とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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26巻

26-3

 さてどうするか……こっちはまだ、地上から上がってきた後発隊との顔合わせが済んでいない。自分達が行ったら、要らぬ混乱を呼ぶかもしれん。アクアがいれば友軍である目印になるか? でもなあ、戦場で不確定要素を増やすのは悪手だろうし。
 助力したいがどうしたものか、と自分が考えていると、そこに雨龍さんから念話が飛んできた。

『アース、聞こえるかの? 我らもついに空に上がったぞ。お主は今どこで何をしておる?』

 なので雨龍さんに、接近中の飛行物体に対する迎撃作戦に自分達も参加したいが、こちらの姿が独特過ぎるので混乱を招く可能性があることを伝えて、どうしましょうか?と相談してみた。

『そうか、状況は分かったぞ。とりあえず、わらわが今から迎撃に出る者にそちらの姿の特徴を教えて、協力者だから攻撃してはならぬと伝えておこう。戦いが終わった後にその協力者?の中からお主が姿を見せればよかろう。珍妙な話じゃが、そういう存在なのじゃろう?』

 雨龍さんにパワードスーツなんて言ってもうまく伝わるはずもないから、あれこれ言葉を選んで伝えたんだけど、やっぱりちょっと不安が残るな。どういうものか、一度直接見せて説明するべきだろう……
 とにかく、兵士達の教官として活動していた雨龍さんの言葉なら皆も聞いてくれるだろうし、細かい説明は戦いの後でいい。

『ええ。それでは、こちらはアクアと共にそちらに向かいます』
『うむ、空中で迎撃できねば今建築中の前線基地が危ういからの。ここは負けられんぞ』

 これで敵と誤認される心配はないだろう。さて、あとは……

「その新型スーツの重量ってどんなもんなんでしょう? アクアが運べればいいんですが……」

 そう、スーツの運搬が問題だ。強化されたのは嬉しいんだけど、それにともなって大型化したという話だったからな。アクアに運べなかったら、最悪この浮遊島に住んでいるドラゴンさんに運んでもらう他ないだろう。
 そう考えていたのだが、これはいらぬ心配だったらしい。

『ああ、それなら心配いらないぞ。ブースターの追加と、飛行ユニットも完成しているからな。実際に見せたほうが早いか』

 そんな言葉と共に、以前パワードスーツが出てきた扉が再び開き、そこから三つの平べったい飛行機のような物が飛んでくる。
 飛行ユニット、つまりパワードスーツが上に乗ることを考慮しているためか、サイズは一〇メートル弱とでかい。また上面には、脚部を固定して安定させるためと思われる装置がついていた。
 武装も存在しているらしく、魔力バルカン砲を四門、魔力チャージブラスター砲を二門搭載しており、飛行ユニット単体でもある程度戦えるとのこと。三つあるのは破壊されたときの予備だそうだ。
 ちなみに、幼女と白羽さんは研究者の説明をほとんど理解できていなかった。まあ、無理もないけど。
 しかし、この飛行ユニット……昔アメリカで考えられた「フライングパンケーキ」という愛称の飛行機に似ている。ちょっと調べればすぐ出てくるぐらいには有名かつ珍兵器扱いをされていて、自分も初めに見たときはなんじゃこれと思ってしまったな。
 ともかく、それにあやかってこれもそう呼ぶことにしよう。

『運用までそちらの手をわずらわせているようでは話にならんからな。研究者としての面目めんぼくというやつだ』

 ――まあ移動に苦労しないのであればそれに越したことはない。それにこれならスーツを着たまま気軽に空中戦ができる。

「よく分からないけど、とにかくそれがあれば空でも戦えるってことなんでしょ? 私も元ドラゴンだから、自力で空を飛べるわよ。ただ、長時間飛ぶときは翼を出さなきゃならないけど」

 白羽さんはそう言って、背中から翼を出した。その翼はドラゴンのものだ……うん、これなら白羽さんが有翼人と勘違いされることはないな。

「アクアも当然飛べるから問題なし……よし、こっちに向かってくる敵がいないのであれば、出撃しますか。じゃあ、自分はスーツの中に入りますね」

 自分の言葉を受けて、スーツの装甲部分がスライド展開し、人一人が中に入れるスペースが出来る。スライドする部分が多すぎて、どういう風に動いてるのか自分にはもうさっぱり分からん。
 ともかく、中に乗り込むと、再び装甲がスライドして閉じる。さて、強化後に乗るのは初めてだが、具合はどうかなっと。

「モニターの正常起動を確認。三六〇度よく見えます」
『よし、では行くぞ。飛行ユニットの脚部固定装置に足を置いてくれ』

 研究者に指示された通りに飛行ユニットに乗り、脚部を固定する。すると飛行ユニットの固定具が起動して、足をがっちりと押さえる。この辺はメカアニメにも似ているな。それなら――

「……ではアース、これより出撃します!」
『ああ、行くぞ。今度はこちらが攻める番だ!』
「私達も続くからね」
「ぴゅい!」

 それ系のアニメのお約束っぽい台詞せりふを言ってみたが、普通に対応されてしまった。気合を入れるために言ったと思われたのかな。まあいいか、それならそれで。
 フライングパンケーキの両翼についている二つのプロペラの回転速度が上がり、空へと飛び立つ。戦いに行くんじゃなければ、もう少しここら辺を堪能たんのうできたんだが。
 予想よりは穏やかな音と共に空を駆ける。陣形としては、自分が最前列で、そのやや後ろに飛行ユニットが二機随伴ずいはん。そのまたやや後ろに白羽さんとアクアがついてきている形だ。かなりのスピードで移動できているので、これならすぐに戦場までたどり着ける。
 到着までの時間を活かして、研究者から新しいスーツの能力を聞いておく。パワーが上がってるだけじゃなく、新しい武器も搭載されてるからな。
 そして数分後、たどり着いた先ではすでに戦闘が始まっていた。戦闘に加わる前に、一応通信の魔道具を起動させる。いくら雨龍さんから話がいっているにしても、やっぱり自分で確認するのは大事だと思うのですよ。

『あー、あー、こちらは別動隊。これより、島への侵攻を阻止すべく戦っている皆さんに加勢する。変わった姿だが、自分は友軍です。飛行物体に乗っている連中以外には攻撃を仕掛けません』

 そう通信を流すと、数人が手を挙げて応えてくれたから、多分これで大丈夫だろう。
 さて、状況は……うん、やっぱり飛行物体の上だけに行動範囲が縛られている敵プレイヤー軍団と、自由に空を飛べて魔法やらブレスやらで気兼ねなく攻撃できる魔族&ドラゴン組じゃ、露骨ろこつに差が出るね。もちろん向こうも魔法や矢で時々反撃はしているけど、足場の差で良い位置取りをさせてもらえてないな。


「では、敵側で一番損害が出ていない場所に乗り込んで、直接ぶん殴りますか」
『ふむ、それもありか。ではあそこだな』

 四つある敵プレイヤー軍団側の飛行物体のうち、一番よく守り一番よく反撃している一機に近づいた自分は、飛行ユニットから飛び降りて着地した。数人がスーツの重みでプレスされ、そこそこのダメージが入った模様。ただ即死はしなかったので、防御力や体力がかなり高いな。並の人ならぷちっとなるぐらいの重量はあるはずなんだが。

「なんだこいつ!?」
「なんでもいい、敵だってことさえ分かれば!」
「とにかく反撃しろ! あと潰された奴らに回復を……」

 おっと、回復されたら困るので、下敷きにした奴らを掴んで真上にぽいっと投げ捨てた。それを上空にいた白羽さんが待ってましたとばかりに一刀両断。これでとりあえず数人減ったか。

「と、とんでもねえな……前衛、死ぬ気で防御しろ! そうしなきゃあっという間に全滅するぞ!」
「言われんでも分かってるわ! 重鎧着た連中を片手で次々と宙にぶん投げるとか、どんなバケモンだよ! マジで何が起きてんだ!?」

 さてと、ここで心を折れば少しは今後が楽になるかな? ちょっと大人げなく、この新しいスーツの力を使わせていただくとしましょうか。



 5


 ではまず最初は……この大きくなった腕が繰り出すパンチの威力がいかほどかを試すか。
 パワーの程は先程重装備プレイヤーを軽々とぶん投げることができたから分かっているが、それだけではパンチの威力は決まらない。速さと拳の堅さ、そして何より、それらを支える耐久性。これらが揃っていないと始まらない。
 とりあえず、大盾や中盾で壁を作っている近くのプレイヤー達に狙いを定める。盾をがっちりと構えているので、空振りさせられる心配はまずないだろうと考えてのことだ。
 距離を詰めて、右腕を振るって大盾のど真ん中にパンチを一発ぶち込んでみた。
 そのときに生まれた音はどう表現すればよいのだろうか? 少なくとも、金属同士がぶつかった音じゃない。じれ、穿うがたれ、つぶれるような音だった。
 頑丈であるはずの大盾には、パンチ一発でゆがみが生まれていた。それもかなり大きな歪みが。
 同じ大盾に、すかさず左腕でもパンチを叩き込む。歪みは広がり、ヒビも入り、盾としての役目はもはやこなせないことが容易に窺えるレベルで破壊された。おそらくもう一発パンチを叩き込めば完全に砕け散るだろう。
 が、ここでこの大盾を持っていたプレイヤーはすぐに盾を捨てて後ろに下がった。そこに生まれた隙間を、他のプレイヤーが即座に埋める。

「大盾があっという間におしゃかだと!? これじゃ中盾だと一発受け止められるかどうかも分からねえぞ!? 盾持ちは死ぬ気でダメージ軽減アーツをタイミングよく発動しろ! アーツ抜きで受けたら、大盾といえどすぐぶっ壊されるぐらいの持ちのボスだ!」

 後ろに下がったプレイヤーが大声で周囲に警告する。
 なるほど、この剛腕から繰り出されるパンチの重さを量るために、今のはあえてアーツなしで受けてみたのか。

「後衛はガンガン攻撃しろ! こいつが乗り込んできてから、周囲の連中からの攻撃はやんでるだろ! 最低限の防御だけを除いて、持てる力をこいつの排除に突っ込め! そうしなきゃ全滅するぞ!!」

 指揮官らしきプレイヤーの叫び声による指示も聞こえるな。
 さて、ここからはパンチでラッシュをかけていくぞ。
 この腕から繰り出すパンチは、拳による破壊だけじゃなく、拳を中心として半径一メートルほどに衝撃波のフィールドを生むことを、研究者から教えてもらっている。だからラッシュを繰り出せば、発生する衝撃波で近くにいる奴らにもダメージが行くし、矢とか魔法を相殺そうさいすることもできる。多分、一種の壁を生み出すというイメージが近い、攻防一体の戦闘方法だ。
 ちなみにキックだと衝撃波の半径が二メートルになり、威力もパンチより高い。
 こちらがラッシュを繰り出し始めるのと、敵プレイヤー軍団の後衛が自分に攻撃を始めたのは、多分ほぼ同時だった。こちらのパンチに合わせて向こうの大盾が輝いたりするので、アーツを使っているんだろうとは思うが、パンチの速度を上げたらついてこれなくなっているようだ。アーツにはクールタイムがあるから、そっちの意味でも追いつかないか。

「盾がもう持たねえ、どんな火力だよあのメカゴーレムみたいな奴は! 後衛はどうした!?」
「攻撃してるよ精いっぱい! でもあのパンチの連打でほどんどの矢や魔法がかき消されている! 前衛も何とか攻撃してくれよ!」
「無茶言うな! 防御で精いっぱいだぞ! 大盾がすぐにダメになる火力をじかに貰ったら、重装備の奴でもあっという間に死ぬわ!!」

 プレイヤー同士の交わす会話が、かなり喧嘩腰けんかごしになってきたな。余裕がなくなってきてるんだろうな、無理もない。自分だって、こんな奴が突然現れてパンチのラッシュを仕掛けてきたら、ふざけんなって思うから。
 でも、今の自分はラッシュを仕掛ける側だ。この戦いに完全な決着がつくまでは、負けは絶対に許されない。だから今は容赦しないし躊躇もしない。
 一人、また一人と盾が砕けて、血祭りにあげられるプレイヤーが出てきた。後衛も必死で回復や支援、妨害を繰り出してくるが――この両腕のパンチが、回復されてもそれ以上のダメージを与え、支援によって防御力を上げても真っ向から打ち砕き、妨害の魔法や道具を投げられても相殺し、それらを無にしていく。

『ウウウウオオオオオオオオオオオォォォォォ!!』

 自分は咆哮ほうこうを上げながら、ひたすらパンチを繰り出し続ける。

「くっそ、場所が悪すぎる! こんなところで戦うなんて想定してねえよ!」

 敵プレイヤーの一人が悪態をつく。まあ、そうだね。こんなあまり広くない場所に一八〇人も乗ってるんだもんな。こちらを取り囲む戦法は採れないし、一定の距離を保って遠距離攻撃を続ける、いわゆる逃げ撃ちという戦法も封じられていて、向こうにとっては不利な条件がいくつも揃っている。

「でも逃げることもできねえよ! 文句を言ってないで戦えっての! それしか生き延びる手段はないんだからよ!」

 うむ、実に正論だ。もはやこの場から逃げることはできない。こちらを倒すか追い払うかしなければ、彼らは全員死に戻りリスポーンすることになる。まあ、そうなってもらうんですがね。前線基地の建設をこれ以上邪魔させるわけにはいかない。
 次々とスーツの拳で殴りまくり、ダウンして伏せさせるか、飛行物体の上から吹き飛ばして空中にダイブさせていく。

「あいつはいつまでパンチの連打を続けられるんだ!? いくらなんでもおかしいだろ!?」
「もう前衛が残り僅かになっちゃってるよ!? このままじゃ私達まであのパンチの雨にすり潰される!」
「いや、すり潰されはしない。一発で即死するから」
「そんなツッコミ入れてるばやいかああああ!?」

 こっちの攻撃が止まらないことに不満が出始めてるけど……ごめん、実は貴方達を殴ることでエネルギーを供給してるから、パンチを回避されない限り止まらないんだわこれ。
 スーツの新機能として、相手にダメージを与えることでもエネルギーを吸収できるようになっており、だからこんなエネルギーを多く使う攻撃方法も気兼きがねなく行えるのだ。
 ガードされようとお構いなしで吸収してるし、更に飛んでくる矢とか魔法からも吸収できるようで、こっちのエネルギーは全然減ってないの。連戦するときはドレイン能力があると特に助かるよね。

「ぎゃー! 最後の前衛が吹っ飛ばされた~!!」
「ああ、来る、来ちゃう、パンチの雨が私達に向かってきちゃう!」
「く、来るな、来るんじゃねえええ!」
「ホラー映画なんかよりよっぽど怖いわー! マジで来るな、来るなー!」
「ギャーギャー言ってる暇があるなら……って、ギャー!」

 あっ、妙にいいタイミングで、喋ってた人を殴り飛ばしちゃったかね。ちょっとかわいそうだったかな。
 それにしても、ホラー映画の生存者を殺す殺人鬼とか、怨霊だとか、そういうバケモノ扱いですか自分は。でも、今はそれでもいい。恐怖にあおられて戦意を失い、事が終わるまで静かにしていてくれるなら、面倒が減る。
 なのでここからはパンチのラッシュを止めて、ホラー映画の演出を見習ってあえてゆっくり一歩一歩、生存しているプレイヤーに歩み寄る。歩くたびに金属的な音が響くのだが、それすらも怖いようだ。中には腰が抜けて立てなくなっている人もちらほら見られる。ここまでは良い感じかな?
 プレイヤー達はすでに飛行物体のはしっこにまで寄ってしまっていて、「押すな!、これ以上押されたら落ちちまう!」「もう限界だって! これ以上は下がれない!」という悲痛な叫びが耳に届く。でも、近寄るのはやめない。

「く、くそっ、こうなりゃやけだ!!」

 と、ここで一人の魔法使いと思われる男性プレイヤーが杖の先から炎の剣を生み出して斬りかかってきた。
 へえ、結構速い。でも、ツヴァイやカザミネ、グラッドにジャグドの動きと比べちゃうと、どうしても、ね。
 炎の剣を右手の裏拳で軽く弾き、その魔法使いの首を左手で掴んだ。そのまま地面に叩きつけた後、右手のパンチで顔面を撃ち抜いた。当然、即死である。残った胴体は吸収させてもらった。うん、余剰エネルギーが溜まる溜まる。

「あ、あんな死に方するぐらいならこっちのほうがましだ!」
「うん、私もそう思うわ!」

 今の倒し方がよっぽど怖かったのか、飛行物体から自ら飛び降りていくプレイヤーが多数出てしまった。まあ、それでも目的は達成される……
 そうして最後に残ったプレイヤーは残り四名。腰が抜けて立てず、もはや立ち向かうことも飛び降りることもできないか。でも情けは掛けられない。だから自分は右手の拳を振り上げて……

『愚か者よ、死ぬがいい』

 という言葉と共に振り下ろして即死させた。即死させたことがせめてもの慈悲だ。もっと恐怖を煽ることもできたが、これ以上は流石にやりすぎだろう。
 さて、他はどうなってるかなと見渡すと、白羽さんやアクアが活躍し、フライングパンケーキもチクチク攻撃を加えていたようで、敵はもう全滅寸前という様子だった。

(これ以上手を出さずとも終わりそうだな)

 そして数分後、プレイヤー討伐隊は全滅した。飛行物体も帰られると困るので、スーツのパワーに任せたパンチの打ち下ろしで全て破壊しておいた。
 これで相手の戦力を少しは削れただろう。後で掲示板を見て、プレイヤー達がどういう風にこの戦いの結果を捉えたのか確認するかな。


 戦いが終わった後、ログアウトする前に前線基地の片方にお邪魔することになった。とにかくこのスーツは異質すぎるので、自分が乗っている姿を大勢の人に見せておいたほうがいいだろうという判断である。ちゃんと自分の目で見て味方であると知っておけば、魔族やドラゴンの皆さんも安心するだろう。
 基地に引き揚げる皆の後ろを、フライングパンケーキに乗って追従。隣にはアクアに乗った白羽さんがいる。アクアと白羽さんは気が合ったらしく、今はのんびりと鼻歌と鳴き声のデュエットをやっている。
 そんな一人と一匹のデュエットを聞きながら、前線基地のある浮遊島に到着。フライングパンケーキが着陸して動きを止めてから、自分は着地した。白羽さんもアクアからゆっくりと降りてくる。

「同じ相手を敵としている同胞よ、私についてきてくれ」

 そう言った司令官と思われる魔族の男性の後ろについて、島の奥へと歩を進める。そうしてしばらくすると、前線基地が見えてきた。まだ建設中のため、あちこちがつぎはぎになっているように見える。

「へえ、前線基地って言ってたからあくまで一時的なものかと思ってたんだけど、数年戦い続けられそうなぐらいにしっかりとした基地ね。いい意味で予想を裏切られたかな~」

 白羽さんの言う通り、それはがっちりとしたとりでを連想させる大きなものだった。これが完成すれば、そう容易たやすく壊されることはないだろう。

「相手が相手だからな、いい加減な基地では使い物にならないと、魔王様と現場の両方が考えた結果だ。できる限りの資材をドラゴンの皆に運んでもらい、我々が急いで組み上げている。建築に必要な加工は地上でやってあるから、ここでは組み立てて補強するだけでいいので、この大きさでもそこまで時間は必要としない」

 と司令官の魔族が説明してくれる。ああ、こういうところでも魔王様が動いてたのか。過労で倒れてしまわないかいよいよ心配になるが、今だけは仕方がない。事が終わったらゆっくりと休んでもらわなきゃな。
 そんなことを考えながら前線基地の手前にまでやってくると、門を護っている数人の魔族が敬礼する。

「司令、お疲れ様です! して、後ろの者達はどなたでしょうか? ピカーシャは分かりますが、他の者は知りませぬ……」

 そろそろいいかなということで、自分は研究者に頼んでスーツから降りた。
 スーツの装甲がスライドし始めたことで、白羽さんを除いた面子めんつから凝視されたが……中から自分が降り立ち、フードとかぶとを取って素顔を見せると、魔族の皆さんがおお、と小さな歓声を上げる。

「貴方でしたか! ということは、そこにいるお二人も協力者ということでよろしいのですね?」

 門を護っていた魔族の人の言葉に、自分は頷いて肯定を示す。

「ええ、彼らは有翼人との戦いで自分に味方してくれる協力者です。ですから、変な疑いはかけないでください」

 自分のお願いに、魔族の皆さんはすぐに了承の意を返してくれたので、とりあえずはひと安心。
 そしてまだ建築中とはいえ、中はそれなりに出来上がっているということなので、ちょっと基地にお邪魔する許可を頂いた。


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