上 下
3 / 14

俺氏、マルフを調教する

しおりを挟む
「メシ」
「ヒャン!」
 マルフが鹿っぽい生き物を咥えて戻って来る。
 火を焚いて、鹿っぽい生き物の肉を食べながら俺は考える。

 とりあえず、マルフをどうにかしなければ話にならない。
「んー。いけるか?」
 とりあえず木の枝を使ってマルフの毛で縦ロールを作ってみる。

「ヒャン!」
 お気に召したようだ。少し気品が出てきた気がする。

 リボンを付けて、あれ……結構可愛くね?
 ペット的な可愛さを主張すればいけるか……?
 足のあたりに花を付ければ無害感が出てきたな。

 もう少し頑張ってみるか……。


「ですわ」
「ヒャン!」

「ですわですわ」
「ヒャンワ、ヒャンワ」

「ですわですわ」
「ヒャスワデャスワ」

「ですわですわ」
「デスワ、ですヒャわ」

 よし、もう一歩だ。ヘレンケラーと先生のように、俺はお嬢様言葉をマルフに教えていった。


「よし、次通って良し。次、通って良し。次……貴様……。」
 俺に気付いた門番が槍を向けてくる。
「まあ待て一般兵の門番。これは狼型魔獣に見えるが実は人間なんだ」
「何を馬鹿な事を言っているんだ!?」
 リボンを付けたマルフを見せてみる。リボンに縦ロール。
 犬顔の人間って事で押せるんじゃないだろうか。

「人間だよな?」
「ですわ、ですわ!」
「狼型魔獣が喋った!?」

 調教の成果は完璧だった。マルフすげー賢いな……。
「よし、人間だと解っただろう。通るぞ、いいな?」
「……待て、そいつは狼型魔獣だろう?」
「ですわですわ!」

 ですわ以外にも言葉を教えておけばよかった。
 いいえ人間ですわ、くらい喋れればいけたかもしれない。

 槍を構えなおす門番に、俺は背を向けた。

「では、また出直してきます」
 俺は再び流れるようにマルフの背に乗った。

「誰か、誰か来てくれ!魔獣を操って町を襲いに来た奴が現れたぞ!これで二度目だ!」
「マルフ、行くぞ!」
「ですわですわ!」

 次の作戦を練らないとな。
しおりを挟む

処理中です...