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副長の恋患い
しおりを挟むここは京の花街・島原……ーーー。
美しき女たちが芸や色を売る。
帰蝶こと、胡蝶は新撰組の宴会の席に呼ばれた。また、彼かと思うと嫌気がさす。
つい先日、送られた簪を和歌と共に突き返したというのに懲りないひとだと内心思った。
胡蝶が座敷に入ろうとすれば、男の隣にはすでに他の遊女が座って、酌をしていた。すかさず、胡蝶は斎藤一の隣に座った。
「胡蝶殿か……」
斎藤は女が苦手なのだが、胡蝶が隣に座ることだけは許してくれている。二人で何気ない会話をするのが斎藤にとっては数少ない楽しみであったのはいうまでもない。
胡蝶がちらりと土方を一瞥すれば、不機嫌そうに酒をどんどん飲んでいる。
他の幹部たちも楽しげに酒を飲む中で、沖田が胡蝶と斎藤の間に割り込んできた。
「ねえねえ、胡蝶さん。そろそろ、隣に行かないとこの間みたいになるよ?」
にこにこ笑みを浮かべながらそう言う沖田の視線の先には、土方の姿があった。渋々、胡蝶は立ち上がり、席を交換してもらった。
しばらく、土方は無言で胡蝶に酌をするように杯を目の前に出した。ただ、あまりにも度が過ぎるので見かねた胡蝶がそっと土方の太腿に手を置いた。
「飲みすぎですよ……。お部屋をとってありますからお休みになりますか?」
耳打ちをすれば、土方は大人しく従ってくれた。
そして、土方を別室に案内すれば、酔いがまわってきているのか布団に横になった。胡蝶はそっと寄り添うようにそばに座れば、ぐいっと腕を引っ張られた。
目の前には、土方の美しい顔があり、胡蝶は思わずどきりとしてしまった。いくら土方にツンっとした態度をとろうが、少なからず異性としてはそれなりに好意を持っているからだ。
けれども、決して体は許してはいけない。生娘でなくなれば、異能者としての能力が半減するもしくは喪われてしまうからだ。こうしてうまく世を渡れるのも幕府の保護があるからだ。だから、能力を損なうようなことはあってはならない。
布団の中に引きずり込まれて、抱き締められれば、やけに心臓の音がうるさく感じた。
「どうしたら、蝶が手に止まる……ーーー」
掠れた声でそう問われれば、胡蝶はなんとも言えなかった。
(けれども、あなたの恋患いはうまくいく。だって、あなたのことを慕っているもの)
土方の意識が朦朧としているのを確認するとこっそりと胡蝶は口づけを落とした。そして、胡蝶もゆっくりと瞼を閉じて、土方の胸に頬をすり寄せた。
翌朝、起きた土方が隣に胡蝶が眠っていたことに驚いて、布団を念入りに確認して慌てた。
しかし、目覚めた胡蝶は「あなたが無理矢理引き込んで離さなかったから出れなかった」とつれない態度をとれば、土方は気まずげな表情をした。
しばらく、土方の恋患いは続くことになる……ーーー。
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