灰に堕ちるその日まで

それでも朝はくる

穏やかな朝の隣で

公安本部の任務も一段落したある朝。
蓮の部屋のソファで、鴉が腕枕をしてごろんと横になっている。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、鴉の灰色の髪を優しく照らしていた。

「……なに、見てんだよ」

蓮が黙って見つめてくるので、鴉がふてくされたように言うと、

「いや、こうして大人しく寝てると、やっぱり綺麗だなって思って」

と、真顔で返される。

「……んだよ、それ」

耳が赤くなる鴉を見て、蓮はくすっと笑う。

「照れてんのか？」

「照れてねぇし。……おまえこそ、俺の寝顔見てニヤニヤしてんじゃねぇよ」

「してない」
「してる」
「してない」

「……あー、うるせ。口塞いでやる」

ふいに身を起こした鴉が蓮に覆いかぶさる。
そのまま、唇がふれあい──何度も、甘く重なる。

「っ……おい、朝から……」

「朝だから、だろ。……今日休みなんだから、いーじゃん」

「……馬鹿」

頭を撫でられながら、蓮は小さく笑う。
戦いの日々のあとに、やっと手にした穏やかな時間。
ほんの短い瞬間でも、こうして隣にいて、ぬくもりを確かめられる幸せ。

「なあ……」

「ん？」

「これからも、ずっとこうして朝を迎えられたらいいな」

「……そうだな。──ずっと、隣にいろよ、澪」