浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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暑さに似合わない白だった

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それは暑い日だったため、タオルだけでは汗を拭き取るのは大変だろうと、冷たい水で絞ったものを用意し。
「使い終わったら、ここに入れておいてくれ」
バスケットの話をしたときに。
「ありがとう」
なんだこいつは礼は言えるやつなんだな、なんて思った。
自分も木陰の中で、体を拭き、終わったのでそのままバスケットにタオルを入れようとしたときに。
つい見てしまったのだ。
(肌白いな)
それは暑さに似合わない白だった。

「気分転換にはなった?」
「ちょっとは」
「ちょっとか」
「ここで嘘を聞きたいのか?」
「いいや、それはやだな」
「そうか」
「気を使ってくれるのはうれしいけども、ここでそれはないでしょうよ」
「そういってくれるのはありがたいよ」
「ふっふっ」
「なんだよ」
「おかしくはないが、おかしいかな」
「なんだよ、それ?お前はそんなに意地悪な奴だったのか?そうは見えないけども」
「意地悪じゃないんだが…悩みがあっても、本音を話してくれないのはちょっと嫌かな」
「言いたくないことはあるさ」
「俺らの仲でも?」
「人間関係は簡単に壊れてしまうものだよ」
「そうかもしれない、そうかもしれないがそこまで気を使ってくれている相手とは上手くやりたい」
「僕はそんなのごめんだ」
「怒った?」
「いや、怒ってはいない、しかし、そんなに落ち込んでいるように見えたのかね?」
「うん、他の奴には悩みを話そうとしているのは見た、なんで俺には言ってくれないのかな?って」
「聞いてて気持ちのいい話ではないから」
「そういう話も聞きたい」
「趣味が悪い奴だ」
「そうだね」
「世の中にはそういうものが好物な奴等もいるから」
「知り合い?」
「知り合いってほどではないさ、一度カウンセラーとかそっちにな、そんな話をする会に行ってみたらどうだろう?とは言われたりはしたんだ」
「行かなかったの?」
「しゃべるのは言いかもしれないが、人のそういう話を聞くのはな、申し訳ないのと、とても悲しくなりそうで行けなかったんだ」
「ふうん」
「真実に向き合うほど、強い人間じゃ僕はないのさ」
「じゃあなんで、今日はトレーニングに付き合ってくれたの?ついでに掃除まで」
「何もしないよりはいいだろう、その程度だな」
「助かったよ」
「そうか」
「掃除を手分けして行えば、こんなに早くに終わるんだなとは思ったし、いつもは出来ない場所もやることができた、ありがとう」
「例をいうのはこちらの方さ、まだ色んなことをやる気にはならなくて…」
「ゆっくりやっていけばいいんじゃない」
「そのゆっくりの時間をくれればいいんだがな、そうも言ってられなくなりそうで」
「そんなこと言ってもさ、しょうがないよ」
「それはわかっていても、焦るものなのさ」
「真面目だな」
「そうかな?お前の方が僕より真面目じゃないか」
「そう?」
「毎日きちんと稽古をする、だからこそその体が出来たんだろうなと感心する、僕は…もっと身長があればな」
「そんなに気にすることはないんじゃないの?」
「背の高い奴にはわからないんだ」
「俺だってそこまで背が高い方じゃないぞ」
「こっちはいつも見上げてるんだよ」
「いいじゃん、可愛いって言われたりするんだろ?」
「それは誉め言葉じゃないよ、全くわかってないんだから、体は鍛えていても才能がないって良くわかるんだよ」
「ずっと何とかしようとはしているのには驚くけども」
食べ物もそのために制限している。
「食事のバランスはチェックされて守っていても体に変化ないから、脂肪分減らしたらやっと筋肉ついたんだよ、これを失いたくないの」
「でも食事はおいしく食べなくちゃ」
「いいよな、食べても問題ない奴は」
「まあね」
「この健康体め!」
「おかげさまで」
「もっとプニプニしてろよ、なんで締まってんだよ」
「そんな逆ギレしないでよ、食事制限には付き合うからさ」
「えっ?」
「さすがに隣でラーメン大盛りとか美味しいです!とかはやんないよ」
「お前は変わってる奴だな」
「そうか?でも一緒にいるなら、食事は大事だし、それにだ、お前が食事制限とはいえ、不味いものを食べて我慢できているとは思わないからな」
「何、その信頼」
「どんな美味しいものを食べているか、食事制限をチェックしてやるよ」
「そんな大したものじゃないよ、トマト缶を材料にソース作ってさ、鶏肉も焼き方工夫して、油を結構落とすんだよ、そこでいい匂いがしてきたところにトマトソースかけてさ、時間がない時はケチャップで味付け調整するといいぞ」
「旨そうじゃん」
「おいおい、僕に作らせる気かよ、食べるんだったら、買い物と後片付けはやれよ」
「そのぐらいならいいぜ!」
「ったくしょうがないな、あっ、旨さとか期待するな、面倒くさいから」
「その言い方ってどうなのさ」
「うるさいのがいたんだよ」
「…家族か」
「まあな」
妙な沈黙と共に空気が変わるので。
「はい、この話、終わり、旨いか、そうではないかわからない飯食ったら帰れよ」
「頑張る」
「頑張るってなんだよ、頑張るって!」
食事ができるまでの間、調理の風景を見ていたのだが、自分が普段食べているものを食べてもらうような料理なので、やはり作り方が手慣れていた。
「茄子は好き?」
「好きだよ」
「出汁に浸けた奴だけども」
「えっ?旨そう」
「茄子が安かったんだけども、一人だとな、冷蔵庫も次に買い換えるときは大きいのにしないとダメだわ」
「そしたらまたパンパンになるまで買うんじゃないの」
「終わらない悩み」
「あっ、旨い」
「家でも作ってみるといいよ、冷凍庫あればできるよ」
「冷凍庫があれば?」
「そうそう、もちろんそっから加熱するけどもね」
「酒が飲みたくなるね」
「そんな料理と味付けばっかですよ、僕の料理は」
「でも酒飲まないね」
「…」
「すまん」
「いや、お前が悪い訳じゃない」
「作らされていたのが嫌なのか」
「心抉るのが上手いね」
「好きで抉ったわけじゃない、もっと言ってくれたらいいのに」
「言いたくないこともあるさ、思い出したくないこともあるが」
「気圧のせいにでもして、愚痴をこぼしてしまえばいいのに」
「しゃべる方は気分が良くなるかもしれないが、聞いている方は参るし、それを見たらショックを受けそうだ」
「いい人過ぎるよ」
「そうか?適当に時間が癒してくれるさ」
「人生終わっちゃうよ」
「そうか…終わってしまうか」
「枯れてんね」
「枯れてるな」
「もっと好きなことしていいんじゃないの?」
「好きなことをすることが幸せではない、これは誰かが言った言葉だったんだけども、僕もそういうタイプなんだよな」
「不器用だね」
「愚痴を聞いたら、気分が悪くなるようや話をする趣味はないさ、それともしろと?」
「そこは無理は言わないよ」
「ご飯も食べる?冷凍しているけども、炊き込みご飯にしたのがあるよ」
「炊き込みご飯なんて作るのかよ」
「えっ?野菜が中途半端だとな、カレーピラフでもいいかなっては思ったんだけども、ニンジンとかになりました」
「弁当でこれが出てきたらうれしいかも」
ニンジンはカタヌキ使用でお花ニンジン。
「しかも味付け、えっ?何?」
「ゴマ油がちょっと隠し味」
「え~今度から俺のために飯作ってよ」
「やだよ、面倒だ」
そして主菜のトマトチキンを食べ終わったところで、食器を洗うために下げてくれるが。
「それは俺がやるよ」
「えっ?そうなのか?」
「言ったことはちゃんと守るよ」
「ああ、そうか、お前はそんな奴だしな」
こういうところに触れるたびに、あの家族は本当コイツに何を、どういう扱いをしたのか怒りがわいてくる。
その俺の顔を見て、ビクッと怯えた顔をされた。
「そんなに怖い顔してたか?」
「…」
「悪い、不安にさせた」
「気にするな、お前はいい奴だってわかってる、すまん、後片付けは頼む、ちょっと部屋で休むから」
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫だから」
目も見ないで部屋に戻ってしまった。
結局後片付けは終えて、家を出るまで顔を合わせないままになってしまう。
(あんな顔をさせるつもりはなかったのに)
上手くはいかない。
本当、どうしたらいい?
どうしたら、あいつの中なら嫌なこと全部追い出せるんだろうなって、そんなこと帰り道は考えていた。

「おはよう」
そして次の日平然と挨拶してくる。
「おはよう」
そのまま挨拶を返す。
が…
「全然平気じゃないのに、そこで何もありませんよ、僕は幸せですよって顔をするのどうにかしたほうがいい」
「うるせーよ、朝っぱらから正論ぶつけるんじゃねえーよ」
「あっ、二人とも喧嘩?二人に話を聞いてもらいたいって人が、いつならいいですか?って問い合わせが来ているんだけども」
「僕ならいつでも…」
「こいつちょっと調子悪いんで、二日ぐらい見てもらいます?その間に俺が何とかしますから」
「そう?じゃあそう伝えておくわ」
「何勝手に決めてんだ、コラッ!」
「足並み揃えなきゃ、命なんて預けられないでしょ、今の状態じゃそれは出来ないよ」
「…わかったよ、じゃあ、何をすればいい?」
「サメ映画見ようぜ、とびっきり
くだらない奴!」
「はっ?」
「んでスパ銭行ってさ、そこの飯食おうぜ、平日限定セットならば懐痛くないでしょ」
そういって二日ほど振り回された。
本当にこいつバカだ、僕がダメなら、早々と見切りつけちゃえばいいのに…
クッソ、こんな奴だから、こっちからもうやってられないって断ることも、人間に対して諦めることもできねえんだよ。

あ~本当にとんでもねえ奴に捕まっちまった。

ただそうでなければ、ずっと苦しんではいたから、あいつには絶対に言うことはないが、…感謝はしている。
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