、どこを狙い撃っても威力は軽減される事を知った。
だが、逆にどの角度から撃ち込んでも、完ぺきに魔法障壁が矢の勢いを殺す事がないのもまた事実だった。
勢いこそ失われるが、矢自体はブルー・ドラゴンの体に届いているのである。と、なれば……有効なアーツが存在する。使うのは久しぶりになるが……あれを使う事にしよう。
矢を番え、ゴブリンスカウト二体ができるだけ射線上に重なる時を待つ。
我慢には慣れている。我慢ができなきゃ社会で生きていく事なんかできない。
それからしばらく時間が過ぎ、ついに狙っていた瞬間がやってきた。悩む事なく矢を射る。チャンスなんて二回も三回もやってくるものじゃない。
放たれた四本の矢は、ゴブリンスカウトの頭部に一本、腹部に一本、腕に一本、そして外れてオークメイジに流れ弾として命中した。
頭部に当たったゴブリンスカウトはそのまま絶命したが、もう一方は腕にしか当たらず、健在。
追撃でさらに二本の矢を放ったが、ゴブリンスカウトがこちらの居場所を探し当てるのを妨害する事はできなかった。
命と引き換えに、こちらの居場所を仲間に教えたのだろう。
オーガの戦士達が自分に向かって一直線にやってくる。
敵ながらこれは見事というほかないな……オークメイジは完全にオーガの戦士達の陰に入ってしまっており、直接狙う事は難しい。なので、オーガの戦士達の頭部を狙って矢を放つ。
が、オーガ達も盾や武器を使って矢を弾く。流石は六〇〇階以降のモンスター、地上にいる連中よりもはるかに厄介だ。
だからこそ、こうして戦わなければならない場合以外はひたすら逃げを打ってきたわけだが。それに、こちらはまだアーツを撃っていない。
だから……矢を一本番えてアーツを放つ。
「《ブラストアロー》!」
久々に使う《ブラストアロー》。このアーツは相手を吹き飛ばす事に長けている。
今の自分の能力、使っている武器。それらを考慮すれば、オーガが盾で防ごうとしても……ぶっ飛ばせる。
「グガガガアアア!?」
「オオオオオ!?」
驚きながらもぶっ飛ばされ、地面に転がるオーガ達。
が、それを予想していたとばかりにオークメイジたちから魔法が飛んできた。
使われた魔法は、《フレイムスピア》《フリーズランス》《ライトニングパイク》。これらを大きな槍に変えて複数本放ってきた。プレイヤーが習得できる魔法とはちょっと違う。
特に《ライトニングパイク》という魔法が危険だ。ダメージもさる事ながら弾速が速い。
それが一気に複数飛んでくるのである。自分は《ライトニングパイク》の相殺を諦め、回避しながら他の二つの魔法を相殺すべく矢を弓に番える。
数本の《ライトニングパイク》が体を掠めたが、これは装備品のおかげで体力をほぼ減らす事なく凌いた。
相殺、そして反撃を兼ねた《ソニックハウンドアロー》を放つ。衝撃を伴った矢が飛ぶと、次々と《フレイムスピア》《フリーズランス》が砕け散って、一瞬の芸術を生み出して消えてゆく。
一方で《ソニックハウンドアロー》の方も、複数の魔法を相殺したが故に勢いを失い、オーク達に届く前に地面に落ちた。
が、これは予想通り。次の矢はもう番えている。
次に自分が放ったのは《風牢弓》である。これも久しいな……命中したところに風の竜巻が現れて牢を成し、相手を拘束する。
その後頭上から相手を射貫く矢が降ってくるのである。三本矢を番えて放っていたので、オークメイジ一匹ずつに脳天を貫く矢が降る事になる。
「ピギャアアア!?」
「ヒグッ!?」
「プィイイイイ!?」
三者三様の悲鳴を上げる。
だが、まだとどめを刺すには至らなかったようだ。
じゃあ追撃を――というタイミングで、オーガ達が立ち上がりオーク達の壁となった。
これ以上やらせてなるものか、とオーガ達のヘルメット越しに見える顔の一部から、その意思が窺える――
が、今壁になったとしても、オーク達の位置はもう十分に把握できている。ならば当然――
(角度よし、曲射!)
オーク達はまだ動けないだろうと判断しての曲射。三本の矢を番えて放ったこの一撃は――その後聞こえてきたオーク達のさらなる悲鳴と反応の消失から、ちゃんと命中したようだ。
よし、計算ミスはなしだ。
一方オーガ達は壁になったのにもかかわらずオーク達を曲射で仕留められた事で、激高したようだ。全員が一気に自分を押し潰さんと襲いかかってくる。
ここまでの戦いで自分を完全に射手だと考えているのだろう。が――ここからは【レガリオン】も持ち出して変則二刀流の構えを取る。
オーガ側はこれを苦し紛れと受け取ったのか、より突進速度を上げてくる。そして先陣を切ったオーガが、自分に向かって両手斧を振り下ろす。
まさにこの一撃で縦に真っ二つにしてやると言わんばかりだ。
もちろん自分はそんな事は御免被るので左に軽くステップを踏んで小さく回避。その直後にオーガの腕へと一撃を見舞う。
が、オーガの腕を断ち切るには至らず。それなりに斬撃は通ったんだが、切り裂けなかった。
これは流石オーガという事にしておこうか。
切りつけられたオーガは横にごろりと転がり、その後ろから今度は二匹の両手斧を構えたオーガが、自分を挟むように斜め上から両手斧を振り下ろしてくる。
これには一歩前に出て両手斧の横を激しく叩き、軌道をずらして対処。
さらに一歩踏み込んで、【八岐の月】の爪で自分の左側にいるオーガの首を狙う。しかし、これも決まらず。オーガは後ろに大きくのけぞり、爪の一撃を回避してみせたのだ。
だが、その体勢からさらに回避はできないだろう?
すかさず放った自分の追撃である【レガリオン】の一突きを、オーガはもろに食らう。
狙った場所は心臓あたりなんだが……だめか。オーガは後ろに飛びのいて胸を押さえてはいるが、今すぐ力尽きる様子はない。
外したか……いや、外されたのかもしれない。
いずれにしろ、こちらを侮ってくれているうちに、あと一匹でもいいから減らしておきたかったんだが、そうはいかなかったらしい。
オーガの片手剣と盾持ちが軽く叫んだ。その叫びはうまく聞き取れなかったが、意思はたぶん……相手を侮るなという事を伝えていたように感じられる。
事実、その一声? があった後にオーガ達は自分に突っ込んでくるのをやめて、一定距離を保っている。完全に警戒されてしまったな。
(向こうの、特に声を出したオーガはパワーだけじゃないという事か)
相手を認められる頭脳と、周囲を一声で従えるカリスマのようなものを持っているのだろう。扉前をガッチリ守っていた事といい……残りのオーガ軍団はそうそう簡単に倒させてはくれないようだ。
オーガ軍団と、さらに数合打ち合う。この打ち合いで一匹ぐらい隙を作って、そこを突くという動きをしたかったのだが……両手斧持ちのオーガ達の踏み込みが浅くなっている。大振りもやめて、斧の先で突くなど、隙が少なめな攻撃ばかりを繰り出してくる。
そして、ここに片手剣と盾を持っているオーガが参戦してきた。
片手剣と盾持ちが中央、左右に二匹ずつ両手斧持ちのオーガがいるという形だ。
さらにこいつら、少しずつではあるが自分の事を囲むような動きを見せている。今戦っている場所はそこそこ広いため、オーガが展開できるスペースがあるのだ、困った事に。
完全に囲まれると流石にきついので、左右に展開する動きを見せる両手斧持ちのオーガを牽制しつつ、中央で積極的に切り込んでくるオーガの相手をしなければならない状況だ。
ああもう、手が足りない。そして、そういうやり方をしてくる向こうのオーガの司令塔は、よく分かっている。
チクチクとちょっかいをかけてくる両手斧持ちのオーガ。
そして、積極的に盾を前に出して視界を潰しつつ、自分を叩き切ろうとしてくる片手剣と盾を持つオーガ。
じりじりと向こうの望み通りの陣が出来上がっていき――ついにその時が来た。
片手剣と盾持ちのシールドバッシュを自分が受け止めて、動きが止まったその瞬間。オーガ達が動く。
左右に展開していた両手斧持ちのオーガが大きく振りかぶる。片手剣と盾持ちのオーガも片手剣を大きく振り上げて――自分の脳天に向かって振り下ろしてきた。
まさに必殺の一撃、このためにこの状況を作り上げたのだろう。
でもね、それを食らってあげるわけにはいかないんだ。
天井に残滓となってしまった【真同化】のアンカーを突き刺し、体を後ろ斜め上に引っ張り上げる。これによって相手の振り下ろし攻撃から逃れる事ができた。
すかさず弓に矢を番えて、先ほどの攻撃に唯一参加していない、指揮を執っていると思われる個体の頭部を狙って放つ。
そのオーガは、え? といった疑問の表情を浮かべながら矢を顔に受け、そして倒れた。
「グア!?」
「オ、オオ!?」
残った五体のオーガは、手ごたえのなさにまず驚き――そして次に自分達の司令塔が殺された事に混乱したようだ。
それは戦いの場において致命的な隙となる。当然、逃す理由はない。彼らにも次々と矢のプレゼントを送りつける。だが一匹だけ、立ち直り矢を防いだオーガがいた。片手剣と盾を持った個体だ。
自分の仲間が殺された事に激高したようで非常に大きな声を上げる。その後、矢を撃ち終えて地面に着地した自分に向かって突進してきた。
その突進を、自分は《大跳躍》で飛び越え、後ろに回って【レガリオン】で首を刎ねた。憤怒の形相のまま、オーガの頭がゆっくりと転がり、そして消えた。
(パーティで連携してくるモンスターは何度も見たが……やっぱり面倒になるなぁ。この先はもっと増えそうだ……)
ああやだやだ、なんて思いながら扉を変化させ、中に入る。これで六四〇階に到達できた。時間的に今日はここまで。
先ほどの戦闘にかかった時間はさほどでもないけど、隠れていた時間が長かったため今日は時間切れとなってしまった。
でも、今後はこういう進み方がメインとなる。
どれぐらいの進行速度になるのかが分かったので良しとしよう。
(残されている時間はまだまだあるし、焦るような状況にはない。だからと言ってダラダラして良いわけじゃないけどさ……明日も確実に前に進もう)
と考えていたこのタイミングでインフォメーションが。もしかして、と思って見てみると、ツヴァイ達のパーティが白の塔を踏破したという告知が流れていた。昨日言っていた通り、今日で登り切ったのか。
でも、ツヴァイ達は今度は黒の塔の踏破を目指すと言っていたからな。休む間もなく挑み始めるんだろう。
(さて、完全制覇はどちらが先かな?)
一日遅れたツヴァイ側だが、黒の塔はとにかく戦闘オンリーで良い。一方で白の塔は力押しだけでは通じない。
これがどう運命を分けるかだな……グラッド達が白の塔の試練にちょっとでも躓けば、ツヴァイ達が追い抜くのは難しい話ではない。展開は予想しづらいだろう。
と、それはそれとして。自分は自分で白の塔を登り切らなきゃだめだ。まだまだ先があるし、特に七五〇階の試練はどんなものが来るか分からない。彼らの事にばかり気を取られていてはいけないな。
(明日もまたがんばろう)
そうしてログアウトした。
3
そんな塔の攻略が数日続き、そして、自分は七〇〇階に到達した。
「ようこそ、七〇〇階へ。ここまで来られたあなた達……ごめんなさい、あなただったわね。まずはお見事と言っておきます。ここまで来られただけでも、あなたがこの世界で上位に位置する猛者なのは間違いありません。ですが、この先に進めるのはその中でもさらに強く、諦めない人のみ。試練を始めましょう」
七〇〇階の試練の主は、これまた幼い女の子の外見をしていた。
だが、その喋り方は淑女。そのアンバランスさがなかなか面白い。そんな彼女は何を試練として出してくるのか。
「――ですがその前に言わせてください。まさかこの階層まで、試練によって強制的にパーティを組まされた時以外は単独で登ってくる人物がいるとは思ってもいませんでした。普段は単独でも、難関に挑む時はパーティを組むのが基本のはず。人は手を取り合い、困難に立ち向かって生きてきた。なのに、あなたはその在り方から完全に逸脱している。無論、装備などの入手、製作等で他者の手を借りているのでしょうが……」
なるほど、ソロ到達者としては自分が一番進んでいるって事になるのか。そしてこの反応……自分も立派に「他の人から見たら異常なプレイヤー」の一人なんだろうな。
「気を悪くされたら申し訳ないのですが、あなたの動きは他の方々よりも少々多めに記録させていただいてます。正直に申し上げて、この階層まで、たった一人で登ってくる事など不可能だと私達は考えていましたので。ですが、あなたの行動を見るたびに、私達の予想は常に裏切られ続けてきました」
別に、そんな事ぐらいで腹は立てない。こっちは別にやましい事は一切していないんだから。
「それぐらいかまいませんよ。好きなだけチェックしてください。やましい事も、後ろめたい事も何一つやってませんから」
微笑みながらそう口にすると、なぜかため息をつかれてしまった。
「あなたのおっしゃる通り、あなたは一切おかしい事をしていないと分かっています。だから私達には理解ができません。この塔の踏破はパーティを組んでなお、厳しい道程にしているはずなんです。特に五〇〇階以降は顕著に。しかし、あなたは今ここにいる。たった一人でこの塔をここまで登ってきた人物がいる。正直に申し上げます、驚異的だと」
何とも、驚愕と、敬意と、そして理解できないという感情が入り混じったお言葉だなぁ。
それでもずっとこのスタイルでこの世界を旅してきたから、このやり方が、この進み方が自分だ。
そうとしか言いようがない。
「その脅威的な姿を、ここでも示していただけるのでしょうか……楽しみでもあり、恐ろしくもあります。では、長くなってしまいましたが試練を発表いたします。あなたへの試練は……ドラゴンとの一騎打ちです。ドラゴンを打ち倒し、この先に進む権利があると示してください」
その言葉と共に、一匹のブルー・ドラゴンが奥からゆっくりと姿を見せた。
さらに部屋自体が轟音を上げて広がっていく。部屋が拡張を止めた時……広さは東京ドーム並みのサイズまで大きくなっていた。
「このドラゴンは塔の主によって生み出された存在……外に生きているドラゴンとは全くの別物です。ですが、強さは大差ありません。あなたが準備を整えたら、戦闘開始となります」
――ドラゴンとの一騎打ちか。懐かしいな……ずっと前に妖精国でやって以来か。だが、ドラゴンが立ちはだかろうとも自分は前に進む。それを、結果をもって証明しなければ。
手早く準備を整え、戦闘態勢を取る――前に一礼。
自分が礼をすると、ドラゴンが少々驚いたような表情になったが、向こうも軽く頭を下げてきた。その後は互いに戦闘態勢に入って、にらみ合う形となる。
「それではよろしいですね? 試練開始です!」
この階の担当者の声を合図に、自分とドラゴンはお互いに動き出した。向こうはまず空に浮かんでこちらを見ている。まずは様子見といったところか……こちらはもちろん弓による攻撃を真正面から行う。相手に攻撃が刺さるか否かを見るためだ。かつての戦いのように、鱗に対して攻撃が刺さらなければ、戦い方を考えなければならないのだから。
三本矢を番えて、ドラゴンに向けて放つ。最初はあえて受ける、そう考えていたのだが――ドラゴンはこの矢を、空中で急速に横にスライドする形で回避した。
対空状態からの急速な移動を可能としたのは恐らくドラゴンの魔法の力なんだろうが、重要なのはそこじゃない。ドラゴンが、回避行動を取ったのだ。
(つまり、あの矢を食らいたくない。自分の鱗では防ぎきれないと吐露したのと同じだ)
ならば、口を開けたところに【強化オイル】をぶち込んで内側からダメージを与えるしかなかったあの時とはすべての面で違う。真っ向勝負で十分やれるというのであれば、普段通りの動きでいい。
と、今度はこちらの番だとばかりにドラゴンが口を開く。ブレスを放つつもりだろう。阻止してもいいのだが――
(ここは一回見に徹するか。相手のブレスの特性を最初に見ておくというのは決して悪い事じゃない)
少し距離を取りつつ、ブレスが吐かれるタイミングを窺う。ドラゴンの喉の奥が青く発光し始め、徐々に圧を感じるようになる。そして発射されると同時に、自分は横に大きく飛んで回避した。
(まるでこちらに飛んでくる渦潮だな。もろに食らえばあの渦に巻き込まれて身動きが取れなくなり、あとはやられるがままになると見て良いな。それに渦の中に光を反射する何かがいくつもあった。ウォーターカッターみたいな水で作られた刃が交じっているのか)
相手のブレスも見られた。あとは近接戦闘能力、魔法による遠近攻撃能力がどれぐらいあるかだが、それは戦いの最中で見切っていくほかない。
再び矢を射かけるが、今度は魔法障壁っぽい壁を生み出して矢を防ぐ――いや、防ぎきれずに貫通した。
ただ、それでもやはり勢いは殺されるため、鱗に当たった矢は弾き返された。
ドラゴンからの攻撃はもっぱら魔法によるものばっかりになった。水、氷系の魔法をタイミングをずらしながらばらまいてくるのである。
一方でかなり至近距離まで寄っても、噛みついたり爪を用いた格闘戦はせず、すぐさま空中に逃げるのだ。あれだけ太い爪、立派な歯があるというのに……なぜだろうか?
(むー、魔法障壁による矢の威力軽減が面倒だなぁ。もちろん向こうからしてみれば、直撃なんて御免被るって話なんだから、障壁を解くはずもないんだけど)
接近戦を仕掛けるとすぐに逃げるんだよな……徹底的に遠距離戦のみで戦いたいというのが向こうの考えらしい。
もちろん、この行動すべてが釣りという可能性はある。ひたすら焦らして、こちらが突っ込んできたところに最高の一撃をカウンターで放つっていうパターンだな。自分もやった事があるから、その可能性は常に考慮している。
かといってこのまま遠距離戦に付き合い続けるのもなぁ。相手の手のひらの上で動かされている気分になるから、ちょっと嫌なんだよね。
ましてや相手は魔法障壁でこちらの矢の威力を常に下げている状態だ。このまま攻撃を続けて魔力消費を加速させてガス欠を狙うってのも、相手がドラゴンじゃなきゃありなんだけど……
(ドラゴンの魔力量なんて測る機会なかったもんねぇ。せめてデータがあれば、枯渇を狙うか他の手段を考えるかをすぐに決められるんだけど)
嘆いても仕方がないので、とにかく今は攻撃する。相手の魔法攻撃を相殺しつつ、こちらも遠慮なしに【八岐の月】で魔法障壁に矢をぶち込み続ける。
それにしてもひたすら滞空しながら魔法を引き撃ちしてくる。これ、インファイト特化のプレイヤーだと何もできないぞ?
ここまで極端な戦法をドラゴンが取るというところに、どうしても違和感を覚えてしまう。
(魔法障壁をどうにか破るしかなさそうだ……なら、複数方向からの射撃で揺さぶってみるか)
真正面から撃ち合っていてはキリがない可能性があるので、こちらも動く事にする。曲射やアーツを交えて、前面だけでなく上から襲いかかる攻撃も増やしてみたのである。
その結果、ドラゴンが展開している魔法障壁は常時展開されている球体であり、どこを狙い撃っても威力は軽減される事を知った。
だが、逆にどの角度から撃ち込んでも、完ぺきに魔法障壁が矢の勢いを殺す事がないのもまた事実だった。
勢いこそ失われるが、矢自体はブルー・ドラゴンの体に届いているのである。と、なれば……有効なアーツが存在する。使うのは久しぶりになるが……あれを使う事にしよう。
あなたにおすすめの小説
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
他サイトにも投稿しております。
※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。
※無断著作物利用禁止
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。