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あれから約三~四時間後。
僕は、八百万が居ついている高層ビルを離れ、一度朝比奈を家にまで送り届け、帰宅して着替えて、もう一度朝比奈の家に戻ってきた。
朝比奈の家は、簡単に表現するならば、大豪邸だった。僕の家から左程離れていないのだが、まさか、僕の近所にこんな大豪邸があるとは全くもって知らなかった。
家の玄関に渡るまでに、長く広い庭があり、真ん中にはお約束の大きな噴水がある。庭の木々も丁寧に手が施されている。使用人とかを雇っているのかもしれないな。
それから朝比奈の部屋に招かれて、僕は朝比奈の部屋に居た。
「私の両親、離婚しているのよ」
と、突然聞いてもいないことを、話し出した。
そこで、気付く。
そういえば、朝比奈の現状を知っている人物の候補に、父親と言う言葉は出てこなかった。
「私のお母さんはね、昔からの所謂、貴族の家系なのよ。お父さんは、その暮らしの厳しさに耐え切れずに、まるで、夜逃げでもするかのように、逃げて行ったわ」
貴族の暮らし。それが、どんなものかは、僕のような一般家庭の育ちの者にはわかるはずがない。
「結局、お父さんが夜逃げした、翌年に協議離婚が成立して、私はお母さんに引き取られた。お母さんの方は財力はあるから、こうして豊かに暮らせているけれどね」
「そ、そうだったのか」
そういえば、朝比奈がどこら辺に住んでいるという噂話も聞いたことがなかった。こんな大豪邸に住んでいるのにも関わらず、誰にも悟らせず、誰にも見つかることなく、よくもまあ、暮らしていたものだ。
「いつ、敵になるかもしれない人に、あまり、私の情報を露見させたくは無いのよ」
こいつ、本当に僕の心を読んでいるのか?
「敵……か」
大袈裟だとは思うが、あながち、朝比奈からすれば妥当な表現なのかもしれない。それほどまでに警戒をしなければならない状況なのだろうと思う。
「朝比奈、嫌な質問かもしれないけど、お前のお母さんは、お前のことを知って、どう思っていた?」
「本当に、嫌な質問ね」
朝比奈の顔色が変わった。
「特に、何も、言わなかったわ」
一緒に暮らしている、実の娘に実体がない。なんてことは家族であれば、隠し通せるものでもない。ただ、同じ教室で、同じ時間を過ごしていた僕たちとは訳が違う。大事な娘の体に異常なことが起きていて、病院の先生ですら、事実上匙を投げて、意味のない検査を続ける毎日となると、一体──朝比奈のお母さんはどんな思いで、生きているのだろう。
これに関しては、僕が安易に口を出すことじゃない。
知った口を叩けば、それは朝比奈にとっての侮辱にも繋がるのだから。
ともかく、僕はこの大豪邸で、朝比奈の部屋で、使用人が淹れてくれた紅茶をただ、ぼんやりと眺めていた。
朝比奈のことだから、「外で待っていなさい」とか言って、待たされると思ってはいたが、意外にも、すんなりと部屋にまで招き入れてくれていた。それは少し、衝撃が走った。
「あなたに家の前に居られると、なんだか、凄く不愉快というか、不気味な気持ちになるのよね。だから、招待してあげる」
「なんか、喜びたくても素直に喜べないのは何でだろう?」
「何でって、……馬鹿だからでしょう?」
「これに僕の偏差値は関係ない!」
だが、実際外で待たされた方が幾らかマシな気持ちになった。だって、そうだろう? 知り合ったばかりの女の子の部屋に居るだなんて、正直緊張で終始そわそわしっぱなしだ。
そして、そんな僕を招き入れた朝比奈は、優雅にシャワーを浴びている。
この家の凄いところは、なんと、各部屋にトイレと、風呂まで備わっている。朝比奈の部屋だけで、僕の家のリビングより広いって、なんだか住んでる世界が違うなあ。
八百万に言われたのは、遅い時間にもう一度、集まるから流石に制服姿はまずいと言うので、僕たちは一度着替えるために帰宅したのだが、朝比奈は一度、制服を脱ぐなら入浴は欠かせないと断固として、引く気は無かった。
まあ、僕はそれに付き合わされているということだ。僕たちの家からでは八百万の所に行くには、この時間では足がある僕が朝比奈を迎えに行くことが必定だった。こればっかりは仕方のないことだ。
僕は、このとても大きな部屋の真ん中でソファーに腰を下ろして、先の八百万の言葉を回想していた。
あれから約三~四時間後。
僕は、八百万が居ついている高層ビルを離れ、一度朝比奈を家にまで送り届け、帰宅して着替えて、もう一度朝比奈の家に戻ってきた。
朝比奈の家は、簡単に表現するならば、大豪邸だった。僕の家から左程離れていないのだが、まさか、僕の近所にこんな大豪邸があるとは全くもって知らなかった。
家の玄関に渡るまでに、長く広い庭があり、真ん中にはお約束の大きな噴水がある。庭の木々も丁寧に手が施されている。使用人とかを雇っているのかもしれないな。
それから朝比奈の部屋に招かれて、僕は朝比奈の部屋に居た。
「私の両親、離婚しているのよ」
と、突然聞いてもいないことを、話し出した。
そこで、気付く。
そういえば、朝比奈の現状を知っている人物の候補に、父親と言う言葉は出てこなかった。
「私のお母さんはね、昔からの所謂、貴族の家系なのよ。お父さんは、その暮らしの厳しさに耐え切れずに、まるで、夜逃げでもするかのように、逃げて行ったわ」
貴族の暮らし。それが、どんなものかは、僕のような一般家庭の育ちの者にはわかるはずがない。
「結局、お父さんが夜逃げした、翌年に協議離婚が成立して、私はお母さんに引き取られた。お母さんの方は財力はあるから、こうして豊かに暮らせているけれどね」
「そ、そうだったのか」
そういえば、朝比奈がどこら辺に住んでいるという噂話も聞いたことがなかった。こんな大豪邸に住んでいるのにも関わらず、誰にも悟らせず、誰にも見つかることなく、よくもまあ、暮らしていたものだ。
「いつ、敵になるかもしれない人に、あまり、私の情報を露見させたくは無いのよ」
こいつ、本当に僕の心を読んでいるのか?
「敵……か」
大袈裟だとは思うが、あながち、朝比奈からすれば妥当な表現なのかもしれない。それほどまでに警戒をしなければならない状況なのだろうと思う。
「朝比奈、嫌な質問かもしれないけど、お前のお母さんは、お前のことを知って、どう思っていた?」
「本当に、嫌な質問ね」
朝比奈の顔色が変わった。
「特に、何も、言わなかったわ」
一緒に暮らしている、実の娘に実体がない。なんてことは家族であれば、隠し通せるものでもない。ただ、同じ教室で、同じ時間を過ごしていた僕たちとは訳が違う。大事な娘の体に異常なことが起きていて、病院の先生ですら、事実上匙を投げて、意味のない検査を続ける毎日となると、一体──朝比奈のお母さんはどんな思いで、生きているのだろう。
これに関しては、僕が安易に口を出すことじゃない。
知った口を叩けば、それは朝比奈にとっての侮辱にも繋がるのだから。
ともかく、僕はこの大豪邸で、朝比奈の部屋で、使用人が淹れてくれた紅茶をただ、ぼんやりと眺めていた。
朝比奈のことだから、「外で待っていなさい」とか言って、待たされると思ってはいたが、意外にも、すんなりと部屋にまで招き入れてくれていた。それは少し、衝撃が走った。
「あなたに家の前に居られると、なんだか、凄く不愉快というか、不気味な気持ちになるのよね。だから、招待してあげる」
「なんか、喜びたくても素直に喜べないのは何でだろう?」
「何でって、……馬鹿だからでしょう?」
「これに僕の偏差値は関係ない!」
だが、実際外で待たされた方が幾らかマシな気持ちになった。だって、そうだろう? 知り合ったばかりの女の子の部屋に居るだなんて、正直緊張で終始そわそわしっぱなしだ。
そして、そんな僕を招き入れた朝比奈は、優雅にシャワーを浴びている。
この家の凄いところは、なんと、各部屋にトイレと、風呂まで備わっている。朝比奈の部屋だけで、僕の家のリビングより広いって、なんだか住んでる世界が違うなあ。
八百万に言われたのは、遅い時間にもう一度、集まるから流石に制服姿はまずいと言うので、僕たちは一度着替えるために帰宅したのだが、朝比奈は一度、制服を脱ぐなら入浴は欠かせないと断固として、引く気は無かった。
まあ、僕はそれに付き合わされているということだ。僕たちの家からでは八百万の所に行くには、この時間では足がある僕が朝比奈を迎えに行くことが必定だった。こればっかりは仕方のないことだ。
僕は、このとても大きな部屋の真ん中でソファーに腰を下ろして、先の八百万の言葉を回想していた。
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