灰に堕ちるその日まで

影の輪郭

相容れぬまま

公安本部の作戦室。ホログラム地図の前に、数人の捜査官が立ち並ぶ。
蓮と鴉もその列に加わっていたが、互いに一言も交わさない。

「では、作戦の概要を説明する」
課長が淡々と話し始める。

「ターゲットは違法兵器の密売組織。拠点は市街地の廃ビル。
内部には武装した構成員が複数。突入後は即時制圧、証拠物品の確保を最優先とする。」

蓮は真剣な目つきでモニターを見つめ、短く頷いた。
「了解」

その横で、鴉がやや退屈そうにあくびを噛み殺している。

課長が視線を送る。
「バディとしての初任務だ。信頼に足るかどうか、しっかり見させてもらう」

「あんま期待しないでくださいよ」
鴉は笑みを浮かべるが、課長の眼差しは冷ややかだった。

作戦室を出たあと、蓮が静かに口を開いた。
「本番中にふざけたら、俺は容赦しない」

「おーこわ。第一印象で嫌われてるの、ヒシヒシ感じるよ」
鴉は気にする様子もなく肩をすくめた。

「嫌ってるわけじゃない。ただ、信用してないだけだ」

「それを“嫌ってる”って言うんだぜ、普通は」

蓮は答えず、手元の資料を読み込む。
鴉もそれ以上は何も言わなかったが、ふと小さく呟いた。

「ま、現場に出りゃ、どうせわかるさ」