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お風呂の具
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溜まっている書類を少しでも片付けようと、肌寒い夜に目を通していたら。
「お久しぶりでございます、お元気でしたでしょうか?」
障子の外に女の影が浮かんでいた。
「おお、久しぶりではないか、そちらこそ元気だったかね」
頭領がそう声を返すと。
「おかげ様で」
「そうか、良いことも悪いこともあったみたいだな」
「はい、人ではありませんが、色々です」
「そこは生きているものならば変わらないものなのかもしれないな、あの後一体どうなってたんだい?」
「どこから話せばいいのか」
「何、今は世間では休みというやつだ、良ければ聞かせてはくれないか」
そういって夜更けまで話した。
「そろそろ行かなければなりません」
「そうか、また話を聞かせてほしい」
「しかし、ご頭領、そちらは忙しいのではないですか?」
「そうだな、最近は年もあるが、忙しさがこたえるよ」
「そうでしたか、それならば良いものをお教えいたしましょう」
「サッ」
着替え終わったらこっちに来てね。
「終わったよ」
兄弟子に真中(ただなか)が話しかけた。
「サッ」
その療養着のまま、こっちのお湯に使ってね、浸かったらお風呂の具を投入します。
「お風呂の具」
出たよ、独特のネーミングセンス。
「サッ」
これはその昔、頭領が教えてもらった疲れを取るお風呂でね、こうして乾燥させておけば、後はぬるま湯に浸けて、出汁が出たら効いてくるよ。中身は薬草(くすりくさ)と薬皮(やくひ)だ、おおっと中身は教えれるが、配合比は秘密だからね。
ペチャッ
お風呂の具は真中が浸かる湯に入れられた。
元々は疲れを取るために旅人などに伝わっていたのだが、人間側では途切れてしまったらしい。
「話には聞いていたが、そこからが少しばかり大変だった」
頭領は苦笑する。
この薬草や薬皮が効果があるとは言うものの、どうすればよく効くのかがわからない。
「多すぎると、臭いがな、薬の臭いが立ち込めてしまうんだ」
だからといって少ないと、ただの水、いや、お湯に過ぎない。
「それでおそらくこれが、諸国漫遊した旅人達が使っていたのではないか?というものまではわかったが、そうするともう1つ課題があってな」
当時はありふれていたかもしれないが、今はそこまでではない。
「だからそこで少しばかり工夫をね」
(なんか、ミカンかな、そんな感じがする)
真中はお風呂におとなしく浸かってろと言われたので、やることもなく、これ何を入ってるんだろうなと、お風呂の具を包む麻袋をじっと見ていた。
(というか、俺の知識ではミカンの皮、陳皮ぐらいしか手軽に現代で入手可能で風呂で使うのは思い浮かばないんだけどもな)
正解、確かに陳皮が使われている、使われているのだが、市販されているものでは当然ない。
「前は自分で食べたものを干すだけだったが、今はサメ達がいるからな」
ちょうど頭領が主家から故郷に戻ってきたばかりの頃に、幼なじみといっていいサメ、そしてその一家、一族と交流になったので、ここでサメは頭領から人間の食べ物を色々と教えてもらうことになった、そのうちの1つがミカンであった。
「何匹もいたし、確かにミカンが好きすぎる子もいたから、人間のように黄色にでもなったらどうしようかと思ったよ」
ただサメにも食べ過ぎると黄色なっちゃうぞ!は十分食べ過ぎ防止にはきくらしく、言われると、そこで食べるのを諦めたりする。
「それと戻ってきたことで、お歳暮としてもミカンが来てたからな」
ミカンが被ると大変でした。
「そのミカンの皮を干して作ってたんだよ」
そのミカンが好きなサメもいたことがあり、時期になると定期的に買うようになる。
「その時干していた陳皮がその後の激務を乗り越えるとき凄まじい勢いで消えていってな、これはダメだと思って、そこで陳皮自体を最悪買うとしても、自前で作っておくということにして」
その話をすると、ミカンが食べれるサメたちは歓喜した。
「知り合いからは金のかかることをしている、それが何の役に立つんだとは言われたがね」
どう考えても激務が待ってるのに、何も対策しないで体力で乗り越えろみたいな方針でした。
「だからどんどんやめていくものが出た、体を壊してな、ああいうのは悪循環というやつだよ」
もうここまで来ると、ろくな人材もいないので、今は忍ジャメと言われるサメたちは本当によくやってくれた。
「その時に、私を笑ってたやつは、結局後進を育てることもできなかった、だから今はなんとか復活させたいという考えは持っていても、当時の記録も記憶も残ってないような状態でね、そういう意味では忍者ごっこから始まったかもしれないが、形になって、私は自分が亡くなった後も残るんだろうなと」
「サッ」
そんな年寄りみたいなことをいうな。
「いや~友よ、でも振り返りたくはなるものなんだよ、その、なんだ、あの時は激務すぎて」
しかも未だに、戻ってこないかって主家から言われています。
「サッ」
忍ジャメもそっちには義理はないしな。
「厳しい話かもしれないが、伝統を受け継ぐのならば忍ジャメの力は借りられないし、新しいことをするにしても己で育てなければならないから、やっぱり忍ジャメの力は借りれないんだよ、あれ以上いたらやはり問題は起きる」
「サッ」
では何故に都会の街の防犯嘱託を引き受けることにしたの?
「瀬旭(せきょく)くんと、覆木(おおうき)くんを大事にしていた人たちを知ってたからね、もうずいぶんと前にお亡くなりになってたが、とってもいい人だったよ。それとあの二人は、特に覆木くんか、背負いすぎだ、瀬旭くんみたいにもう少し適当にとは言わないが、力を抜いてくれればいいんだが、どちらにせよ、あの二人は立場について、仕切るタイプではないから、忍ジャメがいれば、そこも多少は余裕が出るのではないかと」
「サッ」
そこまで考えを巡らしていたのか。
そういって友は冷たいお茶を渡してくれた。
「おお、これはありがとう」
一口飲んだ後。
「彼らは彼らで優れているのだが、相性の悪さはどうしてもある、しかしまた、とんでもないのがいたもんだよ」
それは誰のこと?と聞こうとしたが、ああ、あいつかとすぐに思い当たったので、友に質問をすることはなかった。
「お久しぶりでございます、お元気でしたでしょうか?」
障子の外に女の影が浮かんでいた。
「おお、久しぶりではないか、そちらこそ元気だったかね」
頭領がそう声を返すと。
「おかげ様で」
「そうか、良いことも悪いこともあったみたいだな」
「はい、人ではありませんが、色々です」
「そこは生きているものならば変わらないものなのかもしれないな、あの後一体どうなってたんだい?」
「どこから話せばいいのか」
「何、今は世間では休みというやつだ、良ければ聞かせてはくれないか」
そういって夜更けまで話した。
「そろそろ行かなければなりません」
「そうか、また話を聞かせてほしい」
「しかし、ご頭領、そちらは忙しいのではないですか?」
「そうだな、最近は年もあるが、忙しさがこたえるよ」
「そうでしたか、それならば良いものをお教えいたしましょう」
「サッ」
着替え終わったらこっちに来てね。
「終わったよ」
兄弟子に真中(ただなか)が話しかけた。
「サッ」
その療養着のまま、こっちのお湯に使ってね、浸かったらお風呂の具を投入します。
「お風呂の具」
出たよ、独特のネーミングセンス。
「サッ」
これはその昔、頭領が教えてもらった疲れを取るお風呂でね、こうして乾燥させておけば、後はぬるま湯に浸けて、出汁が出たら効いてくるよ。中身は薬草(くすりくさ)と薬皮(やくひ)だ、おおっと中身は教えれるが、配合比は秘密だからね。
ペチャッ
お風呂の具は真中が浸かる湯に入れられた。
元々は疲れを取るために旅人などに伝わっていたのだが、人間側では途切れてしまったらしい。
「話には聞いていたが、そこからが少しばかり大変だった」
頭領は苦笑する。
この薬草や薬皮が効果があるとは言うものの、どうすればよく効くのかがわからない。
「多すぎると、臭いがな、薬の臭いが立ち込めてしまうんだ」
だからといって少ないと、ただの水、いや、お湯に過ぎない。
「それでおそらくこれが、諸国漫遊した旅人達が使っていたのではないか?というものまではわかったが、そうするともう1つ課題があってな」
当時はありふれていたかもしれないが、今はそこまでではない。
「だからそこで少しばかり工夫をね」
(なんか、ミカンかな、そんな感じがする)
真中はお風呂におとなしく浸かってろと言われたので、やることもなく、これ何を入ってるんだろうなと、お風呂の具を包む麻袋をじっと見ていた。
(というか、俺の知識ではミカンの皮、陳皮ぐらいしか手軽に現代で入手可能で風呂で使うのは思い浮かばないんだけどもな)
正解、確かに陳皮が使われている、使われているのだが、市販されているものでは当然ない。
「前は自分で食べたものを干すだけだったが、今はサメ達がいるからな」
ちょうど頭領が主家から故郷に戻ってきたばかりの頃に、幼なじみといっていいサメ、そしてその一家、一族と交流になったので、ここでサメは頭領から人間の食べ物を色々と教えてもらうことになった、そのうちの1つがミカンであった。
「何匹もいたし、確かにミカンが好きすぎる子もいたから、人間のように黄色にでもなったらどうしようかと思ったよ」
ただサメにも食べ過ぎると黄色なっちゃうぞ!は十分食べ過ぎ防止にはきくらしく、言われると、そこで食べるのを諦めたりする。
「それと戻ってきたことで、お歳暮としてもミカンが来てたからな」
ミカンが被ると大変でした。
「そのミカンの皮を干して作ってたんだよ」
そのミカンが好きなサメもいたことがあり、時期になると定期的に買うようになる。
「その時干していた陳皮がその後の激務を乗り越えるとき凄まじい勢いで消えていってな、これはダメだと思って、そこで陳皮自体を最悪買うとしても、自前で作っておくということにして」
その話をすると、ミカンが食べれるサメたちは歓喜した。
「知り合いからは金のかかることをしている、それが何の役に立つんだとは言われたがね」
どう考えても激務が待ってるのに、何も対策しないで体力で乗り越えろみたいな方針でした。
「だからどんどんやめていくものが出た、体を壊してな、ああいうのは悪循環というやつだよ」
もうここまで来ると、ろくな人材もいないので、今は忍ジャメと言われるサメたちは本当によくやってくれた。
「その時に、私を笑ってたやつは、結局後進を育てることもできなかった、だから今はなんとか復活させたいという考えは持っていても、当時の記録も記憶も残ってないような状態でね、そういう意味では忍者ごっこから始まったかもしれないが、形になって、私は自分が亡くなった後も残るんだろうなと」
「サッ」
そんな年寄りみたいなことをいうな。
「いや~友よ、でも振り返りたくはなるものなんだよ、その、なんだ、あの時は激務すぎて」
しかも未だに、戻ってこないかって主家から言われています。
「サッ」
忍ジャメもそっちには義理はないしな。
「厳しい話かもしれないが、伝統を受け継ぐのならば忍ジャメの力は借りられないし、新しいことをするにしても己で育てなければならないから、やっぱり忍ジャメの力は借りれないんだよ、あれ以上いたらやはり問題は起きる」
「サッ」
では何故に都会の街の防犯嘱託を引き受けることにしたの?
「瀬旭(せきょく)くんと、覆木(おおうき)くんを大事にしていた人たちを知ってたからね、もうずいぶんと前にお亡くなりになってたが、とってもいい人だったよ。それとあの二人は、特に覆木くんか、背負いすぎだ、瀬旭くんみたいにもう少し適当にとは言わないが、力を抜いてくれればいいんだが、どちらにせよ、あの二人は立場について、仕切るタイプではないから、忍ジャメがいれば、そこも多少は余裕が出るのではないかと」
「サッ」
そこまで考えを巡らしていたのか。
そういって友は冷たいお茶を渡してくれた。
「おお、これはありがとう」
一口飲んだ後。
「彼らは彼らで優れているのだが、相性の悪さはどうしてもある、しかしまた、とんでもないのがいたもんだよ」
それは誰のこと?と聞こうとしたが、ああ、あいつかとすぐに思い当たったので、友に質問をすることはなかった。
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