浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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違法セイレーンソング

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『サッ』
初めて会った河川ザメが自分の顔を見ると、変な鳴き方をした。
「ああ、これは託宣ですね」
その河川ザメと一緒にいた人が、そう教えてくれるのだが。
「託宣?」
「今日はどこかに出掛けるの?」
「ああ、パーティメンバーと合流するつもりだったんですが」
「なんかあんまり移動しない方がいいみたいだよ」
ここは生まれ育った世界なのだが、この辺にいるのは、だいたい異世界の存在を知る人たちである。
「もしも、託宣通りにするのならば、こっちからも一言くわえて、宿泊施設確保するけども」
「ああ、それならばお願いしたいですかね、パーティメンバーに連絡もしなくちゃいけない」
河川ザメの顔がそこで虚空を見ている託宣モードから、よく見かけるようなサメらしい顔に戻った。


「というわけでリーダーは遅れるそうよ」
「そういうのって当たるのか?」
「河川ザメだぞ、それなりにな、人間よりも上位の存在、神話にも名前を残している」
「それにリーダーに限ってじゃないけども、トラブルに一度会った人間は、しばらくは厄介ごとに巻き込まれるっていうから」
「そうもあるし、相が普通の場合よりも読みやすくなるらしいから」
たぶん何かはある、それが終わってからでいいと返事だけは来たのである。


「待機でないなら、一緒に来てもらおうと思ったぐらいだよ」
こちらは手続きをしてくれたKCJの職員さん。
「何があったんですか?」
「事件ごとじゃなくて、祝賀会。うちの職員がまた熊を討ったんだけどもさ、そこの地域の人たちがどうしてもってことで」
大抵は銃器類で対処なのだが、ちらほらと槍などで駆除の話が出ている。今回の祝賀会は槍で駆除した職員に向けてであるが。
「槍で駆除した場合は、祝賀会開くんだって、これが十年ぶりぐらいの開催なんだそうだ」
それで槍を使うリーダーにもどうか?というお話。
「あの辺ですと、ダンジョンには言ったことはありますが」
「あそこら辺でダンジョンって、まさかお菓子?」
「そうです、お菓子です」
お菓子で伝わるダンジョンは、それこそダンジョンマスターが、お菓子をずっと食べていたいからから生まれたもので。
「だとしたら、やっぱり惜しいな、連れていきたかったよ」
人格と実力がある程度なければ許可が降りない場所である。
「でも、腕としてはギリギリ許されるぐらいなんで、あまり実力は期待されても、ほら戦闘許可証もとれてませんし」
「そのうちでいいから、取ってくれるとうれしいな、あの辺、他にもダンジョンがあって」
「たぶんそっちは受けれませんね、取得物、探索した人じゃなくて、地域のものになるんですよね?」
「もうなんでそんなことしちゃったのかなって、思ってるよ、今はKCJの職員で対応しているけども、あれだとそのうち一部引き上げかなって、ほら、うちは慈善事業でもないし」
「えっ?」
「いや、そうだよ、くくりはそうかもしれないけども、危ないことはしないし、便利に使われるとか、軽視するとかは一番嫌うことだからね」
職員は我慢するかもしれませんが、ケットシーはそんなことはしません。
「さっきも出たお菓子なんかは、取得物が探索者のものになるから、危険でも、一攫千金目指してやってくれる人たちが出るんだけどもね」
お菓子ダンジョンは甘い匂いに誘われて、生物類が集まり、かじりつくのだが、このダンジョンの恐ろしいところは、かじりつくのはいいが、いつまで経過してもお腹が満たされないのである。
「話には聞いてましたけども、どっかで気づくんじゃないかと思ってましたが、本当にネズミとかがずっと食べているんですね」
「鼻と舌は間違いなくあれが食べ物だと感じるんだけどもさ、生きるためのカロリーとか栄養がとれないままなんだよね、だからさっき言ったネズミなんか早いよ、彼らは一日食べなければすぐに亡くなってしまうわけだし、そこがあのダンジョンの怖さだね、食べれない怖さ、辛さ、苦労を知るものほど、あそこから離れられない」
「奥に進むと、匂いで胸焼けするようになるんですがね」
「対策知っているとそうなるよ」


メロディが流れた、夕方なのでそういうものかと思っていたが、時間が中途半端だし、圏外になっていた。
これがたぶんトラブルというやつだろうか。
とりあえず問題点は、これが自分にだけ聞こえるとか、他の人にも聞こえるのだろうかでたる。
自分にだけ聞こえるならばかなり危ない、何しろ危機を乗りきれるだけの実力があるわけではない。
誰にでも聞こえている場合は、KCJの職員か、戦闘許可証持ちが我先にと動く。特に戦闘許可証持ちはそういう人たちである、己の力を発揮でき、栄誉を取りたいと思っているので、こういうものほど解決したがる。
ただ託宣のこともあるので、自分にだけ聞こえるで動き、必要な情報を集め、戦える誰かと会うというのが大事なことであろう。
そうこう考えていると。
『エ~エ~』
少し音量が大きくなった、そしてクラリと来たので、魔法で聞こえかたを変えてみる、そのまま聞こえなければ大抵はこの手の魔法は成立しなくなる。
「これでいいかな」
こういうとき大変なのは、戦闘許可証がないこと。まあ、いつものことなので、使える日用品を身を固めた。
ドア一枚程度は聞こえかたが変わらなかった。
ただ少し気持ちが落ち着いてきたので、もう少し聞こえかたを変える。
こんなにも異変があるのに、気持ちが落ち着くというのは怖いことだ、確かに恐れ知らずはいいのかもしれないが、麻痺してくるのは話が別である。
人の気配もない。
今、何が起きているのか気づかれてないのかもしれない。
幸いにも行き来は自由なようなのがわかったので、情報だけ確保して、後は戦える人にお任せとなる。
歌はあの建物、そしてわざわざ招きやすいようにみんなチェーンの鍵がはずされていた倉庫の、この奥から聞こえる。
ここまでわかればもう自分は近づくべきではないと戻ろうとしたとき。
ガチャン
奥の部屋に誰かが窓を割って入った。
そんなことをするのは腕が確かで、ここでこちらが部屋に踏み込み、こちらを確認したことその間が相手にとっても隙になるかもしれないと思い、そのまま中に!
「サッ!」
そこでまず最初に見たのは、河川ザメがドロップキック、ドロップ尾ビレを誰かに食らわせていたのである。
ドサッ
食らった誰かは一撃で沈んだ。
「サッ」
なんて美しい歌声なんだ。
「サッ」
さぞかし綺麗な娘さんだと思ったんだ。
「サッ」
それが人間だったとは…
がっかりしている河川ザメ、そしてリーダーに気づく。


「そうなんです、歌が聞こえてきました」
「しかし、災難ですね、違法でセイレーンソング使ったはいいが、河川ザメに聞こえる歌だったなんて」
「でもそのおかげで助かりましたから」
「それでは後はこちらでやっておきますから」
「ではよろしくお願いします」
そういうと。
「サッ」
じゃあ、行こうかとサメからお誘いを受けた。
リーダーはこの後、口止め料としておごられるが。
「人間はそんなに一回じゃ食べれないから」
「サッ」
それでもこれを食べろというので。


「ええっと、とある事情で河川ザメさんから食料をいただけることになりました」
「わかった、うちのガキ共が食えるなら文句はない」
「本当にリーダーは色んなことが起きるよね」
「それでも転んだところで、ただでは起きないところがリーダーも」
そこから河川ザメから定期的に食べるものが来るのだが、さすがに多いので、河川ザメの契約に対しては大手の風信子に問い合わせしたところ。
「子供たちに情がわいたらしいので、そのまま受け取ってもらえると、ただ何がどう来ているのか記録と、関係各所の報告はした方がいいでしょうね」
それらを記録し、報告書の作成が後日パーティに正式な依頼としてやって来たのである。
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