灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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エピローグ

白い部屋の春光

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拘留中の白い部屋。
窓の外は、うっすらと春の陽が差し込んでいる。

宵宮――本名 天城黎は静かに椅子に腰かけて、本を読んでいた。
表紙には小さく「心理学入門」の文字。
興味があるのか、あるいは誰かの影響か。

ドアの外でカツン、と靴音が止まる。
差し入れを持った職員が中に入ると、
宵宮は軽くうなずいて受け取った。

「ありがと」

それだけの声。
だが、その声音にはかすかな柔らかさがあった。

机の端には数枚の手紙。
差出人は不明だが、筆跡は整っていて、
どれも短いけど、温かい言葉で綴られていた。

──「無理しなくていい。でも、君は独りじゃない」
──「また話せる日を、信じてる」

封筒の端には、小さなカラスのスタンプ。
誰のものかは言わずともわかる。

宵宮は少し目を細めて、その手紙を眺めた。

「……やっぱ、優しいな」

その一言は、誰に向けられたものなのか。
それは、宵宮自身にも分からないのかもしれない。

けれど。
頑なだった瞳が、ほんの少しだけ揺れた。
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