あやかしがくえん

カルマ

文字の大きさ
11 / 20
001

05

しおりを挟む

 あれから約三~四時間後。

 僕は、八百万が居ついている高層ビルを離れ、一度朝比奈を家にまで送り届け、帰宅して着替えて、もう一度朝比奈の家に戻ってきた。

 朝比奈の家は、簡単に表現するならば、大豪邸だった。僕の家から左程離れていないのだが、まさか、僕の近所にこんな大豪邸があるとは全くもって知らなかった。

 家の玄関に渡るまでに、長く広い庭があり、真ん中にはお約束の大きな噴水がある。庭の木々も丁寧に手が施されている。使用人とかを雇っているのかもしれないな。

 それから朝比奈の部屋に招かれて、僕は朝比奈の部屋に居た。

「私の両親、離婚しているのよ」

 と、突然聞いてもいないことを、話し出した。

 そこで、気付く。

 そういえば、朝比奈の現状を知っている人物の候補に、父親と言う言葉は出てこなかった。

「私のお母さんはね、昔からの所謂、貴族の家系なのよ。お父さんは、その暮らしの厳しさに耐え切れずに、まるで、夜逃げでもするかのように、逃げて行ったわ」

 貴族の暮らし。それが、どんなものかは、僕のような一般家庭の育ちの者にはわかるはずがない。

「結局、お父さんが夜逃げした、翌年に協議離婚が成立して、私はお母さんに引き取られた。お母さんの方は財力はあるから、こうして豊かに暮らせているけれどね」

「そ、そうだったのか」

 そういえば、朝比奈がどこら辺に住んでいるという噂話も聞いたことがなかった。こんな大豪邸に住んでいるのにも関わらず、誰にも悟らせず、誰にも見つかることなく、よくもまあ、暮らしていたものだ。

「いつ、敵になるかもしれない人に、あまり、私の情報を露見させたくは無いのよ」

 こいつ、本当に僕の心を読んでいるのか?

「敵……か」

 大袈裟だとは思うが、あながち、朝比奈からすれば妥当な表現なのかもしれない。それほどまでに警戒をしなければならない状況なのだろうと思う。

「朝比奈、嫌な質問かもしれないけど、お前のお母さんは、お前のことを知って、どう思っていた?」

「本当に、嫌な質問ね」

 朝比奈の顔色が変わった。

「特に、何も、言わなかったわ」

 一緒に暮らしている、実の娘に実体がない。なんてことは家族であれば、隠し通せるものでもない。ただ、同じ教室で、同じ時間を過ごしていた僕たちとは訳が違う。大事な娘の体に異常なことが起きていて、病院の先生ですら、事実上匙を投げて、意味のない検査を続ける毎日となると、一体──朝比奈のお母さんはどんな思いで、生きているのだろう。

 これに関しては、僕が安易に口を出すことじゃない。

 知った口を叩けば、それは朝比奈にとっての侮辱にも繋がるのだから。

 ともかく、僕はこの大豪邸で、朝比奈の部屋で、使用人が淹れてくれた紅茶をただ、ぼんやりと眺めていた。

 朝比奈のことだから、「外で待っていなさい」とか言って、待たされると思ってはいたが、意外にも、すんなりと部屋にまで招き入れてくれていた。それは少し、衝撃が走った。

「あなたに家の前に居られると、なんだか、凄く不愉快というか、不気味な気持ちになるのよね。だから、招待してあげる」

「なんか、喜びたくても素直に喜べないのは何でだろう?」

「何でって、……馬鹿だからでしょう?」

「これに僕の偏差値は関係ない!」

 だが、実際外で待たされた方が幾らかマシな気持ちになった。だって、そうだろう? 知り合ったばかりの女の子の部屋に居るだなんて、正直緊張で終始そわそわしっぱなしだ。

 そして、そんな僕を招き入れた朝比奈は、優雅にシャワーを浴びている。

 この家の凄いところは、なんと、各部屋にトイレと、風呂まで備わっている。朝比奈の部屋だけで、僕の家のリビングより広いって、なんだか住んでる世界が違うなあ。

 八百万に言われたのは、遅い時間にもう一度、集まるから流石に制服姿はまずいと言うので、僕たちは一度着替えるために帰宅したのだが、朝比奈は一度、制服を脱ぐなら入浴は欠かせないと断固として、引く気は無かった。

 まあ、僕はそれに付き合わされているということだ。僕たちの家からでは八百万の所に行くには、この時間では足がある僕が朝比奈を迎えに行くことが必定だった。こればっかりは仕方のないことだ。

 僕は、このとても大きな部屋の真ん中でソファーに腰を下ろして、先の八百万の言葉を回想していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...