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第3章

警察官の涙②

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 それを聞いて……

一番年上の50歳代の巡査(階級章で巡査であることを確認しています)。

 顔を伏せて首を私がいない方に向け、表情が私には全く分からないようにして、

「はよ、帰り」

 声は涙に濡れていました。

 30歳代の巡査は今にも泣き出さんばかりの顔で、まばたき一つせず私がドアを閉めて振り返り敬礼するまで、じーと私を見詰めています。


 まだ未成年。一人だけ奥の机で何やら(空出張の?)書類の書き込みをしていた巡査。

 一度ペンを止め、私の顔を見るも、それから後は何事も無かったように、しゃにむにペンを動かしていました。


 私は彼の方を向いて「失礼します」と大きな声で言ったのですが、答礼せず、しゃにむにペンを動かし続けています。


 顔を伏せている50歳代の巡査は、私が誰に挨拶したにかが分からずに、

「うん、うん、はよ帰り」




 みんな嬉しかったんだろうな。きっと・・・
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