浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
673 / 1,093

ワープも魔法もある世界

しおりを挟む
「どうも初めまして、KCJの者です!」
「えっ?あっ?はい、初めまして」
つい勢いで返事をしてしまった。
「ずいぶんとお暗い感じですね」
「色々とあったんですよ」
「そんなお困りだと思って話しかけたんですよ」
この人は何?そもそもKCJって?そういう宗教的な?
「あなたの無実はわかっています」
「…」
「『やったのはあなたでしょ』とか言った人が犯人なんで、その証拠もここにあるんですよね」
「はっ?」
「もちろん、あなたが当日どこで何をしていたのか複数の車両のドライブレコーダー、車の持ち主の方からの協力も取り付けてます」
「すいません、もう一度」
「あなたは犯人にされそうである、私たちは別件で調査していたら、あなたが巻き込まれている事件を知ったので、調査の依頼人に確認したら『私ね、そういうの大嫌いだって知っているから、良ければ味方になってあげてね』って言われまして、あっ、これあなたの無実に必要な書類」
ドサッ
厚い封書を渡された。
「本当は糾弾が始まる前に来たかったのですが、そこは間に合わなくてごめんなさい」
申し訳ないと頭を下げてくれた。
「いやいや、いやいや?」
あれ?自分でも何を言いたいかわからない。
「私は犯人ではないでいいんですよ、実は自分が知らない間にとか」
「ないない、どうしてあの時交通量の少ないとされる県道を歩いていたあなたが、事件現場に行くんですか?ワープするとか?ピロリロ~って?それともまさかワープ出来るとか!」
「出来ないですね」
出来たら通勤のために苦労はしないだろう。
「ああ、良かった、これでもしもワープが可能ならば、書類を作り直さなければならなかった、ワープも魔法もあなたが使えないのならばその書類だけで間に合うはずですよ」
この人は面白い人だな。
「まずはアリバイの話をみなさんに私から説明します、同席をお願いしたいところですが、その様子だと…」
「いえ、ハッキリさせましょう、そうじゃなければその方が参りそうだ」
「わかりました」
私はその職員さんが代弁をしてくれたので、その事件とは途中退場になったので、結末は見届けてはないが、後日その職員さんが連絡してきて報告を聞くことになった。
「こちらはお見舞い金ですね」
あの時糾弾した人たちではなく、KCJの調査を依頼した人からのものらしい。
「実はですね、あなたが犯人だと疑われた事件の真犯人への追求の最中で、こちらの依頼に関わる重要な証言がとれまして、依頼人は元々お見舞い金を用意してたみたいですが、その証言のおかげでニコニコのウッキウキになって」
気分がいいね!清清しいってこういうことをいうんだ。ハッハッハッハッ、やっと追い出せる。
「これからの損失を未然に防いだら、これぐらいで申し訳ありませんがって」
「いや、これ、大金ですよ」
現金入りの封筒厚みがありました。
「世の中には持ってる人は持ってるわけだし、それに…代わりにあなたは事件に関する全容は知ることはありませんかね」
「それはそういうものでしょ」
「そういってくれると助かります、大抵揉めるとしたらこの辺なんですよね、そんな時は仕事が増えて大変なんですよ」
明るく社会の闇を語られる。
「契約書類があるならばそちらにもサインしますし」
「あっ、はい、ではこちらにフルネームで」
直筆のサインをした。
「そういえば最近家に隠りがちと聞きましたが」
「前までは外食とか言ってたんですが、今は人目が、視線がね、気になっちゃうんですよね」
「ああ、それはそれは、じゃあ、こういう店はいかがですか?」
そういってビルの裏口から案内されたのだが、路地は珈琲の香りがする。
「?なんですか?この生き物は?」
「あれ?見たことはありません?サメです、この一角はサメたちへの貸し切り営業みたいになってましてね」
人の目を気にしないで、人の食事を楽しむサメたちが寛いでいる。
「ここならいいかなって、もしダメでも、他のお店探しますから、そこは安心してください、物は試しですよ!」
いけるかな?と思っていたが、久しぶりに楽しい時間を過ごせた。
「ありがとうございました」
「なんでお礼をいうんです、こっちはあなたを守ろうとして間に合わなかったのに」
「守ろうとしてくれたのが嬉しいし、そういうことはね、たぶん人生にはあるんですよ」
そこから職員さんから、KCJとは何か、この世にはワープも魔法も実はあることを説明してもらった。
そういうものなんだっていうのが、私の素直な感想だし、こういった事情で普通のお店に行けなくなったこともあり、KCJ関連の様々な店を紹介してもらうことになった。
事件が起きたことで、旧来の知り合いたちの本性が見えてしまったことはとても悲しいし、酷く傷ついたが、私はこの配慮によってあの事件のことが少しずつ遠くのことに思えてきた。
それは今までと別れを告げることになったが、ワープも魔法もある世界は陽気で適当なサメたちもいる。
「サッ」
松ぼっくりを知り合いのサメは見せてくれた、なんでもその群れでは松ぼっくりのカサが開くか、閉じているかで今日は暑いの寒いのを判断するらしい、こういう話を聞かせてくれるようになったので、 私はちっとも寂しくはないのである。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...