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腹立たしい横やり
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再び始まる剣戟。間合いを開いての射撃と交えながらぶつかり合う。マズい、楽しい。勝たなきゃいけないのに、この勝負自体が楽しくなってきている自分がいる。ぶつかり合うたびに様々なパターンを予想し、外れたらカバーして当たってたら押し込もうという駆け引きが数秒間に激しく行われる。
お互いにファーストヒットは今だ無し。こうなるとファーストヒットをどちらが先に取るかで流れが決まってくる。向こうもそれを分かっているからこそ取りたいはず……と、ここで距離が開いたところで赤い騎士がシールドをブーメランのように投げつけてきた。ちょっと予想外だったが、左手の盾で弾く。
投げつけられた盾にはワイヤーの様なものがついていたようで、弾かれた盾は引っ張られて赤い騎士の左手に戻る。同じような事を考える人はやっぱりいるよねぇ……まあ、自分は盾の中にスネーク。ソードの刀身を隠しているけど……これはもっと効果的なタイミングで振るいたいのでまだ隠している。
「むう、盾投げもあっさり防ぐとは……」「まあ、経験がありまして」
くどいようだが師匠から暗器系の知識もたたき込まれている。それに比べればモーションが見えるシールド投擲はまだ対応がしやすい方だ。楽だとは言わない、楽だとは言わないが!
「ならば、遠慮なく次の札も切っていけそうだ! 行くぞ!」
言葉通り、赤い騎士は魔法を放ち始めた。どうも盾の裏に魔法の発動体&補強体があるようで、赤い騎士の魔法は盾の裏から発生し、一旦赤い騎士の体を避けるように後ろに飛んだあとにこちらめがけて襲い掛かってくるという、あまり見ない挙動をしている。ただ、かなりホーミング能力が高いようでこちらの動きに食らいついてくる。
なので、回避だけでなく弓矢による攻撃で魔法をぶち抜く必要性がある。下手に回避のみでやり過ごそうとして避けた魔法が背中から再び襲ってくるとかあったからなぁ。一応何とか回避できたが、あれは危なかった。
もちろん魔法だけでなく接近戦もやってくるので、より戦闘における判断力が問われる戦いになってきた。タイミングが悪いと前門の紅い騎士、後門の戻ってくる魔法という状況が出来上がってしまう。一回そうなってしまい、赤い騎士の体を跳び箱の様に使って飛び越えホーミングしてくる魔法を赤い騎士に当てて防ぐと言った行為をやった。
ただ、自爆は無かったようで魔法がぶつかった後の鎧に傷や汚れは一切なかったのがちょっと納得いかない。そこそこの威力がある魔法なんだから、自爆判定があっていいと思うんだがな? まあ、おかげで自爆を誘って魔法を誘導するのは無意味だと知れたから良しとする。
「魔法を絡めた戦いでも当てられんか! 面白い!」
向こうもそんな事を云いながらより剣技と魔法の二刀流……いや、盾による攻撃もあるので三刀流か。それらでより圧をかけるように斬りかかり、盾で圧し潰そう都市、距離が相手も魔法をばらまいてこちらの手を潰しながらダメージを与えようと攻め立ててくる。
一方でこちらは剣はレガリオンで対処し、盾は盾で防ぎ、魔法は弓矢で叩き落とす。もちろん弓矢で魔法をたたき落としつつ赤い騎士に向けて射撃もしているんだが……これを今の所赤い騎士は全て対処している。むー、そんなに自分の弓の腕は安っぽいとは思えないんだけどなぁ。それはただの思い込みか思い上がりかな?
そんなこんなで激しくもお互いにしのぎを削る熱い戦いは突如終わりを告げた。先の戦いで桃色の鎧を着ていた騎士が忠告していた横やりが入ってしまったからである……横やりを入れてきた犯人は──黒い鎧を着着た騎士だった。こいつだけは片手剣に盾という装備ではなく、漆黒の両手剣を持っていた。
登場したのは、何度目かのぶつかり合いが終わってお互いに間合いを取った直後。亜空間の穴が開くような演出の後、赤い騎士の背中にそいつは現れた。現れると同時に攻撃をしてくる気配を感じたので自分は全力で──
「横に飛べ!」
そう叫んだ。だが、間に合わなかった。赤い騎士も自分の言葉に反応して右側に飛ぼうとしたのだが……それよりも早く、黒い騎士の両手剣が赤い騎士の腹部辺りを貫いた。腹部を貫いてきた両手剣の切っ先には、当然ながら血がべったりと付着していた……
「き、さま……!!?」「は、ちんたら遊んでるから出てきてやった。たまたま出場の抽選に漏れただけでこんなダラダラとしたかったるい戦いを延々と見せられるのはなかなかの拷問だったぜ」
そんなやり取りの後、赤い騎士を貫いたままの両手剣を黒い騎士は闘技場の端まで投げ捨てた。
「そこで見てろ。お前が武舞台の上から消える前にこいつとあと一人を潰してやる。それで俺達の勝ちになるんだ、構わんだろ?」
と、空中に裂け目を生み出して再び両手剣を呼び出してその手に握った。
『ちょっと待て! こんな話は聞いていないぞ! お前たち騎士団は今回あの赤い騎士を含めた五人が出て、お前は出場しないという話で決まっていたはずだ! 勝手にルールを曲げてるんじゃない! 退出しろ!』
ここで司会者さんが黒い騎士に対して武舞台を降りろと叫んだ。しかし、一方の黒い騎士はどこ吹く風だ。
「だから、あの役立たずをああして封じたんだろうが。俺に勝てば、こいつらが勝ち抜きで試練突破という所は変わんねーし? それに俺が下りてもアイツはもうあんななりだから戦えねーぞ? それで試練突破としていいのかー? なあ? なあ!」
この黒い騎士は、この試練に対して一定の知識を持ってるって事か? そうじゃなきゃあんな言い方は出来んよな。それに──
「ならば、一部ルールを変更願いたい。自分が勝っても負けても、こいつの出番はここまで。次の戦いは無効試合でこちらの勝ちとしてほしい」
自分の言葉を聞いて、司会者と黒い騎士の注目が一気に自分に向いたのを感じる。
「何を言ってやがる? お前を倒したら次はあの女が出てくるのが決まりだろうが!」「出てくるはずのない余計な邪魔な存在が決まり云々を口にする資格があるはずない! そんな事すら分からんのか?」
黒い騎士の言葉には、すぐさま反論。そもそものルールを破ったこいつに、ルール云々言われる筋はない。横紙破りをやったのはお前の方なんだ。
『む、むう。確かに今回の事はこちらの不手際だ。今すぐ無効試合としてそちらの勝ちにしても、上からは問題なしとされるだろう。だが、君はその黒い騎士と戦うというのかね?』「ええ、ちょっと、久しぶりに、本気でね……」
司会者からの問いかけにはそこで一度言葉を区切ってから……言葉を続けた。
「頭に来たんですよ。こういう手合いは、特に許しがたい性格でしてね!」
こっちが真剣にやっていた所に、こんな無粋極まりない横やりを突き立ててくるとはな。本当にここまで頭に来たのは久しぶりだ。ただではすまさん。
「は、威勢が良いな? だが、お前の手は全部見た。俺には勝てねえよ、擦り潰してやるぜ!」
──こちらの手札は、確かに赤い騎士との戦いで『ある程度』は見せた。だが……それで勝てないとこちらに宣言するのはあまりにも浅はか過ぎないか? それとも、あの戦いで自分が必死に戦っているように見えたか? そうだとしたら、観察眼がいまいちだな。先ほどの紅い騎士を突き立てた両手剣をぶん投げることが出来るのだから相当なパワーはあるようだが……パワーだけで勝てれば苦労はない。
「じゃ、いくぜ? さっさとくたばりな!」
とても騎士とは思えない口調のまま、黒い騎士……いや、黒い騎士もどきが両手剣を構えて突っ込んできた。こんな奴に、負けてやるものか。しっかりと、擦り潰してやる。
お互いにファーストヒットは今だ無し。こうなるとファーストヒットをどちらが先に取るかで流れが決まってくる。向こうもそれを分かっているからこそ取りたいはず……と、ここで距離が開いたところで赤い騎士がシールドをブーメランのように投げつけてきた。ちょっと予想外だったが、左手の盾で弾く。
投げつけられた盾にはワイヤーの様なものがついていたようで、弾かれた盾は引っ張られて赤い騎士の左手に戻る。同じような事を考える人はやっぱりいるよねぇ……まあ、自分は盾の中にスネーク。ソードの刀身を隠しているけど……これはもっと効果的なタイミングで振るいたいのでまだ隠している。
「むう、盾投げもあっさり防ぐとは……」「まあ、経験がありまして」
くどいようだが師匠から暗器系の知識もたたき込まれている。それに比べればモーションが見えるシールド投擲はまだ対応がしやすい方だ。楽だとは言わない、楽だとは言わないが!
「ならば、遠慮なく次の札も切っていけそうだ! 行くぞ!」
言葉通り、赤い騎士は魔法を放ち始めた。どうも盾の裏に魔法の発動体&補強体があるようで、赤い騎士の魔法は盾の裏から発生し、一旦赤い騎士の体を避けるように後ろに飛んだあとにこちらめがけて襲い掛かってくるという、あまり見ない挙動をしている。ただ、かなりホーミング能力が高いようでこちらの動きに食らいついてくる。
なので、回避だけでなく弓矢による攻撃で魔法をぶち抜く必要性がある。下手に回避のみでやり過ごそうとして避けた魔法が背中から再び襲ってくるとかあったからなぁ。一応何とか回避できたが、あれは危なかった。
もちろん魔法だけでなく接近戦もやってくるので、より戦闘における判断力が問われる戦いになってきた。タイミングが悪いと前門の紅い騎士、後門の戻ってくる魔法という状況が出来上がってしまう。一回そうなってしまい、赤い騎士の体を跳び箱の様に使って飛び越えホーミングしてくる魔法を赤い騎士に当てて防ぐと言った行為をやった。
ただ、自爆は無かったようで魔法がぶつかった後の鎧に傷や汚れは一切なかったのがちょっと納得いかない。そこそこの威力がある魔法なんだから、自爆判定があっていいと思うんだがな? まあ、おかげで自爆を誘って魔法を誘導するのは無意味だと知れたから良しとする。
「魔法を絡めた戦いでも当てられんか! 面白い!」
向こうもそんな事を云いながらより剣技と魔法の二刀流……いや、盾による攻撃もあるので三刀流か。それらでより圧をかけるように斬りかかり、盾で圧し潰そう都市、距離が相手も魔法をばらまいてこちらの手を潰しながらダメージを与えようと攻め立ててくる。
一方でこちらは剣はレガリオンで対処し、盾は盾で防ぎ、魔法は弓矢で叩き落とす。もちろん弓矢で魔法をたたき落としつつ赤い騎士に向けて射撃もしているんだが……これを今の所赤い騎士は全て対処している。むー、そんなに自分の弓の腕は安っぽいとは思えないんだけどなぁ。それはただの思い込みか思い上がりかな?
そんなこんなで激しくもお互いにしのぎを削る熱い戦いは突如終わりを告げた。先の戦いで桃色の鎧を着ていた騎士が忠告していた横やりが入ってしまったからである……横やりを入れてきた犯人は──黒い鎧を着着た騎士だった。こいつだけは片手剣に盾という装備ではなく、漆黒の両手剣を持っていた。
登場したのは、何度目かのぶつかり合いが終わってお互いに間合いを取った直後。亜空間の穴が開くような演出の後、赤い騎士の背中にそいつは現れた。現れると同時に攻撃をしてくる気配を感じたので自分は全力で──
「横に飛べ!」
そう叫んだ。だが、間に合わなかった。赤い騎士も自分の言葉に反応して右側に飛ぼうとしたのだが……それよりも早く、黒い騎士の両手剣が赤い騎士の腹部辺りを貫いた。腹部を貫いてきた両手剣の切っ先には、当然ながら血がべったりと付着していた……
「き、さま……!!?」「は、ちんたら遊んでるから出てきてやった。たまたま出場の抽選に漏れただけでこんなダラダラとしたかったるい戦いを延々と見せられるのはなかなかの拷問だったぜ」
そんなやり取りの後、赤い騎士を貫いたままの両手剣を黒い騎士は闘技場の端まで投げ捨てた。
「そこで見てろ。お前が武舞台の上から消える前にこいつとあと一人を潰してやる。それで俺達の勝ちになるんだ、構わんだろ?」
と、空中に裂け目を生み出して再び両手剣を呼び出してその手に握った。
『ちょっと待て! こんな話は聞いていないぞ! お前たち騎士団は今回あの赤い騎士を含めた五人が出て、お前は出場しないという話で決まっていたはずだ! 勝手にルールを曲げてるんじゃない! 退出しろ!』
ここで司会者さんが黒い騎士に対して武舞台を降りろと叫んだ。しかし、一方の黒い騎士はどこ吹く風だ。
「だから、あの役立たずをああして封じたんだろうが。俺に勝てば、こいつらが勝ち抜きで試練突破という所は変わんねーし? それに俺が下りてもアイツはもうあんななりだから戦えねーぞ? それで試練突破としていいのかー? なあ? なあ!」
この黒い騎士は、この試練に対して一定の知識を持ってるって事か? そうじゃなきゃあんな言い方は出来んよな。それに──
「ならば、一部ルールを変更願いたい。自分が勝っても負けても、こいつの出番はここまで。次の戦いは無効試合でこちらの勝ちとしてほしい」
自分の言葉を聞いて、司会者と黒い騎士の注目が一気に自分に向いたのを感じる。
「何を言ってやがる? お前を倒したら次はあの女が出てくるのが決まりだろうが!」「出てくるはずのない余計な邪魔な存在が決まり云々を口にする資格があるはずない! そんな事すら分からんのか?」
黒い騎士の言葉には、すぐさま反論。そもそものルールを破ったこいつに、ルール云々言われる筋はない。横紙破りをやったのはお前の方なんだ。
『む、むう。確かに今回の事はこちらの不手際だ。今すぐ無効試合としてそちらの勝ちにしても、上からは問題なしとされるだろう。だが、君はその黒い騎士と戦うというのかね?』「ええ、ちょっと、久しぶりに、本気でね……」
司会者からの問いかけにはそこで一度言葉を区切ってから……言葉を続けた。
「頭に来たんですよ。こういう手合いは、特に許しがたい性格でしてね!」
こっちが真剣にやっていた所に、こんな無粋極まりない横やりを突き立ててくるとはな。本当にここまで頭に来たのは久しぶりだ。ただではすまさん。
「は、威勢が良いな? だが、お前の手は全部見た。俺には勝てねえよ、擦り潰してやるぜ!」
──こちらの手札は、確かに赤い騎士との戦いで『ある程度』は見せた。だが……それで勝てないとこちらに宣言するのはあまりにも浅はか過ぎないか? それとも、あの戦いで自分が必死に戦っているように見えたか? そうだとしたら、観察眼がいまいちだな。先ほどの紅い騎士を突き立てた両手剣をぶん投げることが出来るのだから相当なパワーはあるようだが……パワーだけで勝てれば苦労はない。
「じゃ、いくぜ? さっさとくたばりな!」
とても騎士とは思えない口調のまま、黒い騎士……いや、黒い騎士もどきが両手剣を構えて突っ込んできた。こんな奴に、負けてやるものか。しっかりと、擦り潰してやる。
応援ありがとうございます!
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