Shapes of Light

花房こはる

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⑩ー解ー

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「シン!大丈夫か?!!」
「・・大したことない」
 シンは差し出されたカイルの手を押し戻した。
「大したことないって、バカか!お前は!!」
「はぁぁぁっ?」
 カイルにバカと言われ、シンが睨み返す。
 そんな睨みなど何も気にしないと言わんばかりに、カイルは怪我をしたシンの腕を掴む。
「飛んできたもんを身体で防ぐな!」
「だって、防ぐ物が他に何にも無かったんだから仕方ないだろ!あの魂の入れ物に当たった方が何倍もまずいじゃないか!傷って言ったって、ちょっと擦れただけだし、それに僕は怪我なんて平気だ!」
「平気なもんか!」
 ほとんど口喧嘩になりながらも、カイルは傷を確認しようとシンの傷口を自分の服の袖で拭う。
「え?」
 一瞬、カイルが固まる。
 血はすでに止まり、傷口もふさがりかけている?・・ついさっき怪我したばかりなのに。
 そんなカイルの手をシンは振り払う。
「だから、平気って言ってるだろ!」
 どことなく分が悪そうに、シンは傷口をカイルの目から隠すように引っ込めた。
「・・・魔力で身体ができているってあの噂、本当?」
 魔法陣を張ったまま、器用にジェドが首だけをこっちに向けた。
 その言葉を聞いて、シンは感心と嫌悪の意味を含めた言葉を吐く。
「・・ははっ、ご名答。良くそんなことまで調べてるな。本当に感心するね、この国の研究員って。同じ魔力を研究する者としても尊敬するよ」
「魔力でできている・・」
 呟くようにカイルが聞き返すと、ある意味開き直ったようにシンは話を続ける。
「そ、だから別に意識していなくても、僕の身体を維持するための再生が魔力を使う最優先事項になってんの。生存本能みたいな?君らとは身体の素がちょっと違うとでも思ってくれたら・・」
「はぁぁぁ。まあ、便利と言うか何と言うか」
 シンがそこまで言うと、カイルがシンの顔の前で大きくため息をついて屈み込む。
「は?便利?」
「いや、ゴメン、言い方が悪かった。まあ、治りが早いっていうのは良い事だけど・・。でも、だからって怪我をしても良いって訳じゃないだろ?!痛くないのか?」
「痛いよ!」
 即座にシンは言い返す。
「なら、なおさらだ。・・・おしっ!さっさと片付けるか!」
 カイルは少しうつむいてから気合いをいれるかのように立ち上がり、ジェドに向かって言った。
 カイルのその切り替えにシンは戸惑う。
「え?それだけ?何か・・こう変だ?とか思わないの?」
「ん?思わない訳じゃないけど、今言ったことが事実なんだろ?シンが俺らと何か違うのは何となく分かっていたし。ま、納得したって感じ?・・・だから、なおさらお前をまたあいつらに渡すわけにはいかないだろ」
 カイルはゴーレムのさらに向こうにいるであろう白いローブの男たちのことを言う。
「・・あ、待って」
 思わずカイルの腕を掴み、シンが引き留める。
「あの、・・僕の力、分けるよ?まだ少しぐらいなら分けても僕は大丈夫だと思うから。・・カイル、君、かなり魔力切れしてるだろ?僕が送る力の量を調整すれば、さっきのあの男の人みたいな酷いことにはならないから・・・」
 そう言いかけたシンの腕をカイルはバッ!と振り払った。
「いらない」
 一瞬ではあったが、今までに見たことないようなカイルの冷たい拒絶の瞳の色。
 シンは、ついさっき聞いたばかりのカイルの兄の末路のことを思い出した。
 (魔力を全て奪われて亡くなったんだ)
「あ・・、ご・ごめん」
 思わずシンはカイルから目線を反らす。
 と、そんなに間をあけずにポンッとシンの頭に軽く手が乗る。
「いいや、気遣ってくれたんだろ。けど、こればかりは受け取れない。・・ありがとうな」
 少し寂しそうに笑ってカイルが言った。
「カイル!あまりもうのんびりできないぞ!!そろそろ王宮の方もこの騒ぎに気づく頃だ!」
「ああ、ジェド、もう少しこいつを頼む!」
 カイルはジェドが張り続けている魔法陣を器用に飛び越え、白いローブの男たちの元へ飛び込んで行った。

 ゴーレムはカイルに関心を示し、シンとジェドの方から離れた。
 ジェドが魔法陣を解く。
「シン?!」
 振り向くと、シンはカイルの魂の欠片が入っている紺碧の宝石に今にも触れようとしている。

「おい!何やってるんだ!下手に触るなって言ってるだろ!!」
 慌ててジェドはシンを止めようと肩を掴むが、シンは視線を宝石から離さない。
「僕がこの封印を解くよ。これがあるから君らは自由になれないんだろ?」
「いや、だから誰にも解けないんだって!この封印は!」
 普段よりきつめの口調でジェドが言うが、シンはチラッとだけジェドを見て、すぐに宝石に視線を戻した。
「そう言えば、ジェドには言っていなかったかな?僕は魔力の研究の旅をしてるって」
「ああ、カイルからちょっと聞いたけど。でも、それとこれと何の関係が・・」
「ゴメン、ちょっと黙っていて、集中できない。・・この封印に使われている魔法式さえ解ければ、何とかなる」
 シンがジェドの言葉を遮る。
 瞬間、シンの周りの空気がふわりと浮いた感じがした。心なしかシンの瞳の色が透明感を帯びる。
 シンは何やら口の中でささめいている。呪文ではない。何かの計算式のような。
 どのくらいそれが続いたか、次第に宝石を縛っている白鋼を中心にうっすらと緑の文字のような紋様が螺旋の列になって絡まり浮かび上がったように思えた。
 ビンッ!!
 何かが弾けたような音がした。
 ビンッ!ビンッ!
 同じ音が数回繰り返される。その音と同時に紺碧の宝石を縛っていた白鋼が弾けるように切れた。
 全ての白鋼が切れた時、紺碧の宝石の輪郭が徐々に薄らぎ、それ自体は分解されるかのように光の粒になって宙に吸い込まれるように消えていった。
『・・・ありが・・とう』
 今までにない安堵を含んだ穏やかなリオンの声がシンとジェドの耳に響く。
「・・ふぅ」
 小さくため息をつくと同時にシンが後ろに倒れ込む。
「あっ、おい!大丈夫か?!」
 すかさずジェドがそれを受け止める。
「・・出来た」
 シンがしたり顔でジェドに笑いかける。
「ハハッ、・・本当にやるなんて。シン!お前、すごいな!!!」
 ジェドは今まで誰一人としてできなかった事が、今目の前で起きたこと信じられないと言わんばかりにそのままシンを羽交い締めにする。
「・・閉じ込められていた魂のカケラは、カイルの元に帰っているはず」
 シンが紺碧の宝石が消えていった宙を見つめながら言った。
 その刹那、
 ズズズズン!!!!
 頭上の方から身体に響き渡るような轟音と振動が走る!
 二人が同時に上を見上げる!
 薄暗くどこが天井なのか確認はできないが、ただ、何かがそこから崩れ崩れ落ちて来ていることは二人にも分かった。
 今までの度重なる攻撃の衝撃にここいら一帯の障壁がもう耐えられなくなってきていた。

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