風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-

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七章

七話 ライラック -恋の始まり- その八

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「では、獅子王先輩から理由を確認します。なぜ、定食屋を?」
「古見も俺様もボクサーだぞ? 体調管理できなくてどうする? あの定食屋はメニュー一つ一つにカロリーが表示されてるからな。それに学生の事を考えて、意外にもヘルシーなメニューを取りそろえている。安くて量も多いメニューもあるから人気あるし、定食屋なら、古見も緊張しなくて済むだろ」

 獅子王先輩らしいというか、部活の先輩らしい回答だ。獅子王先輩って意外っていうか、本当に古見君のこと、考えてるよね。
 財閥の御曹司だから、もっと高そうなところをチョイスすると思ったんだけどね。
 さて、次が本命。

「では、先輩……先輩とサッキーの仲がどこまで進んでいるのか、詳細に説明してください!」
「おい、おかしいだろ? なんで、俺と獅子王先輩の質問内容が違うんだ?」
「いいから答えてください!」

 に、逃がしませんからね、先輩!
 私は両手をグーにして思いっきり先輩を睨みつけたけど、先輩は呆れてため息をつくだけだった。

「上春とはただの先輩と後輩だ。上春の好みを知っているのは偶然知る機会があったからだ。この前、バスケの試合があっただろ? そのうちあげで上春の好きな食べ物の話になって、青島SKYにいきたいって聞いたから選んだだけだ」
「先輩が聞いたんですか?」
「俺じゃない。朝乃宮だ」

 ですよね。ふう……安心しちゃったよ。先輩の回答次第では、朝乃宮先輩とダッグを組むところだった。命拾いしましたね、先輩。

「伊藤もうちあげに来れば知ることができたのにな。なんで、こなかったんだ? これなかったのか?」

 先輩がカウンターをはなってきた! 思わず、一歩下がってしまう。
 ううっ、地雷を踏んだ。リアルBLを見て貧血になっていたなんて、獅子王先輩の前で言えないよ。
 先輩を睨みつけるけど、睨み返されてしまい、そっと目をそらす。
 先輩と目が合っちゃって、恥ずかしくて目をそらしちゃった。決して、先輩の眼力が怖かったからじゃないからね! でも、可愛い後輩相手に本気で睨みつけなくてもいいじゃない……。

「それで正解は?」

 獅子王先輩にうながされ、私は折れそうな心をなんとか立て直し、正解を発表する。

「正解は1番です! 本人に確認しましたので間違いないです!」
「古見がそんなことを……」

 まずい! 獅子王先輩の機嫌が悪くなっちゃった! フォローしておかないと。

「私もAOSHIMAに友達といったことありますけど、メニューにカロリー表示されていますし、問題ないかと」
「……」

 わ、私のフォロー、お気に召さなかった?

「獅子王先輩、どうかしましたか?」
「おい、聞いておきたいんだが、ここは古見にあわせるべきか? それとも、ボクシング部の先輩として意見すべきか?」

 ええっと、やっぱりデートだし、女の子の喜ぶことを優先させるべきだよね? あれ? 古見君、男の子だからどうなるの? でも、受けだから間違ってないよね?

「やっぱり、古見君にあわせるべきではないでしょうか? 初デートって、女の子は夢見ちゃいますし、初デートだけでもゆずってあげるべきでは」
「いや、ボクシング部の先輩として意見すべきだろ? 先輩が後輩の面倒をみる。たとえ恋人同士でもだ。甘やかすのと優しさは違う。指導すべきことははっきりさせるべきだろ」

 せ、先輩が獅子王先輩の援護射撃をしてきた。
 先輩らしい回答だけど、空気読んでよ~。初デートだよ! 先輩後輩の関係を持ち込むなんて、息苦しいよ~。
 女の子に夢見させてよ~。おしゃれなランチ、ご希望なんだよ~。ポイント低いよ~。
 先輩達って頭が固いから……も、もしかして……。

「ち、ちなみにランチ代は誰が出すんですかね?」
「「ワリカン」」
「おごってくれないの!」
「「なんでおごらなきゃならない?」」

 先輩と獅子王先輩って実は仲がいい?
 ううっ、ワリカンか……夢がないよ、女の子の事全然分かってないよ。初デートだよ? お姫様気分にさせてよ。一回くらいはさあ……ポイント、マイナスだよ……。
 私はつい、不満をぶつけてしまう。

「先輩達ダメですよ~! 女の子の気持ち、分かってない~! ご飯くらい奢ってくださいよ~」
「なんで俺様が奢らなきゃならん。第一、イケメンの俺様が女をデートに誘うわけないだろ? あっちから勝手に言い寄ってくるんだからよ」
「そ、それは……」

 獅子王先輩ならそうだよね。黙っていればイケメンだし、初見殺しといっても過言ではない。絶対に騙される。
 声をかけたら騙されたって気づくんだけどね。

「それにどうせ、金目当てのクソ女共だ。俺様が誘ったのならともかく、勝手にデートを申し込んできて、百歩譲って付き合ったとしても、どうして俺様が金を出さなきゃならねえんだ。普通は誘った方が出すべきだと思うぜ。自分の都合に合わせてもらっているんだからな」

 ううっ……それは正論かもしれないけど……けどぉ~。でも、獅子王先輩の顔が一瞬、憂鬱そうに見えたのは気のせい?

「俺も獅子王先輩の意見に賛成だ」
「ええっ~先輩もっすか! 先輩もデートの時、ワリカン派なんですか~」

 ちょっと幻滅かも~。言いたいことは分かるけど、女の子はデートのために、いろいろと頑張っているんだよ~。
 男の子の何十倍も時間をかけて準備してきてるのに、ワリカンはないよ~。

「当たり前だろ? 獅子王先輩の言い分はまさに正論だ。まあ、よくよく考えてみると、こんなイカツイ男とデートしたいヤツがいるとは思えないな。そもそも、デートに誘われるような相手もいないし、女子の友達なんていない。だから、誘われる事もない。そう考えると、俺から誘ったことになるから奢ることになるのか?」

 ううっ……先輩……。
 先輩が不憫すぎて涙が出そうになった。こうなったら、私が一緒に遊んであげます!
 あっ、でも、私から誘うことになるから、絶対ワリカンコースだよね?
 やめておこう。
 先輩との初デートはやっぱり、ゴチになりたいし。お姫様の気分、味わいたいし。

 複雑な想いを抱えたまま、私はゲームの選択肢をクリックしようとした。
 ゲーム内の選択肢は、ラーメン屋かカレー屋の二択。
 どないせいっちゅーねん。しかも、女の子をラーメン屋とかカレー屋に誘う、フツウ?
 とにかく、ラーメン屋にしよっかな。ラーメン屋のほうが服に匂いがうつらないし。



 次の選択肢が出てくるまで、私は強制スキップ……以下略。
 次も質問もデートで定番の、女の子なら絶対に気になるポイント、キター。

「次の選択肢です! 初デートで彼女にプレゼントにするならどれ!


1、ネックレスや、ピアス
2、お菓子
3、アロマ系
4、ぬいぐるみ、グッズ


 この中から選んでください! 獅子王先輩は、以下略。先輩は……私でお願いします!」
「今度は伊藤か?」
「はい! 先輩は女の子のほうが連想しやすいと思いますし、後輩のサッキー、私、黒井さんの三人の中から順に連想してもらいます!」
「分かった。それでいこう」

 よっし! 私、天才! 心の中でガッツポーズ!
 これなら、ごく自然に先輩は私を対象として、どんな答えを出してくれるのか訊きだすことができる!
 気になるところは私にして、どうでもいいところはサッキーと黒井さんにお願いしよう。

「では、シンキングタ~イム!」

 実はこの質問、ちょっとひっかけがはいってる。獅子王先輩には分かるかな?
 先輩は何を選んでくれるんだろう? 私にあげるプレゼントを考えてくれているんだから、ちょっと楽しみ~!

「では、答えてください!」

 獅子王先輩は4番、先輩は3番を指差した。
 おおっ、これは確認しなきゃね。

「獅子王先輩なら何のぬいぐるみ、グッズをプレゼントしますか?」
「ボクシングのグッズだな」

 えええっ~。ここでもボクシングなの~?
 獅子王先輩もブレないよね。でも、デートのプレゼントとしてはダメだよね。マイナスです。

「獅子王先輩、デートのときくらいボクシングを忘れてもいいじゃないですか?」
「そうはいかねえよ。一日練習をサボるとリズムが崩れるからな。それに、約束だし」
「約束?」
「なんでもねえよ」

 ちょっと意味深いみしんなセリフ。知りたいけど、踏み込んだ話題になりそうだし、今はいいか。
 さてさて、先輩の意見を聞きましょうか!

「先輩が3番を選んだ理由は!」
「ネックレスやピアスは学園につけて登校されたら校則違反、お菓子の食べ歩きはマナー違反、ぬいぐるみとグッズを学生鞄につけられると風紀委員として問題。だから、三番だ。アロマキャンドルを学園に持ってくるほどバカじゃないだろ、伊藤は」

 えええっ……なんなの、この回答!
 ちょっと! 先輩の中で私って問題児扱いなの!
 百年の恋も冷めるよ! 可愛くないよ! やだよ! ふざけてるの! いや、きっと先輩は本気だよね。空気読めなさすぎ! なんで、サッキーのときと答えが全然違うの!
 ううっ……泣きたくなってきた。

「それに確か……アロマキャンドルにハマってたよな?」
「えっ?」
今朝けさ、話してくれただろ? だから、この選択肢を選んだ」

 お、覚えてくれてたんだ! ただの雑談だったのに……嬉しい……。
 う、嬉しくて泣きそう……。
 先輩……。
 先輩からもしアロマキャンドルもらえたら、家宝かほうにします!
 ……アロマキャンドルって腐ったりするのかな? 腐るんならさっさと使ってしまおう。

「おい、それで答えは何だ?」
「あ、すみません。正解は4番です。ただし、ぬいぐるみになります」
「ぬいぐるみ? なんでだ?」

 私は指を振って解説する。

「よく思い出してみてください。獅子王先輩は最初に水族館を選択してますよね? つまり、ここは水族館でこっそりとイルカのぬいぐるみを購入して、後でプレゼントする。これこそが正解です!」
「なんで、買った時に渡さねえんだよ」

 獅子王先輩の問いに、私はちっちっちっと指を左右に振る。

「サプライズです。獅子王先輩、これは古見君に最大限に喜んでもらうためのプランですよ? 相手が幸せになれれば自分も幸せになれる。これ、恋愛の鉄則です」
「……そういうものか?」
「そういうものです!」

 私の提案に、獅子王先輩は考え込んでいる。
 あれ? お気に召さなかったのかな?
 不安になるけど、獅子王先輩は別に気を悪くした様子はないみたい。

「まあ、参考にするわ。サンキュ」
「どういたしまして」

 これはあくまで私の考えだ。必ず正解というわけではない。でも、獅子王先輩の役に立つといいな、とは思っている。
 獅子王先輩の事は苦手だけど、だからって不幸になって欲しいとは思わないし、どうせなら幸せになってもらったほうがいいじゃん。

「ちょっと待て、伊藤。ぬいぐるみを買うのはいいが、どこにしまっておくんだ? 手に持っていたら目立つよな?」
「それは、先輩、バックに……あっ!」

 い、いけない! 男の子って、デート中はバック持ってないよね! 男の子と女の子の常識がつい抜けてしまった。
 先輩と獅子王先輩の視線が痛い。

「伊藤」
「あははっ! キ、キーホルダーとかいかがでしょう!」

 獅子王先輩の苛立った声に、私は代案を出して誤魔化ごまかした。
 サ、サプライズって難しい。いい案だと思ったんだけどな……ここらへんは、経験不足からくるものかな? だったら、先輩とデートして、経験値を積みたいな~。
 ちなみにゲームの選択肢は、適当に指輪にしました。
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