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アリスとジュード 02

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「俺がアリスに聞きたいことは一つだけだ」

しばらくの沈黙の後。

多少なりともアリスが落ち着いたように見えたジュードは、そう切り出した。

相変わらず部屋に漂う空気は酷く重い。



「ユニークスキル、レシピ。れしぴ、という意味はわからないがそこは今はどうでもいい。本題はそこじゃない。

………アリスは、渡り人なのか?」

「わ、わた…り……びと??」

「遥か昔、もう物語として語り継がれることもないほど遠い昔、まったく違うから来た人間がいた。その人らをそう呼んでいたらしい」

「………………」

「俺は、曾祖父からその話を聞いたことがあった。その時俺は、子供ガキだったこともあって、架空の物語だと思って聞いていた。実際曾祖父も、物語のような口調で話していた。
渡り人なんて言葉自体、もう知っている者も多くないだろうと曾祖父はぼそっと言っていた。

そんな話を聞いたこと自体、最近まで忘れていた。

……アリスのステータスを見るまで」

「………………」

「俺は、お前が渡り人だって知ったからって何も変わらない。大事な仲間だ」

「……怖くないの?」

「何を怖いと思うことがある」

「………変だと思わない?」

「思わない。むしろ異世界?とやらの料理が食えるなんて楽しいだろ。食べてみたい」

「………楽しい?」

「あぁ」

「………なにそれ」

「料理ってどこいってもほとんど同じなんだよ。どこの街でも国でも、大して変わらない。食えなくはないけど特別美味くもない。
でもアリスの国……いや、世界は違うんだろ? 街につくまでの間に作ってくれた料理でわかった。こっちにはない文化がすごいありそうだなって。特に飯!
旅をしている間も、そうじゃないときも、俺は美味い飯が食いたい!」

「え、は、何。 私自身がーとかじゃなくてご飯? 食い意地?」

「だな」

「……………まじか」

美味い飯が食いたい!と言ったときのジュードの顔は、いつも通りに戻っていた。脳筋感溢れるデリカシーのない男の顔だ。

予想外の話の結末に、それまでの重い空気が軽くなった。

少なくともアリスの心は、曇天から雨が上がり、晴れ間がさしたのだ。


「ついでに聞くとしたら、お前本当は何歳なんだよ とか なんでそんなにハイスペックなんだよ とかいろいろあるけどな~」

「ね、ジュード」

「ん? 何歳か教えてくれんの?」

「違う。 ってか聞いてもつまんないと思うよ。

そうじゃなくて、レオとライムに、言う?」

「言いたいなら言えばいい。その場合、渡り人って概念の説明からになるからすげぇ大変になるだろうな。そもそも世界が違う ってのを理解できるのかって感じだろ。俺だってそこを理解してるわけじゃねぇし。ただ、そういう奴がいたっていうお伽噺だか史実だかわからん話を聞いたことがあった、覚えていた、異世界れしぴって単語から繋がったってだけだからな」

「もう戻れないの確定だから言わなくていいとかな」

「んじゃ、それでいんじゃね?俺も言うつもりねぇし。てか言えねぇよ。頭おかしいと思われそうだ」

「たしかに、これ以上おかしいと思われるのはマズいね」

「は?」

「知られちゃったついでに聞くけど、結界魔法とか付与魔法、あと創造魔法がユニークスキルってことは使い手極少なのかな?」

「あーそうだ。それについてなんだけど……」

アリスが何気なく発したその一言によってレオンハルトとライムが帰ってくるまでほとんどノンストップで
ジュードに懇々と常識を教えられ続けるという異常事態が発生したのだった。

まさかジュードにそんなことをされるとは、
アリスだけじゃなく帰ってきたレオンハルトとライムも驚いていた。


──だが こうしてジュードは、レオンハルトとライムの前でうっかりやらかす可能性があったアリスを 事前に止めることができたのだった。
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