転生した最強の死霊使いは平凡な日々を求めるが……

カルマ

文字の大きさ
17 / 43

最終試験(4)

しおりを挟む
 ワカツキがもう一度イグナイトを放とうとしたとき、突然ワカツキの周囲に無数の氷の刃が囲っていた。これは流石のワカツキも完全に裏をかかれて呆気なく降参を宣言していた。


 肩をがくっと落としながら戻ってきたワカツキに対して皆激励の言葉を送っていた。


「お前、めちゃくちゃいい試合してたぜ! あの人の防御するところも、攻撃するところも見れたしさ、ほんとよくやったよ! 合格間違いなしだな」

「本当にお疲れ様です! ワカツキさんとてもかっこよかったです! 私も頑張ります」

「お疲れ様、かなり良い戦い方だったんじゃないか?」


 俺たちの励ましの言葉にこそばゆいのか体を捩らせながらそっぽを向いていたワカツキだった。そして、その後もワカツキの戦いを見て学んだのか、似たような戦法をしていたのだが、あれはワカツキだからこそできた戦法で、他のメンバーではどうしても粗が目立つし、何よりあの男がそう易々と何度も同じ戦法を取らせてくれるわけが無い。そして、ナグモの番が回ってきた。残りはナグモとシャルルと俺を残した三人だった。


「よし、行ってくるぜ!」

「頑張ってください! ナグモさん」

 ナグモが闘技場に立ち、試験が開始された。開始早々ナグモは自身に身体強化のスキルを使い、スノウの簡易結界から離れつつ超高速で動き回り狙いを定めさせないようにしていた。あいつ、魔法は使えないって言っていた割に今使っているのは雷魔法のボルザクスじゃないか。ナグモは自身ではスキルを使っているつもりなのだが、傍から見るとどう見ても雷を身に纏っているようにしか見えなかった。


「なあ、ワカツキ。あれって魔法じゃないのか? あいつに教えてやらなかったのか?」

「うん、魔法だね。前に教えたんだよ? そしたら、「いや、あれは俺のスキルだ!」って言って聞かなくてさ……」


 ふむ、やはりあいつは少々馬鹿なのかもしれない。


 ナグモの超高速で動き回る動きに何の躊躇いもなく、氷の槍(アイスランス)を飛ばしているスノウ。それを意に介さずただひたすらに闘技場内を駆け回るナグモがいた。


 一連の攻防が終わったのを見計らって、ナグモが一気に距離を詰めに行った。


「鳴雷一閃」


 先程の超高速よりも更に早い、最早神速と言っていいほどの速さでスノウに斬りかかった。その速さに初めてスノウが一歩距離を置きながら、氷の城壁を作り上げていた。だが、その城壁をナグモのオリジンスキル剣神の権能である絶対両断の力で次々と斬り倒していた。


 そのまま一気に距離を詰めたナグモが初めて一太刀喰らわせるのかと会場内がどよめいていたが、一瞬で会場のどよめきが収まった。それは、神速で動いていたナグモの体にいつの間にか氷が纏わりついていたのである。


「氷創成魔法・氷の鎖(アイスロック)」


 鎖状になった氷がナグモの体を縛り付けていた。あの城壁はナグモの速さを鈍らせるために用いたらしい。一見ナグモの策はシンプルかつ最善手だとも思われたのだが、やはり相手の方が一枚上手だったように見える。


 スノウに捕まった後もどうにか抵抗していたナグモだったが、近付いたことにより簡易結界の効果が表れ始め、みるみる体が氷に侵食されていた。


 その光景にナグモは、はぁとため息を吐き、両手を上に上げて降参を宣言していた。


「その速さはかなり評価に値する。これから経験を積んで強くなれ」


 スノウが今試験始まって初めて賛辞を贈ったことにより、皆大勢がナグモに称賛の嵐を送っていた。


 そんなナグモとは逆に緊張のあまりどこか空虚な感じがするシャルルの顔が気になった。


「大丈夫か? かなり緊張しているように見えるが」

「だ、大丈夫です。今まで皆と戦っていたのでどうも一人となると不安でいっぱいになってしまいます」


 ふむ、こういう時はどう言って励ましてやるのがいいのだろうか? 頑張れじゃあありきたりすぎるよな……、俺にはこの試験より今のこの状況の方が厳しいのではないだろうか。


「シャルルの実力なら勝利は厳しくても、いい勝負ができる筈だ。自信を持て」


 合格点に程遠いかもしれないが我ながら中々にいい言葉選びができたのではないかと自我自賛していた。


「クロムにそう言ってもらえるととても安心できます。では、行って参ります」


 シャルルが闘技場に立ちスノウと対面していた。その両者を見た時俺は違和感を覚えた。その違和感は、シャルルを前にした途端、スノウが今までしまい込んでいたポケットから手を取り出していたこと、それに加え少しだが口角が上がっているように見えた。なんだか嫌な予感がする。俺もいつでも動ける準備をしておこう。


 試験開始の合図が鳴った。その直後今まで簡易結界だけを使いまずは参加者の出方を窺っていたスノウが攻撃を繰り出した。シャルル目掛けて無数の氷三角(アイスニードル)が迫っていた。だがシャルルも準備はしていたのかワカツキ同様、炎防御魔法・フレアサークルにて防御していた。それよりも気になるのはあのシャルルの体にみるみる溜め込まれている魔力だ。これまでの戦いを見て、解析した結果スノウ相手に小細工は通用しないと、だから一撃の最大火力で仕留めようと算段を立てたのかもしれない。


 フレアサークルと氷三角がぶつかったことにより、起きた蒸気で視界が晴れる前にシャルルは魔方式を構築して、詠唱まで終えていた。


「炎創成魔法・燃え盛る薔薇(バースト・ローズ)」


 シャルルのほぼ全魔力の放出、その威力は凄まじく放たれた魔法は燃え上がる一輪の薔薇に見えた。


 かなり広範囲の魔法に対し、スノウは冷静に不敵な笑みを浮かべたままシャルルの魔法に相対した。


「氷創成魔法・絶対零度(コキュートス)」


 スノウの右手から放たれた魔法は広範囲に広がる絶対零度の冷気をブリザードのように放っていた。


 シャルルとスノウの魔法がぶつかり合う寸前に俺は危機を感じ会場内に防御結界を展開した。そして、俺の予想通り、魔法同士がぶつかり合い、炎と氷属性の相性により起こる事柄。そう、水蒸気爆発だ。冷えた冷気に高熱が交わることで起きる現象が目の前で起こっていた。爆発の影響は会場内に届く前に消されていたが、闘技場内はもろに影響を受けていた。流石の俺もこの光景には驚きを隠せずに、すかさずスキル透視化(エコー)を行使し闘技場内を確認した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...