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「八百万さん?」
「あぁ、八百万神楽」
「八百万神楽、ね。すごく珍しい名前ね」
「まあ、名前通りっていうか、不思議な人だよ」
「へえ、そんな名前で、昔いじめられたりしなかったのかしら?」
「やめろ、そういう目で人を見るな。名前だけでいじめられたら、そいつは親を一生恨むだろうが!」
「それが、あるのがこの、世の中なのよ。凡俗が」
こいつ、口悪すぎじゃないか?
「私のように、堂々としていればそんな目に合うわけないけれど。寡黙の女神何でしょう?」
知っていたのか、自分に付けられている恥ずかしい二つ名に。
閑話休題。
僕や、朝比奈、雨霧が通っている、私立霧ヶ丘高校から、電車とバスを経由して一時間くらいの行った先、都会の真ん中も真ん中にある大きなビルに、その人は居る。
最上階に。
その下のビルディングには多くの企業が開かれている。それなのに、なぜか、その最上階には、そのビルの中でも頂点に位置するのが、その女だ。
テナントも張り出していなければ、何もないのだ。そう、このビルディングの最上階には何もないのだ。
いつから、この女が拠点として構えているかは定かじゃない。僕が知り合った時には我が物顔で、そのビルディングの中に入っていた。
「それにしても、かなり脚が疲れたわ。乳酸でパンパンよ」
「僕のせいではない」
「黙りなさい、次はどこを切られたい?」
「やめて下さい、僕の誇りだけは切らないで」
「電車や、バスで移動するなんて、こうなってから久しく乗っていないのよ? 疲れるのを考慮して、椅子くらいにはなりなさいよ」
「断る。なんで、僕がお前の椅子にならなきゃいけないんだ」
声を発せば、暴言しか出てこないのか、こいつは。
「それなら、犬になりなさい。ほら、椅子と犬ってどこか似てるでしょ?」
「似てねぇよ! 文字数が同じなだけだ」
「い、も同じよ」
どうでもいいことに食いついてきたな。
「実際、喋らなければ、お前もクレオパトラのように霧ヶ丘高校美女ランキングで殿堂入りを果たしそうなのに」
「あぁ、彼女は私の弟子よ」
「お前は今幾つだよ⁉」
「さっきから気になっていたのだけれど、あなた、そんなキャラなの? 教室では影も形もないほどなのに、私、今日あなたを初めて見た気がしたわ」
いや、初めて会った人に、お前はペティナイフで切りつけるのかよ。
しかも、三年間同じクラスなのに。
あんまりだ。
「しかし、お前と話していると、妙な緊張感があるんだよな」
「それはそうでしょう、だって、私、可愛いから」
「……」
またしても、さらりと自分が可愛いって、おくびれもせず、言った。言いやがった。
「お前の鞄の中身、見せてもらえるか?」
「なぜ?」
「なんだか、物騒な物が他にもありそうだから」
「ないわよ、後三つくらいしか」
「三つもあるんだっ⁉」
「私が完全武装になったら、世界が滅ぶわ」
「お前は人間兵器かよ!」
人間凶器。
人間兵器。
しまいには、サイコパス。終わってやがる、この女。
「ああ、そういえば」
もうすぐ、そのビルディングに辿り着く前に僕は朝比奈に向き直り、手を差し出しながら、口を開く。
「その鞄ごと、僕が預かる」
「は?」
「僕が預かるから、早く」
「え? ちょっと、待って」
あり得ない要求をされたような顔をしている、あなた、本気で言っているのと言わんばかりの顔付きで。
「そもそも、このビルに入るのに、厳重な荷物検査がるんだ。そこに素性の知らない女が武器を持ってきたら、それ
こそ、大騒ぎになる」
あの人は、僕だけじゃない。そう──雨霧の恩人でもある。
その人に、せめて、迷惑はかけたくないと思うのは当然だろう?
「それに、僕の恩人にそんな危険人物を合わせるわけにはいかない」
「ここで、それを言うのね」
朝比奈は僕を睨み付けながら言う。
「私を嵌めたのね」
え? 僕、普通のことを言ったつもりなんだが、そんなに言われるようなことか?
朝比奈は、そこで暫く葛藤している様子で、目を瞑り、何かを思案している様子だった。だが、やがて、朝比奈は、一言、「わかったわ」と、了承してくれた。
「はい、どうぞ」
僕は、朝比奈の手から渡された鞄を受け取った。一応念のため、中身を確認すると、そこには、先程僕を切りつけたペティナイフに、包丁、ジャックナイフ、スタンガンが入っていた。
こいつは、常に何と戦っているんだろうか。
女子高生の鞄から、まさか、こんな、大量の武器が、しかも剝き出しで入っているだなんて、この世界の誰も思いもしないだろう。
銃刀法違反で捕まる危険性を考慮したりしないのだろうか……。
「それと、別に勘違いしないでよね。私は、あなたを信用しているわけじゃないんだから」
鞄を渡した後に、朝比奈は、これでもかってくらいのテンプレのツンデレを見せてくる。
「信用してないって……」
「もしも、あなたが、ペティナイフで切りつけられたことを根に持って、仕返しをしようと企んでいるのなら、それ
は大きな間違いよ」
「あ、あぁ?」
いや、待てよ? 大きな間違いってことはなくないか? むしろ、報復されて当たり前な気がする……。
「いい? もしも私に不測の事態が起こった場合、私の勇敢な仲間たちが即座に押し寄せてあなたを殺すわ」
「お前は、どこの長鼻海賊団だよ」
「まさか、あなたは私の仲間達の数を上回ると言うの⁉」
「僕はそんな大層な海賊王ではない」
こいつはとんでもない、嘘つきだ。
友達が一人も居ないくせに。
漫画の読みすぎだ。そういえば、こいつ、今日はワンピースを読んでいたな。
「妹さん、中学生らしいわね」
「……」
なぜか、僕の家族の情報が知れ渡っている。
妹を人質にするなんて、なんて恐ろしい奴なんだ。
朝比奈は、僕が見せた力の一端を見せても全く信頼されていなかった。
まあ、こればっかりは仕方のないことだ。
僕はあくまで、案内人で、これから先は朝比奈の問題なのだから。
もしも、僕の出番があるのだとすれば、それは、あまりよろしくない事態なのだから。
「あぁ、八百万神楽」
「八百万神楽、ね。すごく珍しい名前ね」
「まあ、名前通りっていうか、不思議な人だよ」
「へえ、そんな名前で、昔いじめられたりしなかったのかしら?」
「やめろ、そういう目で人を見るな。名前だけでいじめられたら、そいつは親を一生恨むだろうが!」
「それが、あるのがこの、世の中なのよ。凡俗が」
こいつ、口悪すぎじゃないか?
「私のように、堂々としていればそんな目に合うわけないけれど。寡黙の女神何でしょう?」
知っていたのか、自分に付けられている恥ずかしい二つ名に。
閑話休題。
僕や、朝比奈、雨霧が通っている、私立霧ヶ丘高校から、電車とバスを経由して一時間くらいの行った先、都会の真ん中も真ん中にある大きなビルに、その人は居る。
最上階に。
その下のビルディングには多くの企業が開かれている。それなのに、なぜか、その最上階には、そのビルの中でも頂点に位置するのが、その女だ。
テナントも張り出していなければ、何もないのだ。そう、このビルディングの最上階には何もないのだ。
いつから、この女が拠点として構えているかは定かじゃない。僕が知り合った時には我が物顔で、そのビルディングの中に入っていた。
「それにしても、かなり脚が疲れたわ。乳酸でパンパンよ」
「僕のせいではない」
「黙りなさい、次はどこを切られたい?」
「やめて下さい、僕の誇りだけは切らないで」
「電車や、バスで移動するなんて、こうなってから久しく乗っていないのよ? 疲れるのを考慮して、椅子くらいにはなりなさいよ」
「断る。なんで、僕がお前の椅子にならなきゃいけないんだ」
声を発せば、暴言しか出てこないのか、こいつは。
「それなら、犬になりなさい。ほら、椅子と犬ってどこか似てるでしょ?」
「似てねぇよ! 文字数が同じなだけだ」
「い、も同じよ」
どうでもいいことに食いついてきたな。
「実際、喋らなければ、お前もクレオパトラのように霧ヶ丘高校美女ランキングで殿堂入りを果たしそうなのに」
「あぁ、彼女は私の弟子よ」
「お前は今幾つだよ⁉」
「さっきから気になっていたのだけれど、あなた、そんなキャラなの? 教室では影も形もないほどなのに、私、今日あなたを初めて見た気がしたわ」
いや、初めて会った人に、お前はペティナイフで切りつけるのかよ。
しかも、三年間同じクラスなのに。
あんまりだ。
「しかし、お前と話していると、妙な緊張感があるんだよな」
「それはそうでしょう、だって、私、可愛いから」
「……」
またしても、さらりと自分が可愛いって、おくびれもせず、言った。言いやがった。
「お前の鞄の中身、見せてもらえるか?」
「なぜ?」
「なんだか、物騒な物が他にもありそうだから」
「ないわよ、後三つくらいしか」
「三つもあるんだっ⁉」
「私が完全武装になったら、世界が滅ぶわ」
「お前は人間兵器かよ!」
人間凶器。
人間兵器。
しまいには、サイコパス。終わってやがる、この女。
「ああ、そういえば」
もうすぐ、そのビルディングに辿り着く前に僕は朝比奈に向き直り、手を差し出しながら、口を開く。
「その鞄ごと、僕が預かる」
「は?」
「僕が預かるから、早く」
「え? ちょっと、待って」
あり得ない要求をされたような顔をしている、あなた、本気で言っているのと言わんばかりの顔付きで。
「そもそも、このビルに入るのに、厳重な荷物検査がるんだ。そこに素性の知らない女が武器を持ってきたら、それ
こそ、大騒ぎになる」
あの人は、僕だけじゃない。そう──雨霧の恩人でもある。
その人に、せめて、迷惑はかけたくないと思うのは当然だろう?
「それに、僕の恩人にそんな危険人物を合わせるわけにはいかない」
「ここで、それを言うのね」
朝比奈は僕を睨み付けながら言う。
「私を嵌めたのね」
え? 僕、普通のことを言ったつもりなんだが、そんなに言われるようなことか?
朝比奈は、そこで暫く葛藤している様子で、目を瞑り、何かを思案している様子だった。だが、やがて、朝比奈は、一言、「わかったわ」と、了承してくれた。
「はい、どうぞ」
僕は、朝比奈の手から渡された鞄を受け取った。一応念のため、中身を確認すると、そこには、先程僕を切りつけたペティナイフに、包丁、ジャックナイフ、スタンガンが入っていた。
こいつは、常に何と戦っているんだろうか。
女子高生の鞄から、まさか、こんな、大量の武器が、しかも剝き出しで入っているだなんて、この世界の誰も思いもしないだろう。
銃刀法違反で捕まる危険性を考慮したりしないのだろうか……。
「それと、別に勘違いしないでよね。私は、あなたを信用しているわけじゃないんだから」
鞄を渡した後に、朝比奈は、これでもかってくらいのテンプレのツンデレを見せてくる。
「信用してないって……」
「もしも、あなたが、ペティナイフで切りつけられたことを根に持って、仕返しをしようと企んでいるのなら、それ
は大きな間違いよ」
「あ、あぁ?」
いや、待てよ? 大きな間違いってことはなくないか? むしろ、報復されて当たり前な気がする……。
「いい? もしも私に不測の事態が起こった場合、私の勇敢な仲間たちが即座に押し寄せてあなたを殺すわ」
「お前は、どこの長鼻海賊団だよ」
「まさか、あなたは私の仲間達の数を上回ると言うの⁉」
「僕はそんな大層な海賊王ではない」
こいつはとんでもない、嘘つきだ。
友達が一人も居ないくせに。
漫画の読みすぎだ。そういえば、こいつ、今日はワンピースを読んでいたな。
「妹さん、中学生らしいわね」
「……」
なぜか、僕の家族の情報が知れ渡っている。
妹を人質にするなんて、なんて恐ろしい奴なんだ。
朝比奈は、僕が見せた力の一端を見せても全く信頼されていなかった。
まあ、こればっかりは仕方のないことだ。
僕はあくまで、案内人で、これから先は朝比奈の問題なのだから。
もしも、僕の出番があるのだとすれば、それは、あまりよろしくない事態なのだから。
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