魔王をするのにも飽きたので神をボコって主人公に再転生！

第４章 魔界編

第１１６話 システアの勘違い

「クドウ様、アリアス達はまだ来ていないのですか？　ミンカの母親が混んでいるのだから早く連れてこいとうるさいのですが」


俺の所までやってきたアルジールはそう言った。

どうやら、ミンカ母にせっつかれて俺を迎えに来たらしい。

あの失礼な女始末しておきましょうか？　と言わない程度には成長したようで俺としては何よりである。


「あのカッコいい剣士の人がアールさんですか！　やっべ！　かっけぇ！」と俺と会った時よりテンションが若干高めのブレイクに少しイライラしつつ、俺はアルジールに言う。


「そうなんだよ。遅いだろ？　１０分後って言ったのにな」


すると、俺が言った言葉に固まっていた美少女が「えっ？」と反応を示し、それに気づいたアルジールが美少女の方に振り向いた。


「なんだ、来ているではないか？　アリアスとガランとニアはどうした？」


「「えっ？」」


アルジールの言った言葉に俺と美少女は同時に声を出す。

状況が理解できていない俺を差し置いて更にアルジールは美少女を問い詰め始めた。


「えっ？　ではない。お前達のパーティーと我ら『魔王』で食事会をするって話だっただろう。なぜまだ来ていない？」


意味不明である。

いや、意味自体は理解できるが、その言い方だとまるで俺の目の前にいる美少女がシステアさんみたいではないか。

アルジールの見る目のなさに呆れつつ、俺はアルジールの間違いを指摘すべく口を開いた。


「おいおい、アール、何言ってんだ？　システアさんって言ったら黒ローブに黒髪でちんまりなのがトレードマークだろ？　この子は……ってあれ？」


自分で言ってて途中で気づいたが、目の前の美少女も黒髪で、よくよく見たら身長もかなり低い事に気付く。


「いやいや、でも髪型が違うだろ？　顔だって……」


美少女の顔をじっと見つめながらそこまで言って俺は黙り込んだ。

そういえばプリズンが髪型やら服装やらと言っていた事を思いだし、俺は脳内で目の前の美少女の顔にシステアの顔をはめ込んでみた。


そして、俺は衝撃の事実に気付く。


「えっ？　システアさん？」


俺がそう目の前の美少女に問いかけると美少女は少し困った表情で頷いた。


「……はい。システアです」


どうやら俺の脳内顔認証システムの不具合ではなかったようだ。

なぜか俺の目の前に現れた謎の美少女はあの黒ローブのシステアでその雰囲気は魔人討伐作戦時とはまったく違うものとなっていた。


（……マジかよ。プライベートの時は黒ローブじゃないのかよ！　可愛いとか言っちゃったよ）


とはいえ、言ってしまったものは仕方ないと俺は何もなかった風を装い、無理やりながら話を続ける。


「ですよねー。そういえばアリアス達はまだ来てないみたいですけどどうかしましたか？」


何がですよねー。だ！　とツッコまれても勢いで誤魔化すつもりだった俺にシステアは小さな声で呟くよように驚きの声をあげた。


「えっ？　アリアス……？」


どうやらまた俺は変な事を言ってしまったらしい。

すると、アルジールにそれまでピッタリとくっついていたエリーゼがアルジールから離れたと思ったら珍しく俺に大きな声で詰め寄ってきた。


「クドウさん！　アンタねー！」


人気受付嬢の大声に周りの冒険者の視線がますます強くなった。

逆にこちらを見ていない者を探すのが難しい程に。

俺の事を睨むエリーゼの事はとりあえず無視することにして俺はシステアに尋ねた。


「システアさん、俺なんか変な事言いましたか？」


すると、システアは笑顔で俺に言った。


「……いえ、アリアス達にもここで集合と伝えていたのですけど遅いですね。ちょっと連絡入れてみます」


そう俺に言ったシステアはアリアス達に連絡を取るためか俺達から少し離れた所まで歩いて行った。

そんなシステアの後ろ姿はなぜか少し悲しんでいる風に俺には見えた。