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第1章 異世界転移編
第16話 ルシード=ユーディーン=ドレアス
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私の名はルシード=ユーディーン=ドレアス。
世界最強の国力を誇るドレアス王国第一王子にして次期ドレアス国王となる貴人である。
そんな高貴なる立場にある私はとある用事の為に友好国である隣国のロナス王国へと向かう馬車の中にいた。
馬車で移動し始めて間もなく未だ王都から出てもいないそんな時であった。許しがたい事態に遭遇したのは。
「何事だ?」
ゆったりと走っていた馬車が突然止まったので、私は同じ馬車内に控えていた4人の護衛の騎士の内の一人に問うと、騎士はすぐに「確認して参ります」と言い、馬車を出た。
すると、出て行った騎士はすぐに戻ってきたかと思うと私が耳を疑うような報告をしたのである。
「どうやら子供が馬車の前に飛び出して来たようです。すぐにどかせますので少々お待ちお待ちください」
「……おい、何と言った?」
「いえ、ですから子供が飛び出して来たので少々お待ちくださいと」
どうやら私の聞き間違いではなかったようだ。
貴人である私の貴重な時間を奪った大罪人であるその愚かな子供を何の罪にも問わずに開放するとこの男はそう言ったのである。
私の騎士としてはあるまじき言動だが、その愚かな考えを正してやるのも次期国王となる者の責務かもしれないと私は騎士に命じる。
「不敬罪だ。殺せ」
「は? いえ、ですがすぐにでもどかせますので」
騎士の男がそう言った瞬間、私の傍に控えていた別の騎士2人が同時に立ち上がった。
そして、私の言葉に反論した愚かな騎士の男の腕を両脇で抱え上げる。
「おいっ! 何をする!」
突然の事で動揺した騎士の男は両脇の騎士にそう声を上げたが、両脇の騎士は有無を言わせず暴れる騎士の男を強引に馬車の外へと連れだした。
あの愚かな騎士の行く先は冷たい地下の牢獄だろう。
仮にも私の騎士に選ばれたのだからそれなりの爵位を持つ貴族の子息のはずなので死罪という事はないだろうが、当分は牢獄から出てこれないはずである。
「大変失礼いたしました。殿下。あの者は即刻解雇して、次はもっと優秀な者を付けさせますのでどうかご容赦を」
一人残った騎士が頭を下げ、私に謝罪した。
実にできた騎士である。
私の騎士たる者はこうでないといけない。
私の騎士ならば私の言う事だけを聞き、反論する事など絶対にあってはならないのだ。
それでこそ偉大なるドレアス王家の威厳と尊厳が保たれ、秩序が維持されるのである。
「さて、どうせ時間を無駄にするのなら私の顔に泥を塗った愚かなその子供の顔でも拝んでおくとするか」
「は!」
そうして私が残った騎士を連れ立って馬車の外に出ると、思ったよりも辺りが騒然となっていることに気が付いた。
10mほど先に私の歩みを阻んだと思われる子供が怯えたようにうずくまっているが、20名ほどいる騎士達はその子供を包囲することなく、なぜか大通りの向こうの一点に釘付けとなっている。
「何事だ!?」
私が状況を問うと、数人の騎士が私の元へとやってきてありえない報告をする。
「殿下! 不審人物が出ました! 危険ですので馬車の中へお隠れ下さい!」
そんな騎士の報告に私は耳を疑った。
子供が飛び出てきた事などとは訳が違う。
つまりその不審者とやらはドレアス王国第一王子であるこの私の馬車の前にわざわざ出てきて私の歩みを意図的に妨害したということになる。
それはドレアス王国第一王子あるこのルシード=ユーディーン=ドレアス、ひいてはドレアス王国そのものに弓引く行為に他ならない。
私は怒りのあまり震える声で報告してきた数人の騎士に命じる。
「……不敬罪! 不敬罪である! 今すぐその無礼者を捕らえ、見せしめに磔火あぶりの刑にせよ!」
そんな私の声が発したのと私の優秀なる騎士4人が無礼者に斬りかかったのはほぼ同時の事であった。
世界最強の国力を誇るドレアス王国第一王子にして次期ドレアス国王となる貴人である。
そんな高貴なる立場にある私はとある用事の為に友好国である隣国のロナス王国へと向かう馬車の中にいた。
馬車で移動し始めて間もなく未だ王都から出てもいないそんな時であった。許しがたい事態に遭遇したのは。
「何事だ?」
ゆったりと走っていた馬車が突然止まったので、私は同じ馬車内に控えていた4人の護衛の騎士の内の一人に問うと、騎士はすぐに「確認して参ります」と言い、馬車を出た。
すると、出て行った騎士はすぐに戻ってきたかと思うと私が耳を疑うような報告をしたのである。
「どうやら子供が馬車の前に飛び出して来たようです。すぐにどかせますので少々お待ちお待ちください」
「……おい、何と言った?」
「いえ、ですから子供が飛び出して来たので少々お待ちくださいと」
どうやら私の聞き間違いではなかったようだ。
貴人である私の貴重な時間を奪った大罪人であるその愚かな子供を何の罪にも問わずに開放するとこの男はそう言ったのである。
私の騎士としてはあるまじき言動だが、その愚かな考えを正してやるのも次期国王となる者の責務かもしれないと私は騎士に命じる。
「不敬罪だ。殺せ」
「は? いえ、ですがすぐにでもどかせますので」
騎士の男がそう言った瞬間、私の傍に控えていた別の騎士2人が同時に立ち上がった。
そして、私の言葉に反論した愚かな騎士の男の腕を両脇で抱え上げる。
「おいっ! 何をする!」
突然の事で動揺した騎士の男は両脇の騎士にそう声を上げたが、両脇の騎士は有無を言わせず暴れる騎士の男を強引に馬車の外へと連れだした。
あの愚かな騎士の行く先は冷たい地下の牢獄だろう。
仮にも私の騎士に選ばれたのだからそれなりの爵位を持つ貴族の子息のはずなので死罪という事はないだろうが、当分は牢獄から出てこれないはずである。
「大変失礼いたしました。殿下。あの者は即刻解雇して、次はもっと優秀な者を付けさせますのでどうかご容赦を」
一人残った騎士が頭を下げ、私に謝罪した。
実にできた騎士である。
私の騎士たる者はこうでないといけない。
私の騎士ならば私の言う事だけを聞き、反論する事など絶対にあってはならないのだ。
それでこそ偉大なるドレアス王家の威厳と尊厳が保たれ、秩序が維持されるのである。
「さて、どうせ時間を無駄にするのなら私の顔に泥を塗った愚かなその子供の顔でも拝んでおくとするか」
「は!」
そうして私が残った騎士を連れ立って馬車の外に出ると、思ったよりも辺りが騒然となっていることに気が付いた。
10mほど先に私の歩みを阻んだと思われる子供が怯えたようにうずくまっているが、20名ほどいる騎士達はその子供を包囲することなく、なぜか大通りの向こうの一点に釘付けとなっている。
「何事だ!?」
私が状況を問うと、数人の騎士が私の元へとやってきてありえない報告をする。
「殿下! 不審人物が出ました! 危険ですので馬車の中へお隠れ下さい!」
そんな騎士の報告に私は耳を疑った。
子供が飛び出てきた事などとは訳が違う。
つまりその不審者とやらはドレアス王国第一王子であるこの私の馬車の前にわざわざ出てきて私の歩みを意図的に妨害したということになる。
それはドレアス王国第一王子あるこのルシード=ユーディーン=ドレアス、ひいてはドレアス王国そのものに弓引く行為に他ならない。
私は怒りのあまり震える声で報告してきた数人の騎士に命じる。
「……不敬罪! 不敬罪である! 今すぐその無礼者を捕らえ、見せしめに磔火あぶりの刑にせよ!」
そんな私の声が発したのと私の優秀なる騎士4人が無礼者に斬りかかったのはほぼ同時の事であった。
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