灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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交差点の記憶

沈黙の中の声

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任務が終わり、報告を済ませたあと。
本部の屋上に出た鴉は、夜風に髪をなびかせながら空を見上げていた。

月は雲に隠れたり顔を出したり、落ち着きのない空。
目を閉じると、浮かぶのはあの男――宵宮の顔。

(終わらせるしかない。俺の手で)

拳を握りしめる。
過去も、罪も、復讐も――全部、自分1人で清算するつもりだった。

「……また1人で、勝手に決めてるな」

不意に背後から声。
振り返ると、蓮が立っていた。

「お前こそ、屋上が好きになったか?」

「お前が屋上にこもるときは、だいたい何か考えてるときだからな」

蓮は鴉の隣に立つ。無言のまま、しばらく夜景を眺めたあと、ゆっくり口を開いた。

「鴉、お前が何を考えてるか、全部は分からない。でも――」

蓮は鴉の目をまっすぐ見据える。

「1人で抱えるなよ」

鴉はわずかに眉を動かした。
いつもなら茶化して終わるのに、蓮のその声は、やけに静かで、まっすぐで。

「……昔から変わらねぇな、お前は。そういうところが、ずるい」

「ずるくて結構。お前が壊れるくらいなら、俺が巻き込まれた方がマシだ」

「巻き込んで、いいのか?」

「とっくに巻き込まれてるだろ、俺は。お前と出会った時から」

しばらくの沈黙。
鴉の拳が、少しだけ緩んだ。

「……じゃあ、少しくらい、甘えてやるか」

「そうしろ。でないと、また追っかけ回す羽目になる」

風が少しだけ、あたたかくなった気がした。
その隣に、たしかに「信じてくれる誰か」がいる。
それだけで、世界がほんの少しだけ、柔らかく見えた。
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