俺だけレベルがない世界

カルマ

文字の大きさ
4 / 11

3・覚醒

しおりを挟む
 暗がりの意識の中、ふと目が覚めた。
 周囲を見渡すとそこにあるのは闇だ。明かりも無くただひたすらに真っ暗な空間がそこにある。俺は一体どのくらい下の階層に落とされてしまったのだろう。こればかりは考えていても仕方のないことだ。今はこの状況をどうやって切り抜けるかだ。
 暗闇の空間を壁伝いに歩みを進めた。いきなり下に崖があるかもしれないから慎重に慎重に一歩一歩確かな安全を確保しながら進んだ。
 歩みを進めていると少しだけ明るい空間に出た。だがその刹那俺の危険を知らせる警笛が鳴った。すぐさま壁に隠れその警笛のならした原因を探した。
 そこに居たのは熊なのか、ゴリラなのか判断が難しく、ただ言えることはかなり巨大な体躯に巨大な斧を持ったモンスターが居た。なんだよ、あれ、あんなのに見つかったら確実に死ぬ。
 その大きなモンスターの前に可愛らしい子犬のようなモンスターが居た。ダメだ、殺されちゃう。だがそんな俺を他所に驚くべきことが起きた。巨体なモンスターは子犬に対して斧を振りかざしていたが、子犬はなんと瞬間移動のように一瞬で巨体のモンスターの背後を取り、その瞬間突如顔が巨大化して斧を持っていたモンスターを丸ごと食らいつくしていた。
 そのあまりにも恐ろしすぎる光景に腰を抜かしかけ、地面に座り込んでしまった。なんなんだここは、嫌だ、怖い、怖い、怖い。怖すぎて気が狂いそうだ。何で俺がこんな目に合わなければいけないんだ。俺が一体何をしたと言うんだ? 校内一の人気者として誰に対しても明るく優しく振舞ってきた。それこそ桐野たちにだって同じ対応をしていた。それなのに、何で俺がこんな目に合うんだ……。どうして……。
 一度自身の嘆きを止め、周囲の様子を探った。すると、先程の子犬の姿はなくほっと胸を撫で下ろすと思わず目がギョッとしてしまった。それは奴が俺の真下に居たからだ。三秒ほどお互いの視線が合い、子犬の顔がまたしても巨大化になったのを見て、俺は全力で当てもなく駆けた。その子犬の一噛みで俺が隠れていた岩石は粉々に砕かれていた。やばいやばい、嫌だ嫌だ、死にたくない、死にたくない。叫びたい声を必死に抑えながらあまりの恐怖に涙して走り続けた。
 走り続けると先の子犬の姿が見えなくなった。俺は逃げ切れたのか……? 周囲を隈なく探しても奴の姿は伺えない。今度こそ安堵して床に座り込んだ。はぁ、ほんとに怖かった。まさかこの歳でおしっこを漏らすことになるとは思いもしなかった。
 俺が今まで必死に浅い呼吸で物音を最小限に抑えていたのだが、今はその必要性が無い事を悟り大きく息を吸って気持ちを落ち着けた。
 大きく深呼吸をするのと同時に突然地面が割れた。その驚きの後から訪れる恐ろしい痛み。
「ぎゃあああああああ!」
 下の方に視線を向けると先の子犬が地面の下から巨大な顔を出し俺に噛みついていた。胴体が真っ二つになるような感覚がある。下半身に感覚はなく目も充血しているのか視界が真っ赤に染め上げられている。体全体に悪寒が走り意識が朦朧としている。何でこうなった? 俺は非日常を求めていた。それは別に異世界で死にたいとかそんなことは思ってもいない。最初にこの世界に来たときは漫画やアニメのように毎日楽しい冒険をしてワクワクとドキドキが止まらない生活が始まるのだと思っていた。それなのにどうして俺はこんなつらい目に合うのだ? 嫌だ、死にたくない。こんなところで死んでたまるか。そうだ、あいつらが悪い。あいつらが俺を見捨ててこの地に落としさえしなければ俺はこんな目に合わなかった。あいつらが憎い、憎い、憎い。絶対にあいつらを許さない。例え死者になろうとあいつらを一人残さず殺してやる。
 体の感覚が完全に消えた。痛みもなく寒さも感じることは無くなった。真っ赤に染まった視界は徐々に暗くじわじわと広がり、俺の命はそこで途絶えた……。
《力が欲しいか?》
 暗い闇の中に居る俺に誰かの声が聞こえる。俺は死んだのではないか?
《力が欲しいか? 誰にも屈さない力が》
「誰なんだ? 俺は死んだんじゃないのか?」
《そなたは死んだ。だが、この力を受け取ればそなたは生き返れる》
 悪魔のような囁きを受けた俺は考える。生き返ったとしても力がなければ意味がない。だがこいつは俺に力を与えようとしてくれている。まずはその力を聞こう。
「力ってなんだ? そんなにあんたは強いのか?」
《力とは私の生前の全て。魔法、スキル、全てをそなたに与える》
「それをするとあんたにはどんなメリットがあるんだ?」
《私は晴れて成仏することができる。もう何年もこの場所でさまよい続けてきた。それにそなたは私の後継者に相応しい器だとそなたが転生して来た時から感じで居た。あの時は私の介入が阻まれてしまいそなたに力を与え損ねてしまったのだ。だからこうしてそなたが死んでくれたおかげで私はそなたに力を授けられる。どうか受け取ってくれないだろうか?》
 こいつは信用できない。だが利害は一致している。俺も生き返り力が手に入る。こいつは成仏できると。今はこの利害関係だけで充分だろう。
「最後に確認だ。その力はどう使おうが構わないんだな?」
《無論だ。この世界を破滅させようと何をしようとそなたの自由だ》
「よし、わかった。その力受け取るぜ」
 これで、あいつらに復讐ができる。必ずここを抜け出してあいつらを探し出す。千歳以外は全員殺してやる。
《では、力を授けたぞ。後はそなたの好きなように……》
 暗闇の意識が急激に白一色で染まり、俺は覚醒した。周囲を見渡すとそこは変わらず地下迷宮の中に居るようだった。噛み千切られていたはずの体は傷一つなく、自然と体の底から力が漲るような感覚がある。
 それ以外特段変化を感じることは無かった。そうだ、まずはステータスの確認をしないと。そう思い、自身の右端に視線を集中させた。
 烏丸海斗職業・闇の執行者(カオスネビュラー)スキル転移、魔力操作、魔力探知、魔王覇気、超回復、時空支配、飛空、闇移動。これはかなりぶっ飛んでいるのではないか? 強すぎるだろ! そうだ、レベルの確認もしなければ。だが俺のステータス画面にはどこにもレベルが記されていなかった。その変わりパラメーターが異常なことになっていた。今現在俺のパラメーターはほぼ零になっていた。は? どういうことだよ。むしろ弱くなってるじゃんか! 怒りが爆発しそうなところで動きが止まった。パラメーター画面の右端の方に見たことのない項目がそこにはあったのだ。パラメーターポイント割り振りと書かれているその画面に意識を集中させるとパラメーターポイント所持千ポイントと書かれている。何だこれは? 使い方のよくわからないまま取り敢えず均等に全てを割り振った。まさか、これは俺自身がパラメーターを操作できるということか⁉ ということは俺はこれから先レベルの代わりにこのパラメーターポイントを受け取りどんどん強くなれるということか。
 まずはこの場所で修業を積もう。そこでスキルの使い方や魔法の使い方をマスターして外の世界を目指そう。目標はクラスメイトの殲滅だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...