美しい夜の獣

ぶんぶんごま

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1話 出会い

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それは月が美しく輝く満月の夜だった


村の集会からの帰り道を俺は一人歩いていた。
山の中の過疎化が激しい田舎ということもあって、35歳の俺は若いからとよく駆り出されている。
 今日も村の会議(と称したほぼ飲み会)に参加してきた
 議題は、最近猪の被害があるからどうするかということだったのだが、なんでも屋兼、猟師もしている俺が駆除すると言うことで早々に会議は終わった

そして今日もよく飲むじいさま達にお酌してやっと解散となったのだった


ほぼ山の街灯もない暗い道を歩いている
今日は満月だから真っ暗じゃないのがありがたい

(しかし、じい様たちは毎度よく飲むな…)
毎回宴会のように飲みまくるじい様たちを思い出してついため息がでた


とそんなときだった突然暗闇から何かが出てきた

いきなりのことに体が跳ねる
こんな時間に出歩く人はあまり考えられない
としたら獣だろうか…

警戒しながらそれがなんなのか目を凝らしてみる
するとゆっくりとそれが動き、月の光の下へと姿をあらわした

それは大きな獣だった

野犬か?
かなり大型の犬だ。みた感じハスキーだろうか狼っぽい
大型犬が夜に1匹だけいるこの状況はかなり怖い

(最近野犬がでるとは聞いてなかったが…)


と思っていると、その犬は俺を見つけ、こちらへと近寄ってきた。
迷い犬ならいいが、野犬だと危ない。そこらへんの飼われている犬と同じように考えて近づくと噛まれて肉を食いちぎられることもある。
なので緊張していつでも逃げられるように態勢を整えていると…


徐々に近づいて見えてきたその犬は特に警戒も威嚇する様子もなく、近づいてきていた
そして犬は尻尾を振っていた

犬はすぐそばにくるとフンフンと俺の嗅いできた
良かった。人なれしているようだ
 こいつは人飼われているか、又は元から人懐っこい性格なのか
とりあえず安心だとわかってホッとする


それにしても大きいな
今も俺の匂いをフンフンとかいでいる犬を見て思う
大型犬でもだいぶガタイがいい方だろう
のしかかられたら潰されると思う
遠目からでもでかいなとは思っていたが、近くにきてかなり大きかった

「お前どこの子だ?脱走してきたのか?それとも野良?」

犬はいまだに俺のにおいを嗅いでいる。

「お前大人しいなぁ」

ソッ撫でると毛は固くガサガサとしていた
相当汚れているようだ
それにモサモサの毛でわからなかったが結構痩せている

そんな犬はというと嫌がりもせず気持ち良さそうに撫でられている

「そろそろ帰らないと心配してるんじゃないか」

犬が匂いをかぐのが終わるまでずいぶんと撫でていたがやっと顔をあげたので、さよならすることに。

「じゃあな、はやく家に帰れよ」

そういって出てきた方へ行かせようとするが、動かない
手で押したがびくともしない

うーん…どうしたもんか
…まぁいいか俺が動けば動くだろう

「…ちゃんと帰るんだぞ?」

そういって犬の頭をひと撫でして歩きだした







チャッ チャッ チャッ チャッ






後ろを振りかえる

「ワゥ!」

「はぁ…なんでついてくるんだ」

犬は俺の後をついてきていた

うーん…
迷子犬なのか?交番に連れていくか…でも、もう夜遅いし…それにこいつでかすぎるからなぁつれていくのも大変だし

「はぁ…」

というか今日はもう帰って寝たい…

仕方ないので今日のところは夜も遅いし、疲れてるから俺の家に連れて帰ることにした

「お前ついてくるなら俺の家、来るか?」

「ワゥ!!」

犬は俺の言葉にすぐに吠え、すぐに尻尾をふって俺の横を歩きだしたのだった

「お前、賢いなぁ」

ゆるりとまた犬の頭を撫でると、嬉しそうにパタパタとしっぽをふるのだった








○ ○ ○ 






俺の家は一軒の平屋だ。
昔、親戚のおじさんが住んでいたが引っ越したため空き家になったところを俺がもらったのだ。

古いのでまぁそれなりなのだが庭もあり俺には充分すぎる家だ。


家につくと犬の足を拭くためぞうきんを探しにいく
ついでに体も多少拭こうと使ってないバスタオルもひっぱりだす

その間、犬は玄関に入りお座りをして待っていた

(賢いな。ちゃんとしつけがなっているのか)

脚を拭いて家にあがり適当にご飯をつくる。
犬は前に飼っていたことがあるので食べれるものを与えた
よほどお腹が減っていたのかガツガツと食べすぐになくなったので追加でつくってやった。

そのあと俺も適当にご飯を食べて寝ることにした

寝る前に犬に「トイレは外でしろ」ということを一応教えて横になる
わかったかどうかは知らないが、まぁ無理でも明日掃除すればいいだけだ



どこで寝ようかとうろうろしていた犬は俺が電気を消すと、トコトコと俺の横にきて軽く布団の上に乗りそのまま丸くなって寝た


布団に毛がつくなぁと思いつつ、疲れていた俺はまぁいいかと目を閉じたのだった


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