灰に堕ちるその日まで

静寂にしのぶ影

17番倉庫

蓮は倉庫の影に身を潜め、息を殺して周囲を見渡す。
『監視カメラはオフ……でもセンサーは動いてる』 
鴉の言葉が頭の中で反響する。
静かな倉庫街に、わずかな機械音と自分の心臓の鼓動だけが響く。

足元のガラス片に気をつけながら、蓮は細い通路を進む。
無数の箱が積まれた倉庫の中、搬入記録と照合すべくスマホ型端末を取り出し画面をスクロールする。
そこに記された番号と、現場のラベルを照合する。

「……あった。17番倉庫の裏口、搬入記録と合致してる」

突然、背後から微かな足音。蓮はとっさに身を隠し、息を潜める。
「……誰だ？」心の中で問いかけながら、ライトを消して暗闇に溶け込む。

通信機から静かに鴉の声が響く。
『気をつけろ、蓮。何か動いている』

蓮は拳を握り締め、慎重に呼吸を整える。

蓮は足音の方向をじっと見つめる。影がゆらりと動き、薄暗い倉庫の奥から男が現れた。
軽装で動きが素早い。手には小型の無線機。敵の見張りか…間違いない。

「……くそ、見つかったか？」蓮は心の中で呟きながら、冷静に隠れ場所を切り替える。
通信機を通して鴉に報告する。
『敵の見張り一人、確認。位置は倉庫西側。どう動く？』

「まずは無理せず回避……でも、こいつを放っておけない」
蓮は周囲の環境を素早く見回す。
近くにあった金属パイプを手に取り、静かに忍び寄る。

『了解。援護する』鴉の声が頼もしく響く。

蓮が息を潜めて距離を詰める。男の背後に回り込み、一気にパイプを振り下ろす。
鈍い音と共に敵は倒れ、無線機も弾け飛んだ。

「一人減った」蓮は小声で呟き、すぐに姿を消した。

通信機から鴉の声。
『ナイス。次は倉庫内部の確認を急げ』

蓮は気を引き締めて、暗闇へと再び歩を進めた。