藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

Keitetsu003

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65:さようなら

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「さようなら、先輩……先輩と出会えて、幸せでした……ありがとうございました」
「伊藤! 待て! いくな! 俺を一人にしないでくれ!」
「先輩!」
「伊藤!」



「……って夢を見たんですよ」
「夢かよ……意味が分からん。そんなことで泣きついてメールするな。何かあったと思って心配しただろうが」
「心配してくれたんですか?」
「……悪いかよ」
「先輩ってもしかして私のこと、好きなんですか? いや~分かっていましたけど、嬉しいです!」
「お前な……」
(ツッコみたいが、余計面倒くさそうだから黙ってやるか)

「それにしても、どうして、日本は別れの挨拶が『さようなら』なんでしょうね? 海外の言葉だと大抵、また会いましょう、もしくは相手を気遣う言葉ってカンジなのに」
「そうだな。そもそも、さようならは接続詞みたいだしな」
「せ、接続詞っすか?」
「元は『さようであるならば』って言葉だったはず。さようであるならば → さようならば → さようなら、になったのが一つの説だな。さようならは別れの挨拶と言うよりも、話しを一旦区切って、その後、話の内容によって会話の内容が変化するようだ」
「?」

「例えば……
伊藤、今日の委員会の仕事はここまでだ。さようであるならば、明日もまた頼むぞ。
伊藤、今日の委員会の仕事はここまでだ。さようなら、明日もまた頼むぞ。
みたいな使い方のはず」

「なるほど……さようならを接続詞に使っていたのは日本人らしいですね。一から十まですべてを言葉にするのは風情がないって考えが伝わってきます。接続での言い方ですと、また明日も会いたいってとれるし、頼りにしてるぞって捕らえ方も出来ますし。でも、現代は一から十まで言わないと伝わりにくいって言われますけどね」
「全くだ。ちなみに江戸時代から『さようなら、ごきげんよう』までがワンセットで、明治時代になって男性は『さようなら』、女性が『ごきげんよう』と掛け合うようになり、昭和で女性も『さようなら』になったようだ」


「もう電話切るぞ。晩ご飯の買い物に行かないといけないからな」
「ええっ~もっと可愛い後輩とお話ししましょうよ~。緊急事態宣言で学校が休校になって暇なんですよ~」
「勉強しろ」
「ううっ……先輩と会えなくて寂しいから電話したのに……あんな夢見たから不安なのに……泣きそうだったのに……」
「……はぁ、もう少しだけだぞ?」
「……やっぱり、先輩って私のこと、好きでしょ?」
「やかましい」
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