Shapes of Light

花房こはる

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②ー導ー

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 王城の敷地の片隅に『その者』の部屋が儲けられていた。
 その部屋の主である黒髪の少年が全身から疲労感を表しながら、自分のベッドに倒れ込む。
 重苦しいその雰囲気に似合わず、歳は15・16歳くらいだろうか。
「・・・・・。」
 言葉を発するのさえ億劫になる疲労感。
 つい先ほど、王の勅令を終えたばかり。
 勅令と言えば聞こえがいいが、いわゆる外部に漏れると面倒になる様な案件を何事もなかったかの様に終わらせること。・・秘密裏に。


 ここは、世界の80%が森林に覆われている世界。そこに幾つかの国がその森林を切り開き、点在している。

 ここもその王都の一つ、『アシオン』。
 この世界の人間達はそれぞれ魔力を所有しており、さまざまな分野において魔力が原動力となっている。
 その魔力の保有量は人それぞれ差があり、魔力が多いものほど人生に於て優位な立場に立てる。
 また、相手の魔力を奪い自分のものにする事も可能だ。いわゆる弱肉強食の世界。
 それは、人間以外の魔獣・魔物と呼ばれる人外のモノたちも同じだった。

 ここ、『アシオン』の王も他の魔力を奪い、力を増大させその座に着いた。
 しかしながら、人として他のモノを奪うなど道徳的にも御法度と言えるのだが、この王の即位後、王自らの行為を正当化するためか『他の者から魔力を奪うことを可とする』と言う新たな法を立法した。
 そのため今の王になってから、いったいどれほどの人の命が魔力の奪い合いで消えてしまったことか。


 黒髪の少年は、どうにか重い体を支えるようにしながら仰向けになった。
 暗く何もない天井を髪と同じ黒い瞳で見つめると、無性に虚無感に襲われる。
 王の勅令。王にとって都合の悪い事情の始末。潜入による情報収集。
 言われたことは何でもこなした。
 別に好きでやっているわけでは無い。
 たまたま、他の者よりも魔力使いに秀でたので勅令を受ける頻度も多かった。
「はぁぁ・・・・・」
 長いため息をつき終わろうとしたとき・・。
 バンッ!!!
 と、いきなりドアが大きく開いた!
 黒髪の少年の黒い瞳が一気に警戒の色に変わる!
「カイル!帰ってるかっ?!」
 勢い良くドアから入ってきたのは、年は先ほどカイルと呼ばれた黒髪の少年と同じ歳ぐらいの少年。綺麗な赤茶色の長い髪を後ろでひとつに束ねている。
 カイルの瞳から警戒の色が消えた。
「・・ジェド。いきなり入ってくるなって、いつも言ってるだろ!」
 少々、怒り気味のカイルの言葉はスルーされ、ジェドは気にせず話を続ける。
「次の勅令だ」
「はあ???俺はついさっき帰って来たばかっだぞ!!」
「あー、うん。でね、少し前から森で異様なエネルギーが感知されてさ・・」
「お前!俺の話聞いてるか?!」
 自分の言葉を無視されて、さらにイライラが増す。
 が、ジェドはさらにカイルを無視して話を続ける。
「でさ、その感知されたエネルギーってのがちょっと何て言うか、かなり強いんだ。あの森のことだから、樹の魔物の『フォル』だと思うけど、エネルギー量から演算すると50体以上はいるんじゃないかって」
 ジェドは感知能力に長けており、様々な異質を感知しそれを読み取り、情報分析を担っている。
 そして、『フォル』と言う樹の魔物は、植物系の魔物の中でも特に魔力に貪欲で、様々なモノから魔力を奪う。普段は、普通の他の樹木と何ら変わりないのだが、一度、魔力を奪いそれを自分の物にすると、その魔力が尽きるまでその枝やツルを縦横無尽に操り攻撃を仕掛けてくる厄介なヤツだ。
「50体??あんな面倒くさいヤツらが、50もいたら始末するのにどんだけ手間か・・」
 カイルがうえッと顔をしかめて言う。
「だ・か・ら、君の出番なんだよ」
 ジェドは、起こった事に対して分析し、より適任者にその任務をあてがう。
 まあ、大概はカイルに振られてくる。
 一般の魔力使いなら何人も集まってフォルを討伐に行かないとはいけないが、魔力使いに秀でているカイルなら一人でもやれないことはない。
 ・・フォルが50体も相手だとカイルでもかなり大変だろうが、その辺はジェドは気にしない。
「ま、50体もいないかも知れないしさ、とりあえず行ってきてよ」
「お前なぁ。簡単に言うなよ!俺はついさっき別の任務から・・」
「まあまあ、気にしない、気にしない」
 と、ジェドはベッドから離れようとしないカイルの腕を掴んで引っ張る。
「・・それに王のご指名だよ」
 そのジェドの言葉にカイルの目が曇る。
 王の言葉は絶対。逆らうことは許されない。
「まあ、ここは僕の顔を立てて」
 カイルの表情を読み取ってジェドが言葉を付け加えた。
 二人は幼なじみで気の知れた仲。ジェドは、カイルが何だかんだ言っても、最終的には自分の言うことは聞いてくれるのは承知済み。
 案の定、カイルはしぶしぶながらも立ち上がった。
「今度、なにかおごれよ」
 恨めしそうにジェドを睨みながらカイルはドアをくぐる。
「はい、は~い」
 軽いノリでジェドが見送る。
「あっ、カイル、これ!」
 手のひらサイズの水色の球体をジェドがカイルに投げて渡す。



 外に出たカイルは、空を見上げると先ほどジェドから受け取った水色の球体をその空に向かって放り投げた。
 その球体はカイルの手から自由になると、宙でブンッと小さく音を立てて、1メートルほどの平たい水色の円形に変わり、そのまま宙に浮いている。
 カイルは当然のようにその上に飛び乗った。
 これは、魔具の一つで、空中を移動するために使われる。
 ほとんどの人間は魔力でいろんな事をできるが、できないことも多い。
 移動魔法もあるにはあるが、かなりの魔力を要する。魔具はその点ある程度は魔力が込められているので、自分自身の魔力をさほど使う必要がない上に、自分ができないことを補うことができる。
 あまり飛行魔法は得意ではないカイルは、遠慮無く魔具の力を借りる。
 飛行魔具にカイルの意思を繋げる。と、飛行魔具は勢い良く舞い上がり、カイルと共に空の中に溶け込んで行った。

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