Beyond the soul 最強に挑む者たち

Keitetsu003

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エピローグ 地獄の鐘が鳴り響くとき

エピローグ 地獄の鐘が鳴り響くとき -開幕-

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「おい、どういうことだ、ジョーンズ! スパイデーが封印されちまったぞ!」

 とある洞窟の一室で、無法者達、『ビックタワー』のメンバーは今後の事で話し合いをしていた。
 彼らにとって、スパイデーは強い武器や防具、役に立つアイテムを作るための素材として重宝していた。
 スパイデーを討伐しても、一日たてば復活する。雑魚を探して相手にするよりはこちらのほうが効率がいい。格好の獲物だった。
 しかし、この世界は無法者達以外にもプレイヤーは存在する。そうなると、素材の奪い合いになるのは目に見えている。

 対策はしていた。
 もし、無法者達以外のプレイヤーがスパイデー討伐に名乗り出たとき、武力を持って追い返す、もしくは殲滅することを考えていた。
 ジョーンズはスパイデー討伐のクエストを依頼するNPCが村長であることを確認し、村長の周りにスパイを送り込んだ。
 そして、村長に近づくプレイヤーをスパイは発見し、討伐隊に潜り込んだ。
 討伐隊はスパイによって情報が筒抜けとなり、殲滅、もしくは大打撃を受けることで、スパイデー討伐を断念させる。
 これがジョーンズの立てた計画だった。

 作戦は成功したはずだった。
 スパイのおかげで、討伐隊はスパイデーの奇襲により死者をだし、不利な状況に追い込まれた。
 それでも、奮闘する討伐隊を無法者達が奇襲することで、スパイデーのとどめを横取りした。
 スパイデーからスピナーの宝玉を採取されないよう、無法者達は細心の注意を払った。
 それなのに、どういうわけかスピナーの宝玉は討伐隊の手に渡っていた。想定外の事態だ。

「あのジジィ! 何者なんだよ、マジで! 姿が消えたと思ったら、いつの間にかスピナーの宝玉は祠に奉納されていたぞ」

 予想外の事態は続くもので、ジョーンズはスパイデーの死骸の上で啖呵を切っていたジャックの動きに何か不審なものを感じていた。
 ジョーンズは保険として祠にメンバーを待機させていたが、いきなり現れた村長に、スピナーの宝玉を祠に奉納されてしまったのだ。
 まさに、あっという間の出来事だった。

「ノーマークだったな。あんなダークホースがいたとは予想もしていなかった。俺の責任だ」
「いや、ジョーンズは悪くないだろ? 問題はアイツだ。何をしていたんだ、あの野郎は! とちって正体がバレたんじゃないのか!」

 アイツとは討伐隊に送り込んだスパイのことをさす。
 スパイからはスパイデー討伐は失敗したと報告を受けていた。ジョーンズの作戦は成功したと無法者達は聞いていたのだ。
 スパイは最後まで討伐隊についていき、事の成り行きを見届けた。
 任務が失敗したことを確信していたので、ジャックがスピナーの宝玉を採取出来なかったと判断していたのだ。
 スピナーの宝玉が祠に奉納された後、スパイに連絡して問い詰めたところ、スパイも今初めて聞いたと返答があった。

 翌日になって、テツは討伐隊全員にスピナーの宝玉を手にした事、クエストを達成したことを報告してきた。スパイもそのときに知らされた。
 これにはスパイだけでなく、他のメンバーも不審に思い、理由をテツに問いただしたが、はぐらかされた。
 報酬はちゃんと受け取れたので、それ以上討伐隊の面々はテツに問い詰めることはなかった。

 スパイは内心ヒヤヒヤしていた。自分だと特定はされていないが、テツには討伐隊の中に内通者がいることを確信していたのだ。
 だから、スピナーの宝玉を手に入れたことをスパイに隠すため、連絡を一日遅らせたのだ。
 スパイが自分だと特定されていないと判断した理由は、その場でつるし上げられなかったからだ。

「アイツのせいでもないだろう。俺達は討伐隊のジャックとテツって野郎に一杯食わされただけだ。それよりも、スパイデーを封印されたとなると、攻略に支障が出るな。ここらへんの資源は取り尽くしたし、場所を移動する必要が出てきたか」

 ジョーンズの意見に無法者達は異を唱える。

「このアジトを捨てるのか? 冗談じゃない! ここを制圧するのにどれだけ苦労したか、忘れたとは言わせないぞ!」

 無法者達の意見はもっともなことだ。このアジトは占領戦で手にいれた場所だ。洞窟の主であるボス戦で死者も出ている。命がけで手に入れた拠点なのだ。
 全てはスパイデーを効率よく狩るため。
 リンカーベル山の中にあるこのアジトなら、山登りしなくてもすむし、すぐにスパイデー戦に挑める。
 ピンチになれば、このアジトまで逃げれば問題なかった。スパイデーはその大きさから洞窟に入ってこれないのだ。
 安全と利便性があったこのアジトも、スパイデーがいなくなったのであれば無用な場所だ。
 しかし、犠牲を出してまで手にしたアジトだからこそ、捨てるのに抵抗があるのは当たり前の意見だろう。
 
「だがな……」
「ないか問題があったんか?」

 声を掛けてきたのは一人の大男だった。ただ、それだけで部屋の空気が一変する。
 彼は無法者達が集団で襲いかかったにもかかわらず、生き残り、逆に無法者達を畏怖させた。
 そして、元『ビックタワー』のリーダーであるジョーンズが認め、自らその座を譲った新リーダー、グリズリーだ。

「グリズリー、すまない。当初の計画は失敗しそうだ。スパイデーが封印されてしまった。俺の責任だ」
「スパイデーが封印? そいがないか問題でも?」
「いやいや、グリズリーさんよ。スパイデーが封印されたんだぜ? もう、採取できねえだろうが!」

 ジョーンズの計画では、強い武器、防具を量産した後、集団でプレイヤーを狩り、予選突破を考えていた。
 しかし、その計画もスパイデーが封印されてしまい、破綻はたんとなった。根本的な計画の見直しが必要になったのだ。
 無法者達にとっては頭を抱えたい問題だろう。

 それなのに、リーダーであるグリズリーは、何か問題があるのかときょとんとした顔をしている。
 その呑気な態度にメンバーの一人が食ってかかった。グリズリーは何事もなかったかのようにメンバーに自分の意見を伝える。

「封印されたや、また解放すりゃよかだけじゃろ」
「おいおい、グリズリーさん、忘れてやぁいませんか~? 一度封印されたら、また生け贄が必要なんですよ~? しかも、大量に。どこに生け贄がいるんですかね~? リンカーベル山の生き物やこのアジトにいたモンスターは狩り尽くして何もないんですよ~。状況の理解、出来てますか~?」

 スパイデーをアレンバシルに降臨させるには、大量の魂が必要とされる。
 リンカーベル山を中心とした地域で生命が不当に奪われた場合、遺恨を宿した魂は一度、スピナーの宝玉に吸収され、そこで浄化され、世界に戻っていく。
 だが、浄化しきれない多大な負の感情がスピナーの宝玉に超過した場合、スピナーの宝玉はその怨念に支配され、それが核となり、スパイデーが生まれると、洞窟内の壁画に描写されていた。

 スパイデーを降臨させるために、リンカーベル山にいる動物、植物、そして、洞窟内にいたモンスターを全て殺し尽くして成功させたのだ。
 大量の命、それも恨みや悲しみといった負の感情をしみこませた魂を作るのは至難の業だ。

 バカにした態度をとるメンバーに、グリズリーは気にすることなく、笑顔で告げた。

「いっやろ? おっじゃろ? カースルクームやカネリアに活きんよか生け贄が」
「だから~どこにいるのかってきいてるんだよ。しけた村に何があるって言うんですかね~? まさか、家畜を盗んで生け贄にしろと? 全然足りないんですけど~? 計算、出来てますか~?」
「おい、ちょっと待て。ま、まさか……」

 ジョーンズは気づいた。気づいてしまった。グリズリーが何を言いたいのかを。スパイデーに捧げる生け贄が何なのかを。
 ジョーンズはメンバーにグリズリーが何をしようとしているのか説明した。
 ここにいる全員が息をのみ、黙り込む。自分達は悪党だと自負しているが、それでも、グリズリーがやろうとしていることは思いつきもしなかった。
 身の毛がよだつ悪意に、ジョーンズは笑顔を浮かべた。

「やられたややり返す。そいがおい達ん流儀じゃろ? 派手にいきもんそ!」

 グリズリーの悪魔の提案に、誰もが賛同しなかった。声すら出なかったのだ。
 しばらくして、最初に口を開いたのはジョーンズだった。

「……流石は俺達のリーダーだ。やるなら、俺が作戦を立てる。少し時間をくれ」
「期待しちょっ」

 グリズリーは部屋を出ると、部屋の中から無法者達の怒号と非難の声が聞こえてきた。グリズリーはその声を背中に受けても、振り返ることはなかった。
 ドア付近に背もたれしていたクリサンがグリズリーに声を掛けてきた。

「これでほんなこつよかか? これがあんたがやろごたったことか?」
「奪われたもんな必ず取り戻す。見ちょってくれ。おいが最強んチャンピオンや。そいに仲間ん仇討ちもさせてもらわんな。ハイニック、オジョミ……先に死んでしまうとは……馬鹿者が……」

 グリズリーは肩を落としてトボトボと歩いて行く。仲間を失ったことにショックを受けているのだろう。
 その後ろ姿をクリサンは憂いのある表情で見つめていた。
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