浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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俺は野菜だったのか!

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「浜薔薇行ってください」
皆無さんと話をしている途中にそう言われた。
「?浜薔薇ってあのお友だちのお店ですか?」
「そうですよ、予約はしますね、…あっ、もしもし蘆根?」
トントン拍子に浜薔薇行きになった。
ある問題の相談と解決に、皆無さんと打ち合わせを何回か重ねていた時の話である。
よくわからないまま、浜薔薇に行くことになり。
「お待ちしてました」
そういわれて、奥の個室に通されてマッサージをすることになった。
確かに最近は疲れがたまっているなとは思っていたが、自分ではこのぐらいと思っていた。
(ある程度物事が収まれば、ゆっくりできるだろうし、それまでは辛抱と何時やつではないだろう)
そんな感じ。
着替えをして寝そべって、よくわからないがお任せとなった。
マッサージのミルクが塗られていくが、塗るというより揉みこまれる感じである。
お店の人が、掌にミルクをたらして、伸ばして、それを肌につけていくが、その時によく馴染むように揉む、あれだ、野菜の塩揉みって感じ。
私は野菜だったのか!
なんかそれがツボにはいった。
よくあるマッサージのベットというよりは、シングルのベットに近い、弾力もあり、しかも枕がよいので、このまま寝たくなる。
静かで、昼間でも薄暗く、寝るにはぴったりな環境。
そんなところでまずは手と足にマッサージ用のミルクを塗られていくが、ピリッと痛かったりする部分もあるし、伸ばして気持ちのいいところもある。
ちょっと幸せかな。
申し訳ないが、まだまだ解決までには時間が、問題を起こした人は知らないだろう、解決するまでにどれだけの労力がかかっているのか、それこそ皆無さんにたどり着くまでにいろんなところに、問い合わせては断られたり、お金をとる割には素人な発言が目立ったり、適切な人に出会うまでに時間と手間がかかってはいるが、それこそ皆無さんに頼んでからは、ありえないぐらいのスピードで話が…それでもよぎるけどもね、上手く行かないんじゃないかって。
最近はそんなことを考えながら寝ていた。
ネガティブと言われそうだが、これから起きそうなことに対策をしていくことが、今まで生き延びれたコツとも言える。
そういったものを何も考えないで、問題が起きても、どうしても時間内で解決することが優先されるから、大事なものは守れなくなってしまうこともある。
そういうのは嫌だなって…
やはり人間は譲れぬ一線というものがあるのだ。
(あれ?)
今寝てたよな。
そして夢見心地でふわふわなのだ。
(皆無さんが浜薔薇に行けっていうわけだ)
蘆根にマッサージをしてから、実は自分は疲れているんだと気がついた。
(う~ん、知らない間に疲れていたか)
ちょっと反省する。
何度か出ているかも知れないが、蘆根のこのマッサージミルクを塗っていくようなマッサージをされるお客さんは、大分体が疲れていて、弱っている人たちである。
特にこのお客さんのような大丈夫ですよタイプは危ない。
(紹介してくるわけだな)
爪も少し長いままだから手もマッサージにも向かない、セルフもしている余裕もないかもしれない。
ここが分水嶺なのだろう。
皆無から紹介されたお客さんは、何かに追われていたりする、別に暗殺者とかそういうのではなく、時間、締め切りにというやつだ。
その時間の〆を守らなければならないために、何かを犠牲にする、それは遊ぶ時間だったり、寝る時間だったり、心の余裕がなくなっていくのである。
短期間ならいい、何ヵ月かだと間違いなく体がこってくる、疲れてくる。
どのぐらいまでマッサージで良くなるかは、その人次第と言える、健康な体ならばまだなんとか、しかし病み、脆くなると話は違ってくる。
浜薔薇の常連客なんかはそこは知っている、マッサージが気持ちいいのは健康だから、そのために健康を維持してやるんだと思っていた。
なんという罪深いマッサージなのだろう。
「人生の楽しみの一つが浜薔薇なんで、これ失うのは本当に嫌だから」
同期が大病した常連客の一人は、いっそう自分は気を付けなければと思った。
「ベストフレンドの湯じゃないけども、傑くんに髪切ってもらって、タモツさんに髭剃ってもらって耳掻きされて、蘆根さんにマッサージされてから、王子をもふもふして帰るころには、疲れがどっかにいってるからな」
心労?あいつなら老廃物と一緒に出ていったよ。
今日紹介されたお客は浜薔薇がこういう店だとまでは知らない。
(並みの疲れじゃないな)
蘆根の見立てでは、それこそ全身である。
特に悪いのは、目と肩と、睡眠時間が足りてない。
この話は後で皆無とも共有するつもりである。
体が弱っているのは、普段よりも眠れてないから、眠れてないのはネガティブなことを考えて、緊張しているからといったところだろうか。
(今まで何でも自分でやって来たからなんだろうな)
そういう人が陥りやすいのである。
皆無のことだから、今後はこのお客さんのために休息の時間を多目にとることだろう、また近いうちに浜薔薇に来ることになるかもしれない…
「なんかさ、久しぶりに夢とか見たもん、皆無さんが浜薔薇に行ってくださいって言われるよな、そりゃ、自分で疲れているのに気がつかないぐらいになっているんだもん」
マッサージ終了後、お客さんはこうこぼした、一回目の感想としては十分であろう。
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