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第8話 メリエス様、変態に人質にされる
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「いーやぁぁぁー! こっちにきたぁぁぁー!」
警備兵が走ってくるのに気付いたメリエス様はパニックに陥ったのか警備兵の逆の方に走り出そうとするが、俺は掴んだ手を決して離さない。
一般市民に毛が生えた程度の人間の警備兵2人相手に逃げ出そうとしている魔王は恐らくメリエス様が初だろうが、メリエス様は戦闘型魔王ではなく可愛さ特化型の魔王なので問題はない。
(あぁ、メリエス様の手柔らかいなぁ)
メリエス様は気が動転していて、俺と手を繋いでいることなど気にも留めてない。
俺の野望の一つである『反抗期のメリエス様と手を繋ぐ』はいとも簡単に達成されたわけだが、次回はもっと良い雰囲気でのシチュエーションを希望したい。
とまぁそんな事を思っているうちにやっと警備兵達は俺達の前までやってくると警備兵の片割れが俺に向かって威勢よく声を上げた。
「貴様、少女を離せ!」
「嫌だ」
俺の答えはもちろんノーである。
久々のメリエス様の手の感触を味わっている所なのだ。
邪魔をしないでいただきたい。
するともう一人の男が俺を睨みながら訳の分からない事を言い出した。
「変態め、人質のつもりか!」
もちろん俺は変態でもなければメリエス様を人質に取っているわけでもない。
俺がちょっとだけニヤニヤしているのはメリエス様の手の感触を味わっている時のいわば副作用的なアレで決して俺が変態だからなのではない。
「メリエス様、不味いですよ、このままでは私はあの者達に捕まります。そうなればメリエス様は人間の手に落ちてしまいます」
手に落ちるというよりは保護されるというのが正しいかもしれないが、俺はメリエス様の不安を煽るためにわざとそう表現した。
まぁそもそもどう転んだとしてもあの警備兵2人で俺を捕まえる事など不可能だが、メリエス様の対応次第では面倒な事になるのも事実だ。
「ぜ、絶対嫌じゃ!」
折角俺が耳打ちしたのにメリエス様は警備兵にも聞こえる声でその場で喚き散らした。
そんなメリエス様の様子は警備兵の正義感を刺激したのか俺への視線が更に厳しいものとなる。
「き、貴様何をする気だ! 抵抗を止めろ!」
デートをする気しかない俺に警備兵はそんな言葉で喚き散らす。
(メリエス様ならばまだしも男のヒステリックほど醜い物はないな)
メリエス様の逃走阻止という役目を果たしのだからさっさと町の警備に戻って欲しいものである。
あんたらを雇う金にはこの街の市民の血税が使われてのだろうからな。まぁ俺にはどうでもいい話だが。
俺は警備兵の言葉をスルーして、警備兵達の誤解を解くべくメリエス様に更に耳打ちすると、なぜかメリエス様は顔を真っ赤にして俺に抗議した。
「な、なぜ私がそんなことをしなければいけないのじゃ!」
「私としても心苦しいのです。だが、あの者達の顔を見てください」
そう言われて、メリエス様は警備兵を見た。
俺への嫌悪感と警備兵としての使命感からか剣を構え、血走った目でこちらを見ている。
隙あらば今にも俺に斬りかかり、メリエス様を救おうという腹積もりだろう。
だが、その姿はメリエス様の目には魔王を討とうとする勇敢な戦士に見えたのかもしれない。
「さぁメリエス様、時間はもう残されておりません。ご決断を」
そしてメリエス様は「うぅ」と可愛い小さな声で呻いた後、遂に覚悟を決めたのかその後の行動はとても可愛い——ではなく見事なものだった。
俺の手から離れたメリエス様は今にも突撃してきそうな警備兵の前に両手を塞ぎ立ち塞がったのである。
そして——。
「わ、私の大事なお兄ちゃんを虐めないで!」
そう言い放つったメリエス様を見て、警備兵の2人はその場で構えていた剣を思わず地面に落としてしまった。
だが、俺はそんな警備兵を情けないとは思わない。
メリエス様の可愛さの破壊力の前ではどのような強者も無力なのだから。
警備兵が走ってくるのに気付いたメリエス様はパニックに陥ったのか警備兵の逆の方に走り出そうとするが、俺は掴んだ手を決して離さない。
一般市民に毛が生えた程度の人間の警備兵2人相手に逃げ出そうとしている魔王は恐らくメリエス様が初だろうが、メリエス様は戦闘型魔王ではなく可愛さ特化型の魔王なので問題はない。
(あぁ、メリエス様の手柔らかいなぁ)
メリエス様は気が動転していて、俺と手を繋いでいることなど気にも留めてない。
俺の野望の一つである『反抗期のメリエス様と手を繋ぐ』はいとも簡単に達成されたわけだが、次回はもっと良い雰囲気でのシチュエーションを希望したい。
とまぁそんな事を思っているうちにやっと警備兵達は俺達の前までやってくると警備兵の片割れが俺に向かって威勢よく声を上げた。
「貴様、少女を離せ!」
「嫌だ」
俺の答えはもちろんノーである。
久々のメリエス様の手の感触を味わっている所なのだ。
邪魔をしないでいただきたい。
するともう一人の男が俺を睨みながら訳の分からない事を言い出した。
「変態め、人質のつもりか!」
もちろん俺は変態でもなければメリエス様を人質に取っているわけでもない。
俺がちょっとだけニヤニヤしているのはメリエス様の手の感触を味わっている時のいわば副作用的なアレで決して俺が変態だからなのではない。
「メリエス様、不味いですよ、このままでは私はあの者達に捕まります。そうなればメリエス様は人間の手に落ちてしまいます」
手に落ちるというよりは保護されるというのが正しいかもしれないが、俺はメリエス様の不安を煽るためにわざとそう表現した。
まぁそもそもどう転んだとしてもあの警備兵2人で俺を捕まえる事など不可能だが、メリエス様の対応次第では面倒な事になるのも事実だ。
「ぜ、絶対嫌じゃ!」
折角俺が耳打ちしたのにメリエス様は警備兵にも聞こえる声でその場で喚き散らした。
そんなメリエス様の様子は警備兵の正義感を刺激したのか俺への視線が更に厳しいものとなる。
「き、貴様何をする気だ! 抵抗を止めろ!」
デートをする気しかない俺に警備兵はそんな言葉で喚き散らす。
(メリエス様ならばまだしも男のヒステリックほど醜い物はないな)
メリエス様の逃走阻止という役目を果たしのだからさっさと町の警備に戻って欲しいものである。
あんたらを雇う金にはこの街の市民の血税が使われてのだろうからな。まぁ俺にはどうでもいい話だが。
俺は警備兵の言葉をスルーして、警備兵達の誤解を解くべくメリエス様に更に耳打ちすると、なぜかメリエス様は顔を真っ赤にして俺に抗議した。
「な、なぜ私がそんなことをしなければいけないのじゃ!」
「私としても心苦しいのです。だが、あの者達の顔を見てください」
そう言われて、メリエス様は警備兵を見た。
俺への嫌悪感と警備兵としての使命感からか剣を構え、血走った目でこちらを見ている。
隙あらば今にも俺に斬りかかり、メリエス様を救おうという腹積もりだろう。
だが、その姿はメリエス様の目には魔王を討とうとする勇敢な戦士に見えたのかもしれない。
「さぁメリエス様、時間はもう残されておりません。ご決断を」
そしてメリエス様は「うぅ」と可愛い小さな声で呻いた後、遂に覚悟を決めたのかその後の行動はとても可愛い——ではなく見事なものだった。
俺の手から離れたメリエス様は今にも突撃してきそうな警備兵の前に両手を塞ぎ立ち塞がったのである。
そして——。
「わ、私の大事なお兄ちゃんを虐めないで!」
そう言い放つったメリエス様を見て、警備兵の2人はその場で構えていた剣を思わず地面に落としてしまった。
だが、俺はそんな警備兵を情けないとは思わない。
メリエス様の可愛さの破壊力の前ではどのような強者も無力なのだから。
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