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いつ何時でも、忙しい時に限って邪魔をする奴は来る

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 そしてそのまま毎日親方やお弟子の皆さんの仕事を手伝うようになって三日後の事だった。その日も前日と同じ様に装備の修理を皆で分担して行っていた。すると突如鍛冶場の扉が蹴破られたような派手な音を立てながら開けられ、ある集団が鍛冶場に姿を見せた。

「親方ー、これの修理、明日までにちょっぱやでよろー」

 集団の一人がそう言うが早いか、でかい袋を五つほど投げつけるかのように置いてすぐさま出ていこうとする。自分や弟子の皆さんは状況が汲み取れず硬直していたが、親方だけは違った。

「無理だ! お前たちの依頼は受けれん! 今すぐそこに投げた装備をもってここから出ていけ!」

 親方の叫びに出ていこうとした集団が足を止め、振り向く。皆一様に不満げな表情を浮かべている。

「なんでだよ、俺たち依頼する側、つまりお客様よ? お客様の言う事をこなすのが職人って奴じゃねえの? 違う?」

 煽るような声色で、親方にそんな言葉をぶつける集団の一人。だが、親方はすぐさま首を振る。

「悪いが、もうすでに修理の予約はいっぱいでこれ以上は受けれん。表に看板も出しておいたはずだぞ、修理や装備の制作は当分受ける事は出来ないと!」

 これは親方の言う通りだ。あまりにも修理予約がいっぱい過ぎて、キャパオーバーなので二日前から看板を出してもう注文は取れません、どうかご理解のほどをと記載した看板を表に出してある。なお、相当でかく作ったので見落とすという可能性は無い。あれを見落とすと言い張るなら、お前の目はガラス玉だなと反論できる。

「は? そんな看板あったっけか? お前ら見たか?」「見てねえっす」「無かったぜ」「ないない、気のせいじゃなくなかったよ」

 そう言って笑う連中だったが、自分をはじめお弟子さんの方々はもう気が付いている事がある、それは連中の鎧などに木くずが多数ついてることに。当然、お弟子さんの一人がそこを問い詰める。

「へえ、所でその身に着けている立派な鎧やブーツに木くずがいくつも付いているようだが、それはどうしたんだい?」

 このお弟子さんの一人の言葉にムッとした表情を浮かべた女性プレイヤーがこう言い放った。

「ちょっと訓練していた先で付いただけよ、それが何か?」

 だが、この言葉に別のお弟子さんがすぐさま反論した。

「ほー、なおお前たちが最後の訓練場として選んだのは魔王領にある溶岩が噴き出すダンジョンだったはずだがな? ええ『飛天の紅』さん御一行様よ。そこには馴染みの連中からも昨日お前たちがそこで狩りをやっていたのと言う話を聞いているぜ? なんで溶岩地帯で木くずが付くんだ? おかしいよな?」

 ああ、この一団はそういうギルドの集まりなのか。そして、痛いところを突かれた事で、先ほど訓練舌先で着いたと口にした女性プレイヤーは押し黙る。次に口を開いたのは、別の飛天の紅所属の男性プレイヤーだ。

「そんなのどうでもいいじゃねえか、さっさとお前たちは俺らの装備の修理をすればいいんだよ。簡単な事じゃねえか」

 正直、この手の連中がまだこうして存在していたことにも驚きだが……まあ今まではここまで修理依頼が集中する事が無かったから親方達も依頼を請け負っていたんだろう。対価を踏み倒すという真似は流石にしていないだろうし。しかし、今は事情が異なる。ここにいる面子はログインするとすぐさまここに来てひたすら鍛冶場で修理をする。途中で水分補給と食事を取りはするが、基本的には働き続けるだけで一日が終わる。

 そんなフル回転状態でも、依頼された武具の数が多すぎて注文をストップさせなきゃいけない状態だ。間違いなく『簡単な事』の一言で片づけられる話ではない。だから当然お弟子さんから反論が出る。

「ふざけんな、こっちはログイン時間のほとんどを費やして親方や仲間と一緒に修理作業に当たっている状態だ! それでもいっぱいいっぱいだってのに、さらに追加だ? さらにちょっぱやで? お前たちはお客様じゃねえ、ただの邪魔ものだ! こうして話をしているだけで作業が止まって他の人に迷惑が掛かってんだ! さっさと帰れ!」

 このお弟子さんの言葉に、他のお弟子さん達も「その通りだ、さっさと出ていけ!」「こっちの邪魔をこれ以上すんな!」「他を当たれよ!」と声を上げる。当然の反応だな、そしてみんな口には出していないが、目の前にいるこいつらは看板をぶっ壊して入ってきたと確信しているはずだ。そんな連中の依頼なんか、この状況で受けようと考えるはずもない。

「お前ら、お客様は神様だって言葉を知らねえの?」「それは店側の考え方の一つであり、客側が口にしていい言葉ではない! それに神であってもその神に従うか否かは個人の意思次第だ!」

 ついに連中がお客様は神様だというフレーズを持ち出してきたので、自分はすぐさま反論を行った。そう、それは店の考え方の一つであって客側がそう考えて良いと言う訳ではないのだ。それに前にも上げたが最近ではお客様は王様だって考えもある。王様だから失礼な事が無い限りは丁寧に接するが、理不尽なことを去れれば革命を起こして追い出せばいいという考えだ。

「てめえら、何か生意気じゃね? お前らの悪評を流して何もできなくしたっていいんだぜ?」「構わん、今すぐやってみろ。金はもう十分稼いだ。鉄も十分に打った。残り一年は世界を護衛を雇ってのんびり回ってみるのも良いと考えている。今任された仕事が終わったら、看板を下ろすことになっても俺や弟子たちは何にも困りはしねえぞ?」

 飛天の紅側から出た脅しの言葉に、親方はドスを利かせた口調であっさりとそう反論した。更に──

「このやり取りは、現在進行形で専用の場所にネットで流れている。元々は修理の進み具合と修理が済んだ人への受け渡しの連絡を行うことが主な役割だったが……お前のような奴が来てこっちを脅してくるのは今に始まったことじゃない。それなりの防衛策は取らせてもらっていると言う訳だ。言っておくが、今の状況を知った俺たちに注文をくれた皆からはお前たちに対して怒りの声が多数上がっているぞ」

 親方がそう喋った直後、再び大きな音とともに鍛冶場の扉が開かれた。

「親方達の仕事の邪魔をしている阿保が居るのはここか!」「飛天の紅、またお前たちかよ! いったい何回何人もの間で揉め事を越せば気が済むんだ!」「この世界はお前たちの都合だけで動いている訳じゃねえ! そう言う世界が好きならオフラインのゲームだけやってろ!」

 大勢のプレイヤーが、ここに押し寄せてきたのである。そして飛天の紅のメンバーを強引にひっつかんで鍛冶場から追い出していく。抵抗する飛天の紅メンバーだが、数が違い過ぎる。何せ塔の開放日があと四日後に控えているから、それだけ大勢のプレイヤーがファスト周辺にいる。こんな騒ぎを起こせば、それを止めるべく動くプレイヤーも当然いるのだ。

「お前たちを拘束させてもらう!」「ふざけんな、何の権利があって──」「私はこの街の警備を取り締まっている者だ! お前達の恐喝、並びに器物破壊行為は確認が取れている! 悪質だからな、連行させてもらうぞ! ただでさえ最近は忙しいのにこんな騒ぎを起こしおって、ただではすまさんぞ!」

 どうやら、ファストの警備員の方々まで出張ってきたらしい。多分この状況を知ったプレイヤーが通報したんだろう。そんな方々に手錠らしきものをつけられて引っ張られていく飛天の紅のメンバー。逃げようとした者も当然多くいたが、それを他のプレイヤーが許す訳もない。きっちり全員が引っ張られていく事になった。

「親方、これでたぶん静かになる。仕事に集中してくれ」「ありがとうよ、来てくれて助かった。お前らから請け負った仕事はきっちりこなすことで礼とさせてくれ」

 多くのプレイヤーが協力してくれたおかげで、作業が中断された時間はあまり長くならずに済んだ。とはいえタイムロスであることに変わりはない。その遅れを取り戻すべく、また皆で槌を振るって修繕作業に戻る。まったく、邪魔をしてくれちゃって……納期直前に横やりを入れられた時の腹立たしさと同じぐ来にはむかっついた。さてと、そんな心を早く沈めで目の前の作業に集中しないと……
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