偽りの華

世羅

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偽りの聖母

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 サイン会の際に、飛び抜けて美しい若い女が目の前に現れて俺の心臓は飛び跳ねた。俺のサイン会なんぞミーハーの女が多いだけで、容姿がずば抜けていい女などなかなかいない。それに話を聞けば、随分と教養高い女だった。彼女からこっそり渡された連絡先に俺は舞い上がってしまった。
 マリアと連絡を取り合うようになり、俺は彼女に部屋の合鍵を渡した。信頼の証として。


 けれども、マリアは俺を見ているようで見ていなかった。

 それに、自分自身を嘘で包み込んでいるかのようだった。

 俺はマリアについてはよく知らない。

 きっと彼女が嫌がるだろうから。



 マリアとの身体の相性はかなりよかった。マリアを抱けば、満たされて原稿の進み具合もなかなかのものだったからだ。ほかの女を抱くより、マリアを抱けば性欲も満たされるし、仕事もうまくいく。俺にとっては、最高の女だった。


 けれども、テレビの収録から帰宅するとマリアは一人で泣いていたのだ。理由を聞いても、なんでもないの一点張りだった。それから、マリアは1週間、俺の部屋に来なくなった。電話しても返答なぞなく、機械音が流れるだけ。

 1週間後、俺の部屋にやってきたマリアは以前とはどこか違っていた。今にでも、消えそうなほどに憂鬱そうな表情を浮かべて俺を見ていた。


「いつか、あなたもいなくなるのね。違う女のところに行くのね」


 ぼっそりとマリアが呟いた。

 たしかに、マリアの他に女がいることを否定はしない。しかし、マリアに比べたら会っている頻度も低ければ、どうでもいい。


「ねえ、もう終わりにしましょう」


 マリアはそう言って、合鍵を俺のデスクに置いた。その瞳には、何も映り込んではいなかった。
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