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コッツン、コッツン。
リズミカルな足音が近付いて来る。
足音は、警備室の前で止まった。
マイケルの手に力が入る。
机の下のジェシカも、震えながら、壁に体を押し付けていた。
ドアのノブが音を立てながら動く。
そして、ドアが開いた。
ドアの影に身を潜めながら、マイケルは入って来るであろうピエロの存在を待つ。
ぬっと、影が入って来る。
(今だ!)
マイケルは斧を振りかぶり、影から飛び出した。
すると、マイケルの目に飛び込んだのは、マイケルと同じように斧を振りかぶるピエロの姿だった。
一瞬ひやりとした感覚があったが、マイケルは迷わず斧を振る。
ピエロも同時に斧を振り下ろし、ピエロの斧がマイケルの肩に深々と沈む。
マイケルが振った斧は、ピエロの首に当たっていた。
首を断たれたピエロの頭が落ち、体はその場に倒れる。
ピエロの頭はゴトン、と、重たい音を立て、少し床の上を跳ねながら、転がっていく。
「はぁ、はぁ」
痛みから呼吸が荒くなる。
転がったピエロの頭は、机の下に隠れるジェシカと目が合った。
ジェシカを見るなり、ピエロは甲高い笑い声を上げる。
「ぱぱぁ!」
ジェシカは恐怖で机の下から飛び出し、マイケルの所へと走った。
マイケルは傷の痛みに耐えながら肩に深々と食い込む斧を引き抜き、投げ捨てる。
「行こう、ジェシカ」
冷や汗で濡れる額を拭いもせずに、マイケルはジェシカに言った。
だらんとした片手はもう自由には使えそうにない。
もう片方の手には斧を持っておきたいと思い、マイケルは力の入らない手を無理やり動かして、ジェシカに差し出す。
ジェシカは目を涙でいっぱいにしながら、力の無いマイケルの手を握った。
二人は警備室を出る。
(搬入口に向かおう……もしかしたら、出られるかもしれない)
そう思い、マイケルは搬入口に向かって歩きだした。
搬入口への行き方も覚えている。
ジェシカを探すために、何度も行き来した通路だ。
肩から垂れる血が、ジェシカの手に触れる。
ジェシカは心配そうにマイケルを見上げた。
マイケルは黙って、ジェシカの手を引きながら歩く。
出血が多いせいか、目の前がぼやけるような感覚に襲われた。
それでも何とか、ジェシカを死なせるわけにはいかないという思いだけで意識を持たせる。
少し歩くと、搬入口に出る両開きのドアが見えて来た。
マイケルは焦る気持ちを抑えながら、ドアに近付く。
「ジェシカ少し手を離すよ」
優しく言ってから、マイケルはジェシカの手を離す。
そして、ドアを開けようとノブを回すが、ドアは開かない。
鍵が掛かっているのとも違う、全く動かないその感覚に、マイケルは「くそっ」と声をもらした。
「ぱぱ?」
心配そうにジェシカが呼ぶ。
その声に、マイケルは微笑んで見せた。
「大丈夫、大丈夫だ」
しゃがんでジェシカを抱き締める。
口では「大丈夫だ」と言ったが、この様子では避難口ですら開かないだろう。
あのピエロがあれで完全に動かなくなったとは考えられない。
いつ、また、追ってくるかわからない。
マイケルはジェシカの手を持ち、立ち上がる。
(どうすれば……)
もう、頭が回らなかった。
どうすれば元の世界に戻れるのか、全く想像ができない。
その時だった。
「ここに来たの! 間違いないわ!」
と、聞いたことのある女性の声が響き、マイケルは顔を上げる。
両開きのドアの磨かれた表面に、数名の人の輪郭が写っている。
二人の警官らしき黒い服の男性と、赤毛の女性のシルエットが見えた。
それを見てマイケルは目を見開く。
「……アンナ」
赤毛をしたそのシルエットは、アンナのもので間違いなかった。
リズミカルな足音が近付いて来る。
足音は、警備室の前で止まった。
マイケルの手に力が入る。
机の下のジェシカも、震えながら、壁に体を押し付けていた。
ドアのノブが音を立てながら動く。
そして、ドアが開いた。
ドアの影に身を潜めながら、マイケルは入って来るであろうピエロの存在を待つ。
ぬっと、影が入って来る。
(今だ!)
マイケルは斧を振りかぶり、影から飛び出した。
すると、マイケルの目に飛び込んだのは、マイケルと同じように斧を振りかぶるピエロの姿だった。
一瞬ひやりとした感覚があったが、マイケルは迷わず斧を振る。
ピエロも同時に斧を振り下ろし、ピエロの斧がマイケルの肩に深々と沈む。
マイケルが振った斧は、ピエロの首に当たっていた。
首を断たれたピエロの頭が落ち、体はその場に倒れる。
ピエロの頭はゴトン、と、重たい音を立て、少し床の上を跳ねながら、転がっていく。
「はぁ、はぁ」
痛みから呼吸が荒くなる。
転がったピエロの頭は、机の下に隠れるジェシカと目が合った。
ジェシカを見るなり、ピエロは甲高い笑い声を上げる。
「ぱぱぁ!」
ジェシカは恐怖で机の下から飛び出し、マイケルの所へと走った。
マイケルは傷の痛みに耐えながら肩に深々と食い込む斧を引き抜き、投げ捨てる。
「行こう、ジェシカ」
冷や汗で濡れる額を拭いもせずに、マイケルはジェシカに言った。
だらんとした片手はもう自由には使えそうにない。
もう片方の手には斧を持っておきたいと思い、マイケルは力の入らない手を無理やり動かして、ジェシカに差し出す。
ジェシカは目を涙でいっぱいにしながら、力の無いマイケルの手を握った。
二人は警備室を出る。
(搬入口に向かおう……もしかしたら、出られるかもしれない)
そう思い、マイケルは搬入口に向かって歩きだした。
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ジェシカは心配そうにマイケルを見上げた。
マイケルは黙って、ジェシカの手を引きながら歩く。
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それでも何とか、ジェシカを死なせるわけにはいかないという思いだけで意識を持たせる。
少し歩くと、搬入口に出る両開きのドアが見えて来た。
マイケルは焦る気持ちを抑えながら、ドアに近付く。
「ジェシカ少し手を離すよ」
優しく言ってから、マイケルはジェシカの手を離す。
そして、ドアを開けようとノブを回すが、ドアは開かない。
鍵が掛かっているのとも違う、全く動かないその感覚に、マイケルは「くそっ」と声をもらした。
「ぱぱ?」
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