最強四天王、ツンデレ魔王を愛でる

コメッコ

文字の大きさ
8 / 19

第8話 メリエス様、変態に人質にされる

しおりを挟む
「いーやぁぁぁー! こっちにきたぁぁぁー!」


警備兵が走ってくるのに気付いたメリエス様はパニックに陥ったのか警備兵の逆の方に走り出そうとするが、俺は掴んだ手を決して離さない。

一般市民に毛が生えた程度の人間の警備兵2人相手に逃げ出そうとしている魔王は恐らくメリエス様が初だろうが、メリエス様は戦闘型魔王ではなく可愛さ特化型の魔王なので問題はない。


(あぁ、メリエス様の手柔らかいなぁ)


メリエス様は気が動転していて、俺と手を繋いでいることなど気にも留めてない。

俺の野望の一つである『反抗期のメリエス様と手を繋ぐ』はいとも簡単に達成されたわけだが、次回はもっと良い雰囲気でのシチュエーションを希望したい。

とまぁそんな事を思っているうちにやっと警備兵達は俺達の前までやってくると警備兵の片割れが俺に向かって威勢よく声を上げた。


「貴様、少女を離せ!」


「嫌だ」


俺の答えはもちろんノーである。

久々のメリエス様の手の感触を味わっている所なのだ。

邪魔をしないでいただきたい。

するともう一人の男が俺を睨みながら訳の分からない事を言い出した。


「変態め、人質のつもりか!」


もちろん俺は変態でもなければメリエス様を人質に取っているわけでもない。

俺がちょっとだけニヤニヤしているのはメリエス様の手の感触を味わっている時のいわば副作用的なアレで決して俺が変態だからなのではない。


「メリエス様、不味いですよ、このままでは私はあの者達に捕まります。そうなればメリエス様は人間の手に落ちてしまいます」


手に落ちるというよりは保護されるというのが正しいかもしれないが、俺はメリエス様の不安を煽るためにわざとそう表現した。

まぁそもそもどう転んだとしてもあの警備兵2人で俺を捕まえる事など不可能だが、メリエス様の対応次第では面倒な事になるのも事実だ。


「ぜ、絶対嫌じゃ!」


折角俺が耳打ちしたのにメリエス様は警備兵にも聞こえる声でその場で喚き散らした。

そんなメリエス様の様子は警備兵の正義感を刺激したのか俺への視線が更に厳しいものとなる。


「き、貴様何をする気だ! 抵抗を止めろ!」


デートをする気しかない俺に警備兵はそんな言葉で喚き散らす。


(メリエス様ならばまだしも男のヒステリックほど醜い物はないな)


メリエス様の逃走阻止という役目を果たしのだからさっさと町の警備に戻って欲しいものである。

あんたらを雇う金にはこの街の市民の血税が使われてのだろうからな。まぁ俺にはどうでもいい話だが。

俺は警備兵の言葉をスルーして、警備兵達の誤解を解くべくメリエス様に更に耳打ちすると、なぜかメリエス様は顔を真っ赤にして俺に抗議した。


「な、なぜ私がそんなことをしなければいけないのじゃ!」


「私としても心苦しいのです。だが、あの者達の顔を見てください」


そう言われて、メリエス様は警備兵を見た。

俺への嫌悪感と警備兵としての使命感からか剣を構え、血走った目でこちらを見ている。

隙あらば今にも俺に斬りかかり、メリエス様を救おうという腹積もりだろう。

だが、その姿はメリエス様の目には魔王を討とうとする勇敢な戦士に見えたのかもしれない。


「さぁメリエス様、時間はもう残されておりません。ご決断を」


そしてメリエス様は「うぅ」と可愛い小さな声で呻いた後、遂に覚悟を決めたのかその後の行動はとても可愛い——ではなく見事なものだった。

俺の手から離れたメリエス様は今にも突撃してきそうな警備兵の前に両手を塞ぎ立ち塞がったのである。
そして——。


「わ、私の大事なお兄ちゃんを虐めないで!」


そう言い放つったメリエス様を見て、警備兵の2人はその場で構えていた剣を思わず地面に落としてしまった。

だが、俺はそんな警備兵を情けないとは思わない。

メリエス様の可愛さの破壊力の前ではどのような強者も無力なのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...