偽りの華

世羅

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少しだけの真実を

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   咄嗟にマリアの手首を掴んで、気づいたら押し倒していた。




   その瞳を縁取ったブラウンのアイライナーが微かに涙で滲んでいた。涙を流すほどのことがあったのだろうと察して、そっと触れるだけのキスをした。




「俺にはお前が必要だ、マリア」



   そう言って、抱きしめた体はいつになく痩せていた。マリアはあまり食べ物を口にしたがらない。必要最低限しか食べない。


「ねえ、貴哉たかやさん。あなたには今まで黙っていたけど、私は慶明大を出てホステスをしているの」


  ぼそりと呟いた彼女の初めての真実。
  どうしてエリートの道へと進まなかったのかは訊かなかった。余計に彼女のこころを乱したくなかったから。


「優しくなりたかったから、マリアって名前なの」


   またひとつ彼女は名前の由来を話した。





「しばらく、ここにいてほしい。そのほうが仕事がはかどるから」







   優しくマリアの頭を撫でれば、甘えるように擦り寄ってきた。しばらく、マリアがいれば、仕事はうまくいく。他の女の相手なんてしないで済む。むしろ、マリアひとりで十分だ。





   マリアが泣き止んでから、二人で食器やらなんやら必要なものを買いに出かけた。ありきたりなそんな瞬間ですら、愛しいと思った。









   マリアは必要最低限しか欲しなかった。他の女と比べたら、ある意味安い女だ。





  どうして、いままで男が放置しておいたかわからないくらいマリアは素敵な女性だともいえる。






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