灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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影の輪郭

静かな火花

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 足音が近づく。コンクリートを踏む硬質なブーツの音――二人は息を合わせて身構えた。

 次の瞬間、煙弾が投げ込まれ、視界が一気に白く霞む。

「視界遮断か……ちょっとは頭使ってきたな」

 鴉が呟いた刹那、視界の端を一人がすり抜けようとする。
 蓮が素早く踏み込み、低く構えた拳銃から一発。乾いた音と共に、男の足が崩れた。

「やるじゃねぇか、お前」

 鴉はそう言いつつ、逆方向から迫っていた敵を体重移動一つでいなすと、背後からの不意打ちを見事に躱し、ナイフの柄で首筋を叩きつけた。

 ゴンッ、と鈍い音。敵がその場に崩れ落ちる。

 白煙の中で、二人の動きは迷いがなかった。背中を合わせたまま、まるで背骨の延長のように互いの存在を感じ合っている。

「何人倒した?」

「数えてねぇけど……そろそろラストじゃねぇ?」

「まだ足音が二つ。左右に分かれた」

 蓮の冷静な声と同時に、鴉がくいっと顎を動かした。

「じゃ、俺はこっち。先に片づけたほうが勝ちな」

「くだらない勝負をするな。確実に仕留めろ」

「その“確実”だと俺が勝っちゃうんだよなぁ」

 言葉が終わる前に、鴉の姿は煙の中に溶けた。

 蓮は深く息を吸い、もう一人の敵へと銃を向ける。
 狙う、撃つ、動く。そのすべてに無駄はない。躊躇もない。

 静寂の中に、二つの音が重なる。

 一つは銃声。もう一つは、ナイフの鞘が床を滑る音。

 煙が晴れたとき、敵はすでに全員倒れていた。

 鴉が軽く手を振って、蓮に向かって歩いてくる。
 口元には、いつもの軽薄な笑み。

「こりゃ引き分けかな?」

「お前が喋ってなければ、俺の勝っていた」

「いや~それはどうだろうね。ま、戦況は上向きってことで」

 蓮は無言で銃をホルスターに戻した。

 敵の影がなくなったビルの屋上には、強く乾いた風だけが吹いていた。

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