とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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連載

スイーツの準備

 色々なスイーツを買いたいという事で、女性陣に引っ張られる形で自分達男性陣があとに続く。女性陣のテンションが滅茶苦茶高いのは気のせいではない……やっぱりスイーツは女性を引き付ける力があるね。

「やっぱりまずはあそこ、あそこ押さえたいよね」「プロのパティシエさんがやってるってケーキ屋さん、ワンモアが残り僅かになったからって、こっちにも来てくれるようになった神様のような人だもんね」「確かにあそこのケーキは買っておきたいですね」

 どうやら、ワンモアのプレイできる時間が残り僅かになったことをきっかけに、塔の中にも食べ物を売りに来る人が増えたとのことで──ブルーカラーの女性陣はすでにいろいろと食べ歩いていたらしい。その中で一番おいしかったと評価しているお店に向かったようなのだが──

「ごめんなさい、すでに本日用意していた分は売り切れてしまいました。申し訳ございません」

 調理に向いた服を着ている女性プレイヤーが、ブルーカラーの女性陣に向かって深々と頭を下げていた。人気店というのは伊達じゃなかったようで、すでに商品は無くなってしまっていた。でも女性陣に大きな落胆は見られない。ある意味予想通りだという感じだ。

「まあ、これはしょうがないわね。ここのケーキは本当においしいもの」「では次、次に行きましょう。私が好きな和菓子も出してくれるお店でして──」

 気を取り直した女性陣は、カナさんの案内で次のお店に向かった。しかし──

「申し訳ございません、本日は売り切れと相成っております」

 なんとここも本日売り切れですと言われることになってしまった。この時のカナさんの表情は魂が抜けたような感じで呆然としていた。本当にお気に入りのお店だったのだろうが──売り切れてしまっている以上どうしようもないな。

「じゃ、じゃあ次に行こうよ。ボクが好きなモンブランをメインに色々売っているお店なんだけどさ──」

 と、今度はロナちゃんの案内で次のお店に向かったわけなのだが。

「そこのお店やってた人? 今日は見てないね……」「ログインしてからずっとここで店を出してるけど、今日は来てないのは間違いないよ」「風邪をひいたのかもね。私達も今日は来ないのかなと話してたぐらいで」

 お店の人がログインしていないと周囲のお店をやっているプレイヤーから教えられるという結果に。ロナちゃんは嘘だぁ!? とつい反射的に叫んでしまっていたが──なんというか、巡り合わせが悪いのだろうか? 売り切れが続いて次がお店自体が休業とは。

「仕方がないですね、では次は私が──」

 と、次はミリーがお店を案内してくれたのだが──そこでも今日は売り切れてしまったという返事が返ってきた。ここまでスイーツ関連が売り切れているって何があったのだという話になったのだが──近くのお店の人が理由を教えてくれた。なんでもいくつかの女性がメインのギルドがお茶会を開いているのだと言うのだ。

「滅茶苦茶ケーキとか買っていったらしいからね、今日はどこに行ってもスイーツは売り切れてるんじゃないかな。何せ合同のお茶会と言う事で、三〇〇人以上の女性プレイヤーが集まったって話だからお茶とかも相当購入してって話も聞こえて来たし」

 この話を聞いて、ブルーカラーの女性陣が膝から崩れ落ちたことは想像に難くないだろうが一応報告しておこう。まあそれはさておき……どうしよう? このままではブルーカラーだけ何のデザートも用意できないまま他ギルドの集合場所に向かわなければならなくなってしまうのだが。

「本当にどうしましょうか。流石に手ぶらはちょっと」「しかし、状況が状況だ。説明して詫びるしかないんじゃないか? 他のギルドも不可抗力だって認めてくれるだろ」「まあそうかもしれんが、流石に何もなしという訳にはいかんだろう。ここまで店をめぐってきたが、果物はまだ販売されていたしそれを詰め合わせて持っていくという手段があるぞ」

 ブルーカラーの男性陣もどうにかしようと話し合うのだが──やがてその視線は自分に集まってくる。ああ、口にしなくてもわかるよ。何か作れないかって事だろう?

「うーん、スイーツ系って作った事が無いんだよねぇ。だから上手くいくかの自信がない。時間はまだ多少あるが……作れたとしても普通のショートケーキとアレ位かなぁ」

 ショートケーキは、土台となるスポンジケーキさえうまく焼ければ後は何とかなる。もう一つは先ほど果物は売られていたというレイジの発言から候補に入れた、最近は店頭で見る事は少なくなってしまったスイーツだ。こっちは材料を多少追加すれば問題なく作れる。と考えた居ると、女性陣が集まってきた。

「作れるなら作って! カザミネ君の言葉じゃないけど、流石に手ぶらは嫌だもん!」「必要なものがあるなら買ってくるから! お願い!」「最後までアースさんに頼るのは申し訳ないのですが、それでもお願いできませんか?」

 と言われてしまったらどうしようもない。なのでショートケーキともう一つのスイーツ、フルーツポンチを作る事にした。と言ってもスイーツ系統は経験が少ない。なのでアレンジの効いたものは作れないごくごく一般的な見た目の物しか作れないが……今回はやむを得ないだろう。

 ショートケーキの方は土台のスポンジケーキを焼いて、その後にクリームと苺で飾り立てていく。クリームは何とか均等にスポンジケーキに塗り、その後絞り機で最低限の飾り立てを行う。その後適切な大きさに切り分ければショートケーキとなる。ただし何回も焼いて参加者にいきわたる&多少のお代わりが出来る量を作らなければならないのが大変だ。

 そして、スポンジケーキを焼く間の時間を使ってフルーツポンチの方も製作する。こちらはいくつもの果物を買ってきてもらい、それらを一口サイズに切って炭酸水と砂糖水で作ったシロップで満たした器に入れていくだけだが。なおリアルでシロップを作るのが面倒というならば、缶詰の果物の中に入っているシロップにサイダー系のジュースを混ぜれば早い。甘さはちゃんと調整しなければならないけどね。

 今回入れた果物は、イチゴ、キウイ、パイン、チェリー、バナナ、オレンジである。これは好みで替えていいので、難しいことは無いだろう。ただ、ここからちょっとした工夫が入る。フルーツだけだと、どうしても飽きが来るのが早くなってしまう。なのでここにもう一つ入れるものを作る。

 それは白玉粉から作るお団子。この白玉粉から作った柔らかく、くにゅッとした独特の噛み応えが新しい刺激となってフルーツポンチを美味しくする。また甘い中にさっぱりとした味が混ざる事で、いい箸休めの役割を果たすのだ。この白玉粉で作る柔らかいお団子の有無は大きいと自分は思う。

「とりあえずこれで格好はつくと思う」「格好がつく所じゃないぜ、本当に助かった!」「味見してもいい?」「少しだけならいいぞ」

 イチゴのショートケーキとフルーツポンチを両方、少しだけブルーカラーの面々に味見してもらった。料理に特殊な効果はついていないが(おそらくスイーツを作ったことが少ない事による経験不足が原因)評価自体は八を貰えていたので味は問題ない筈。自分も少しだけ口にして確かめてみる。

(よかった、突貫作業で作ったが味は悪くない。これならば問題はないだろう)

 ショートケーキもフルーツポンチも問題ない。ほっと胸をなでおろしていると女性陣から詰められた。原因はフルーツポンチにあった様だ。

「これ美味しい、もう少し食べたいよ」「色とりどりのフルーツで見栄えも悪くありませんし、もう少し試食をさせて欲しいですわ」「白玉が良いアクセントになっていますね。この白玉があるからこそ、よりおいしくなっているのが分かります」

 流石にもう少しを許すと、器一つ食い尽くされそうな雰囲気があったので拒否する。他のギルドの面々が十分に食べられるだけの量を用意しなければならない以上、これ以上の試食と銘打ったつまみ食いは阻止しなければならない。そして時間までに何とか、ショートケーキとフルーツポンチをまとまった量製作し集合場所へと向かう。

(仕舞う時、女性陣の視線が痛かったなぁ。逆にそれだけ気に入ってもらえたのなら、他のギルドにふるまっても問題はないな)

 という自信を貰ったのもまた事実だが。さて、他のギルドは何を用意してくれたのだろうか? 楽しみだ。
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