Beyond the soul 最強に挑む者たち

Keitetsu003

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十五章 人の皮を被った獣

十五話 人の皮を被った獣 ジャック編 その五

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「凄い……」

 ジャックはつい見とれていた。
 ムサシとカーク、レンが十一人の襲撃者達相手に戦いを挑んでいるところを。
 三人の連携は見事で数の多い襲撃者達に一歩も引けをとってない。だが、なぜムサシ達はこの場にとどまって戦っているのか?

 その答えはムサシ達の後ろにある一階建ての長細い建物にあった。

「あの建物って確か……」
「避難所だよ、ジャック! きっと、あの中に生き残った人達が保護されてるんだ!」

 ジャックは村の中に避難所があることを、滞在中に村長から聞いたことがある。
 ということは、ムサシ達はあの建物を死守しているのだろう。村人を護る為に、命をかけて。

「ジャック、あれ見て!」

 リリアンが指さした方向には荷台がいくつか並んでいる。襲撃者は衛兵や村人の死体を荷台に積んでいた。
 あの中にコウや他の村人の死体があると思うだけで、吐き気が止まらない。ジャックは悔しくて涙が出そうになる。
 あそこにいるのはジャック達が護れなかった人々だ。目に見える結果がジャックを余計に落ち込ませる。

 ムサシ達も無力さと怒りを感じながら戦っているのだろう。
 ムサシ達は奮闘している。けど、勝てない。
 ムサシ達は避難所のドアの前を陣取っているので、そこから動けないのだ。深追いすれば、その分、守りが手薄になる。
 その間に襲撃者が避難所に突入してしまうので動けないのだ。
 それに……。

「おお~い! 援護に来たぜ!」
「ここを落とせば俺達の勝利ってワケか!」

 村で暴れ回っていた襲撃者達がこの避難所に集まってきている。数はどんどん増え、ムサシ達は追い詰められていく。
 ムサシ達がどれだけ踏ん張っても、籠城戦の基本は援軍が来ることが前提となる為、誰も来ないこの現状では持ちこたえることは出来ないだろう。
 
 今はまだ健闘しているが、体力が限界を迎え、矢がなくなり、スタミナが切れたとき、ムサシ達に待っているのは惨殺されることだ。
 むごたらしく、無慈悲に殺されてしまう。

 ジャックは助けに行こうとするが、足が震えて動けない。分かっているのだ。ここでジャック一人が応援に駆けつけても、何の役にも立たないことを。
 ジャックは空を見上げる。

 ――神様……アナタはどうして、こんな酷い事を許すんですか……僕達が……あの村人が何かしたんですか……生きているだけで殺されるほどの罪なのですか……。

 ジャックはいるはずもない神に恨み言を思っている間にも究極の選択肢が迫っていた。

 ムサシ達を助けるか? 見捨てるか?
 
 ムサシ達を助けにいった場合、確実にジャックも殺されるだろう。何より、レッキーも巻き添えになってしまう。
 レッキーを護りながら、避難所に襲撃者が侵入しないよう守り抜き、襲撃者を撃退する。しかも、援軍は見込めない。更に敵もバカじゃない。
 ムサシ達が襲撃者達と渡り合っているのは、襲撃者が無理に攻め込むことなく、ムサシ達の体力を奪うことに集中しているからだ。
 確実にムサシ達に勝てるよう、連携をとっている。
 そんな輩をジャックは敵に回そうとしているのだ。
 勝てる要素が全く見つからない。バットエンド直行だろう。
 
 ムサシ達を見捨てる場合、もう、ジャックは誰とも手を組むことは出来ないだろう。
 仲間を見捨てるような卑怯者に誰が一緒に手を組みたいと思うのか?
 ソロでこの世界を生きていくのはゲームの脱落を意味する。そうなれば、リリアンを見つけることが出来なくなるのは目に見えている。
 そして、避難所に今も助けを求めている村人を見捨てることになる。

 だが、レッキーを助ける可能性がわずかだがうまれる。なぜ、わずかなのか?
 襲撃者はただの暴漢でも通り魔でもない。
 彼らはこの日のために、作戦を立て、人を集め、目標を達成する準備を進めてきている。ジャック達は完全に不意を突かれたのだ。
 不利な状況から生還するのは、冷静に緻密に作戦を立てる必要がある。

 レッキーを連れて村を出るには、見張りをなんとかする必要がある。村の入り口や出口は襲撃者に固められていて、逃げることが出来ない。
 だが、周辺は少数で見張っている。全てをカバーしきれていないのだ。
 それだけの人数は集めることが出来なかったのだろう。それに、ムサシ達の奮闘で襲撃者達は避難所に集まっている。今が一番手薄になっているはずだ。

 それならば、ギリギリまで村の周辺に近づき、見張りが見回りで背を向けている間に、ソウルを解放した状態で一気に駆け抜けて脱出する。
 後ろから矢を撃たれても、ソウルを解放した状態なら当てるのは難しいだろうし、防御力も高いので、急所に当たらなければ問題ない。
 敵の数が少なければの話しだが。

 しかし、この作戦は完全にムサシ達を囮にして見殺しにする非道なモノだ。
 仲間を見捨て、今も避難所で生きている村人を……必死に助けを乞う村人を見殺しにする行為。
 罪深い業をジャックは背負うことになる。その罪に耐えることが出来るのだろうか?
 一生悩み続けるのではないだろうか? その非常な選択できるのか?

 自己満足を胸に抱いて、ムサシ達と村人と一緒に心中をするか。
 助かるかもしれない命を救い、仲間や助けを求める村人に背を向けて生きていくか。

 ――どっちも地獄じゃないか!

 この選択を即決できる人物はいるのだろうか?
 ジャックは息が苦しくて、目から涙があふれ、体が震えて歯がカタカタと震えている。うまく思考がまとまらない。
 ジャックの葛藤と悩みを嘲笑うかのように、選択が迫られていた。

「ジャック! 建物が崩れるよ!」

 ジャックが隠れていた建物が炎に包まれ、崩れ去ろうとしている。ここに隠れるのはもう限界だ。

「よし! 追い込め! 相手は確実に弱ってきてるぞ! 援軍ももうすぐ来る。ここで終わりだ!」
「さっさとくたばりやがれ!」

 ムサシ達の動きが鈍くなっている。
 避難所に襲撃者が集まってくる。
 炎が隠れている建物を燃やし尽くし、これ以上、身を潜めることが出来ない。襲撃者に見つかるのも時間の問題だ。
 レッキーは泣き崩れて、まだ眠っている。ムサシ達は汗を流し、必死の形相で敵に立ち向かっている。

 ジャックに決断が迫られている。



 仲間か、レッキーか?

 仲間か、レッキーか?

 仲間か、レッキーか?

 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか? 仲間か、レッキーか?
仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー、仲間、レッキー。


 ジャックが選んだ決断とは……。
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