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第9話 メリエス様、虜にする
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メリエス様の魔法の言葉で警備兵2人の誤解を解いた俺とメリエス様は2人の警備兵に挟まれながら、町の入口へと向かっていた。
もちろん、俺とメリエス様は仲良く手を繋ぎながらだ。
「いやー、可愛い妹さんだぁ。羨ましい限りですなぁ」
そんな当たり前の事を俺の隣を歩く中年の男が笑みを浮かべながら言った。
先程まで俺とにらみ合っていた警備兵の一人である。
「えへへ、ありがとう。おじさん」
メリエス様はそんな中年警備兵の男にニコリと笑いかけると、中年は先程の険しい顔が嘘だったかのように満面の笑みをメリエス様に返した。
明らかな猫かぶりだが、そんな事にも気づかない中年警備兵はメリエス様にデレデレである。
(愚かな男だ。メリエス様が真なる笑顔を向けるのは俺ただ一人だというのに)
勘違いの中年警備兵の話を俺は適当に流していると、警備兵のもう一人の若い男が俺に尋ねた。
「それにしてもなんであんなに嫌がっていたんですか?」
そんな至極真っ当な若い警備兵の質問に俺は顔色一つ変えることなく答えた。
「そこの男の顔が怖かったからだろう?」
ガーン! と中年男の心の声が聞こえた気がした。
流石にアールワンのように声に出すようなことはなかったが、男の明らかに落胆した顔からそんなことは簡単に読み取れた。
「……最近娘が冷たいのはそれが原因だったのか。最近お風呂も一緒に入ってくれないんだよ」
誰に言ったかは分からないが中年警備兵の男はそんなことを呟く。
俺としては中年男の娘との風呂事情などどうでもいい。
「まー、ドルクさんどっちかと言えばイカツめ……って嘘です! 嘘ですよー! そんなに落ち込まないでください!」
若い警備兵の男が冗談っぽく言ったのを本気に取ったのか中年警備兵ことドルクの表情は絶望感に包まれていた。
若い警備兵の男は必死にフォローにかかるが、効果が薄く男の表情は全く晴れる事はなかったが——。
「でもよく見るとおひげがかわいいかも?」
メリエス様はふと言った一言に男の表情は嘘だったかのように満面の笑みへと変わった。
明らかな嘘だというのにメリエス様の可愛さの破壊力ゆえだろう。
「えっ? ホント? じゃあもっと伸ばそうかなぁ?」
ドルクは笑顔で髭を擦りながらそう言うが、恐らく長さの問題ではない。
まぁそれ以前に現状でもおひげは全然かわいくないのだが。
「た、確かにそうかもしれませんねー! ははは」
おいおい、お前まで嘘を吐いてやるなよ。笑顔が引きつっているぞ。
俺は若い警備兵の男に心の中で注意したが、よくよく考えればどうでもよかったので声に出してまでは指摘はしなかった。
そんなどうでもいい話をしながら俺とメリエス様は警備兵の2人と数100mの僅かな距離を歩くと、ようやく町の入口へと到着した。
「勘違いをしてすいませんでした。そしてようこそベーンヘルクの町へ」
若い警備兵の男がそう言って握手を求めてきたので俺は仕方なく男と握手を交わす。
その横ではドルクがメリエス様に笑顔で「またねー!」と手を振り、メリエス様はそれに対して「うん、またね! おじさん!」と応えていた。
流石はメリエス様。この短時間でドルクをその笑顔の虜にしてしまったようである。
そうして俺達は人間界の町ベーンヘルクの町への潜入に成功したのであった。
もちろん、俺とメリエス様は仲良く手を繋ぎながらだ。
「いやー、可愛い妹さんだぁ。羨ましい限りですなぁ」
そんな当たり前の事を俺の隣を歩く中年の男が笑みを浮かべながら言った。
先程まで俺とにらみ合っていた警備兵の一人である。
「えへへ、ありがとう。おじさん」
メリエス様はそんな中年警備兵の男にニコリと笑いかけると、中年は先程の険しい顔が嘘だったかのように満面の笑みをメリエス様に返した。
明らかな猫かぶりだが、そんな事にも気づかない中年警備兵はメリエス様にデレデレである。
(愚かな男だ。メリエス様が真なる笑顔を向けるのは俺ただ一人だというのに)
勘違いの中年警備兵の話を俺は適当に流していると、警備兵のもう一人の若い男が俺に尋ねた。
「それにしてもなんであんなに嫌がっていたんですか?」
そんな至極真っ当な若い警備兵の質問に俺は顔色一つ変えることなく答えた。
「そこの男の顔が怖かったからだろう?」
ガーン! と中年男の心の声が聞こえた気がした。
流石にアールワンのように声に出すようなことはなかったが、男の明らかに落胆した顔からそんなことは簡単に読み取れた。
「……最近娘が冷たいのはそれが原因だったのか。最近お風呂も一緒に入ってくれないんだよ」
誰に言ったかは分からないが中年警備兵の男はそんなことを呟く。
俺としては中年男の娘との風呂事情などどうでもいい。
「まー、ドルクさんどっちかと言えばイカツめ……って嘘です! 嘘ですよー! そんなに落ち込まないでください!」
若い警備兵の男が冗談っぽく言ったのを本気に取ったのか中年警備兵ことドルクの表情は絶望感に包まれていた。
若い警備兵の男は必死にフォローにかかるが、効果が薄く男の表情は全く晴れる事はなかったが——。
「でもよく見るとおひげがかわいいかも?」
メリエス様はふと言った一言に男の表情は嘘だったかのように満面の笑みへと変わった。
明らかな嘘だというのにメリエス様の可愛さの破壊力ゆえだろう。
「えっ? ホント? じゃあもっと伸ばそうかなぁ?」
ドルクは笑顔で髭を擦りながらそう言うが、恐らく長さの問題ではない。
まぁそれ以前に現状でもおひげは全然かわいくないのだが。
「た、確かにそうかもしれませんねー! ははは」
おいおい、お前まで嘘を吐いてやるなよ。笑顔が引きつっているぞ。
俺は若い警備兵の男に心の中で注意したが、よくよく考えればどうでもよかったので声に出してまでは指摘はしなかった。
そんなどうでもいい話をしながら俺とメリエス様は警備兵の2人と数100mの僅かな距離を歩くと、ようやく町の入口へと到着した。
「勘違いをしてすいませんでした。そしてようこそベーンヘルクの町へ」
若い警備兵の男がそう言って握手を求めてきたので俺は仕方なく男と握手を交わす。
その横ではドルクがメリエス様に笑顔で「またねー!」と手を振り、メリエス様はそれに対して「うん、またね! おじさん!」と応えていた。
流石はメリエス様。この短時間でドルクをその笑顔の虜にしてしまったようである。
そうして俺達は人間界の町ベーンヘルクの町への潜入に成功したのであった。
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