棒アイス

オムツキッズ

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棒アイス

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 太陽の暑い日射しが容赦なく俺を焼いてくるがそんなのお構いなしに眼の前のバス停に向かってダッシュする。あのベンチに座ってカップアイスを頬張る部活の後のちょっとの贅沢。その至福の時間が俺の乾ききった体から元気を蘇らせる。ベンチまで猛ダッシュして倒れ込むように座るとビニール袋がやぶけんばかりの勢いでアイスを取り出す。「ハァハァ」と息を切らせながら取り出したのは棒アイス。息切れが次第にため息に変わっていく。
「こんな暑い日にカップアイスが売り切れだなんて」
 売れ残った棒アイスを手に思わず口から文句がこぼれる、と
「おい君どうしたんだい」と声が聞こえた。
 振り返ると後ろにバス停仲間のメガネがいた。
「随分残念そうな顔だね。バスが来るまで私が話を聞いてあげよう」と絡んでくるメガネ。
「どうしたもなにも愛しのカップアイスが買えなくて泣く泣く棒アイスで妥協だよ。こんな悲しいことがあるか」と俺が答えるとすかさずメガネは
「ならそのアイス私にくれるという選択肢も…」と言ってきた。やはりこの女は見た目よりも遥かに食い意地が張っている。この女の乞食にかまっているとアイスが溶けてしまう。俺は無言でアイスの袋を開けるとひんやりとしたアイスを頬張る。メガネの残念そうな声と知覚過敏で悲鳴を上げる歯を無視してもう一口いく。いつもの惰性で買った棒アイスだがメガネに上げるなんて言語道断だ。
 だが、半分くらい食べた頃には知覚過敏でアイスを食う手がゆっくりとなってきた時、メガネから「一口だけ…」と声がかかる。
「しつこいぞ」と忠告する。まさかここまでアイスに執着するとは。するとメガネがぐっと俺に近づいてきた。
「いいじゃん、一口だけ」
思わず手が止まった。
「でも俺口つけちゃったし」
「そんなの気にしないよ」
「そんなに食いたいならもう一個買ってきてやるよ。もしかしたらまだ余ってるかもしれな…」
「それが欲しいの」
「わ…分かったから…」
身を引いてアイスを差し出すとメガネが口を寄せてアイスに近づく。俺もポタポタと垂れるアイスを震える手で近づける。メガネが口を寄せアイスを…

ボトッ

揺れる棒からアイスが崩れ落ちた。日射しが徐々に熱を増していく。急に頬が熱くなって思わずメガネに背を向ける。汗とアイスでベトベトになった手を見て背がムズムズする。バス停に来る前よりも体が暑い。しばらく棒アイスは買わないでおこう。
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