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人をそこそこ救う魔法使い
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「魔法をかけた責任はとってください」
「なんでだよ」
「だって童話みたいなことをされたんだよ、お城に行く前に助けてくれたのは王子様じゃないわけじゃない?」
それでは故事に習い、私はあなたを助けることにいたしましょうか。
「困っている人をそこそこ助けるのは魔法使いの義務だから」
「そんなの知らないよ、君みたいな魔法使いと俺は会ったことはないし」
「まっ、あんまり魔法使いはそこら辺にいるものではないから」
「そうなんだ」
「大抵は自分のやりたいことのためにそうなったりしている」
「じゃあ、君は?」
「私は生活のため、適性があったんで」
「すごいじゃないか」
「…」
「どうしたの?」
「あまりこの話は他には言わないでね」
「どうしてさ」
「あんまり良くないのよ、この辺は魔法使いを受け入れる地域というか、文化ではないから、あ~あなたのお父さんお母さん世代の時はまだマシだったんだけども、あなたの世代の奴がね」
「何?最悪なことされたの?」
「自分のために魔法使いに尽くせと」
「あっ、それはダメだ、逃げて正解だ」
「魔法使いはそれぞれ得意なことがあるから、魔法によっては人から目の色を変えられてしまうし」
「でもなんで俺を助けてくれたの?」
「見てられないからよ、もう…その、酷い、あなたが上手くいかないことなんかを嘲笑するし、上手くいったら嫉妬をするし」
「そうなんだよ」
「それをさらっと流しているけども、本来ならばそういう人間関係はおかしいからね」
「もう慣れちゃった」
「慣れない、それは…ダメよ」
「そうだね」
この時なんで男が機嫌がいいのかまるでわからなかったんだ。
だから戻ってから、こういうことがあったんですが?と育ての親、師匠にもあたるに報告をしたところ。
「それは…」
「何かやっぱりおかしい状態じゃないかと、精神に関しては医学に任せたりしますが」
「そういうものではないね、それでその彼を助けてあげたいと思ったりはしたのかい?」
「ん~最低限はせめて、そういうのがないことにしたいとか、新しい環境に逃げてもらうとか」
「そうか、そのぐらいか」
「後、少し、影も見えましたね、あれは何なのでしょうか?」
「影?」
「はい、ちょっとそれが本調子を引っ張っているって感じでしょうか」
「それは気になるな、私も一度見に行って見ようか」
「そうですか?ではお願いします」
そういって後日改めてになったのだが、魔法を先日かけた相手とは、連絡先を交換したわけではなかったので。
「そこは事前にだな」
そういって先生はその辺りを仕切っている猫に問い合わせたところ、この先のビルにいるケット又に頼めばいいと言うことを教えてくれた。
ケット又に話を聞きに行くと。
「ああ、あの人ですか、ええ知ってますよ、猫とケット又の違いがわからぬ人ですし、そこからちょっと話をしたことがあります」
何か用ですか?こちらは食事中ですよ。
すいません。
あれですか?自分より良いものを食べているからとか、そんな目でしたね。まっ、私は猫ではなくケット又ですからね、そういうこともあります。
「ただ私がしゃべっても驚きはしなかったので、こちら側の適性が高いと見ましたが…ははん、魔法使いの出番と言うことは、彼はもはや現実を見てないのですか、私がしゃべっても驚かないのはそういう人間ではなく、ストレスなどどどうでもいいと思っているのですか、それで魔法使いがやって来たか…か、南無阿彌陀仏」
そこまで聞いてから、お礼を言ってビルを後にした。
「先生、ケット又ってなんで文豪の猫みたいな話し方するんですかね?」
「それはケット又になるためになるとき、読書感想文でその文豪の作品を読むからだよ」
「あぁ、それで」
「なので、その昔は、英語教育がまだ一般的ではない頃に、子供の頃からケット又から英語を教えられて、そこからそういったものを活かした仕事についたっていう」
「ネットの前はケットから習っていたと言うことですね」
「上手いこというね、そういうことだ、まあ、英語だけではなく、ラテン語も嗜むとか、会話が続くのならば話を聞いて損はない存在だね」
「先生、あの人です」
こちらの姿を見かけると、男の方からこっちにやって来た。
「この間はどうも」
「こんにちは」
「今日はどうして?この方は?」
「はじめまして、先日はうちの弟子がもうも」
「先生でしたか、これはどうも」
「先日からあなたのことが気になったので探しておりました」
「えっ?それは…」
「君に悪い影が、うん、確かにあるね」
「そっか…」
「そんなに落ち込まないでください、そこまで悪いものではありませんから、それに先生もいますしね!」
(もうちょっと男心を学ばさなければ、ほら、それ聞いてがっかりしちゃってるし)
ただ気がない相手にその気にさせてしまうのもな~と先生は思ったと言う。
「とりあえず仕事を、立ち話はなんだしね」
喫茶店に移動する。
「こんなところにお店があったんですね、全然知らなかった」
「魔法使いの御入り用というところだよ」
「でも地域によってはファミレスでもそういうところがあるんですよ」
「魔法使い料金になるから、お店としても利用してほしいんだろうよ」
「えっ?魔法使い料金になるんですか?」
「なりますよ、まっ、現金としてはそのままでも、何かあった時の災厄の肩代わりとかそういうやつですね」
「チェーン店によっては、魔法使いを雇っていることがあるね、だいたい土地に強い魔法使いだけども」
「なんでも好きなもの注文して」
そういってメニューを渡すと。
「いや、それは…」
「昨日、何食べましたか?」
そう質問されて。
「ご飯と納豆…」
「一食だけは好きなものを、後の食事も…調理は?」
「できるけども」
「あっ、これは電気代とガス代の問題ですね、それならそこはなんとかなるように」
そういって彼女は自分の世界に入っていく。
「この子はこういうところがある」
「可愛いですね」
「…」
「すいません」
「あっ、ちょっとトイレに行ってきますね」
彼女が席を立った後に。
「好きなの?」
「いい子だなって」
「そう」
「でもそれだけですね」
「結構人生諦めているのね」
「諦めたくもなりますよ」
「そっか」
「魔法使いのみなさんならば、そのような悩みはないのでしょうが」
「気づいている?」
「えっ?」
「君には誰かの影がある、その影はうちの子の話をすると、君の力が強くなって、影を押さえ込めているのを」
「そりゃあ、彼女の話をすると楽しくなりますもん」
「その影は君に結構悪さをしている、うちの子は気になる程度だけども、私の目にはガッシリと掴んでしまっているのが見える」
「どうすれば…」
「私たちは助ける方向に動きたい、話している限りは君はいい奴そうだし」
「そんなんで人を助けてしまうのですか?」
「するよ、それが我々だし、他のやつらは何か言うかもしれないが、私はうちの子にもそう教えた、ただまあ、ろくでもない奴はいるからね、そこは心配だった」
「それはそうですよ、ろくでもない奴等はいる」
「君を助けることで、人間のそういう部分を見ることになりそうでね、そこが怖い」
「それなら助からなくていいです」
「そこまで諦めるものではないよ、君は極端だな、そうなる理由もわからなくもない、ではこうしよう、うちの子には課題として君の影を緩和させる、が、私の目から見てダメならばさっさと私が出向いて終わらせる」
「…」
「うちの子を頼む」
そこに返事ができなかった。
「あれ?どうしたんですか?」
「やはりこの人は影の影響が大きいようだ、だからね、しばらくはこれを課題とする」
「わかりました、きっちり守ります」
すごい情けなかった。
ここで気持ちが折れてはいけないともおもったが、折れた方がマシなのではと思ったぐらいだ。
「ではせっかくなので、お約束は近いうちにおでん屋さんにでもつれていってあなたの口からしてもらえると、うれしいかな」
「なんでおでん屋さん?」
「ああ、有名な魔法使いの力を借りる話があって、その時おでん屋さんで意気投合したからというものがあるんだが、そこから?」
「はい、そこからですね」
「これはうちの子、相当君を気に入ってると思うよ」
「そうなんですか?」
「そのエピソードを知った上で、なぞらえるんだもの。…しかしだ、これはなぞらえすぎないように、結末は悲劇だからね」
「わかりました」
と、まあ、そんな感じで魔法使いの子と知り合うようになったのだが。
「何、その女」
「そういう言い方はするな」
「なんですか?この失礼な人は、初対面の人に対して心証を悪くするのがやけに上手な人ですね、プロですか」
「なんだこいつ」
「おや…あなた、ずいぶんと人に恨みをかってますね、今は好きなように喋らせておけって、口の悪さを録音されてますよ」
「はっ?録音?」
そういって鞄を指差した。
「何をいって」
「開けた方がいいですよ」
これがなんだというんだよと鞄をあけると。
「何もないだろう」
「いえ、その奥」
「奥って…」
鞄の底の方に光が当たると、機械のようなものが見えた。
その時さすがのあいつも、そして俺も固まった。
「あっ、時間ですから、行きましょうか」
「いいの?」
「あれは中にいれた人と話し合うしかないですよ」
少し離れたところで。
「本当にあなたは…そのびっくりしますね、よくその程度で済んでいるというか」
「そうかな」
「そうです、普通ならば生きていくのも躊躇するものですよ」
「最近は楽しいよ」
「今までは楽しくなかったんですか?」
「あんまりね」
「もっと楽しいことしたほうがいいですよ」
「じゃあ、どっか行く?」
「どうしてそんな話に、デートみたいになるじゃないですか?」
「そうね」
「なんなんですか、あなたは」
「俺の心が折れそうなときに助けてくれるのは、君だけだ」
「そこまでこの世は酷くはないと思う」
「それなら君の前に助けてくれる人はいたはずなんだけどもね」
「…」
「ごめん」
「いえ、今日のことは忘れませんよ、しっかり人のためにも慣れるような修行をしていきたいと思います」
「そこまで思い詰めなくても」
「あなたのことを見ていると、そうなりますよ、ああ、時間ですか、それではまた来ますから」
「うん、待ってる」
「もう魔法使いなんかいなくても大丈夫ぐらいになってくださいよ」
「それはない、そんな日はいらない」
「はっはっ、では、また」
彼女、あの魔法使いの師弟に出会えてから、俺の心に喜怒哀楽が戻ったような気がした。
それだけでも魔法の力、その凄さは感じれるのであった。
「なんでだよ」
「だって童話みたいなことをされたんだよ、お城に行く前に助けてくれたのは王子様じゃないわけじゃない?」
それでは故事に習い、私はあなたを助けることにいたしましょうか。
「困っている人をそこそこ助けるのは魔法使いの義務だから」
「そんなの知らないよ、君みたいな魔法使いと俺は会ったことはないし」
「まっ、あんまり魔法使いはそこら辺にいるものではないから」
「そうなんだ」
「大抵は自分のやりたいことのためにそうなったりしている」
「じゃあ、君は?」
「私は生活のため、適性があったんで」
「すごいじゃないか」
「…」
「どうしたの?」
「あまりこの話は他には言わないでね」
「どうしてさ」
「あんまり良くないのよ、この辺は魔法使いを受け入れる地域というか、文化ではないから、あ~あなたのお父さんお母さん世代の時はまだマシだったんだけども、あなたの世代の奴がね」
「何?最悪なことされたの?」
「自分のために魔法使いに尽くせと」
「あっ、それはダメだ、逃げて正解だ」
「魔法使いはそれぞれ得意なことがあるから、魔法によっては人から目の色を変えられてしまうし」
「でもなんで俺を助けてくれたの?」
「見てられないからよ、もう…その、酷い、あなたが上手くいかないことなんかを嘲笑するし、上手くいったら嫉妬をするし」
「そうなんだよ」
「それをさらっと流しているけども、本来ならばそういう人間関係はおかしいからね」
「もう慣れちゃった」
「慣れない、それは…ダメよ」
「そうだね」
この時なんで男が機嫌がいいのかまるでわからなかったんだ。
だから戻ってから、こういうことがあったんですが?と育ての親、師匠にもあたるに報告をしたところ。
「それは…」
「何かやっぱりおかしい状態じゃないかと、精神に関しては医学に任せたりしますが」
「そういうものではないね、それでその彼を助けてあげたいと思ったりはしたのかい?」
「ん~最低限はせめて、そういうのがないことにしたいとか、新しい環境に逃げてもらうとか」
「そうか、そのぐらいか」
「後、少し、影も見えましたね、あれは何なのでしょうか?」
「影?」
「はい、ちょっとそれが本調子を引っ張っているって感じでしょうか」
「それは気になるな、私も一度見に行って見ようか」
「そうですか?ではお願いします」
そういって後日改めてになったのだが、魔法を先日かけた相手とは、連絡先を交換したわけではなかったので。
「そこは事前にだな」
そういって先生はその辺りを仕切っている猫に問い合わせたところ、この先のビルにいるケット又に頼めばいいと言うことを教えてくれた。
ケット又に話を聞きに行くと。
「ああ、あの人ですか、ええ知ってますよ、猫とケット又の違いがわからぬ人ですし、そこからちょっと話をしたことがあります」
何か用ですか?こちらは食事中ですよ。
すいません。
あれですか?自分より良いものを食べているからとか、そんな目でしたね。まっ、私は猫ではなくケット又ですからね、そういうこともあります。
「ただ私がしゃべっても驚きはしなかったので、こちら側の適性が高いと見ましたが…ははん、魔法使いの出番と言うことは、彼はもはや現実を見てないのですか、私がしゃべっても驚かないのはそういう人間ではなく、ストレスなどどどうでもいいと思っているのですか、それで魔法使いがやって来たか…か、南無阿彌陀仏」
そこまで聞いてから、お礼を言ってビルを後にした。
「先生、ケット又ってなんで文豪の猫みたいな話し方するんですかね?」
「それはケット又になるためになるとき、読書感想文でその文豪の作品を読むからだよ」
「あぁ、それで」
「なので、その昔は、英語教育がまだ一般的ではない頃に、子供の頃からケット又から英語を教えられて、そこからそういったものを活かした仕事についたっていう」
「ネットの前はケットから習っていたと言うことですね」
「上手いこというね、そういうことだ、まあ、英語だけではなく、ラテン語も嗜むとか、会話が続くのならば話を聞いて損はない存在だね」
「先生、あの人です」
こちらの姿を見かけると、男の方からこっちにやって来た。
「この間はどうも」
「こんにちは」
「今日はどうして?この方は?」
「はじめまして、先日はうちの弟子がもうも」
「先生でしたか、これはどうも」
「先日からあなたのことが気になったので探しておりました」
「えっ?それは…」
「君に悪い影が、うん、確かにあるね」
「そっか…」
「そんなに落ち込まないでください、そこまで悪いものではありませんから、それに先生もいますしね!」
(もうちょっと男心を学ばさなければ、ほら、それ聞いてがっかりしちゃってるし)
ただ気がない相手にその気にさせてしまうのもな~と先生は思ったと言う。
「とりあえず仕事を、立ち話はなんだしね」
喫茶店に移動する。
「こんなところにお店があったんですね、全然知らなかった」
「魔法使いの御入り用というところだよ」
「でも地域によってはファミレスでもそういうところがあるんですよ」
「魔法使い料金になるから、お店としても利用してほしいんだろうよ」
「えっ?魔法使い料金になるんですか?」
「なりますよ、まっ、現金としてはそのままでも、何かあった時の災厄の肩代わりとかそういうやつですね」
「チェーン店によっては、魔法使いを雇っていることがあるね、だいたい土地に強い魔法使いだけども」
「なんでも好きなもの注文して」
そういってメニューを渡すと。
「いや、それは…」
「昨日、何食べましたか?」
そう質問されて。
「ご飯と納豆…」
「一食だけは好きなものを、後の食事も…調理は?」
「できるけども」
「あっ、これは電気代とガス代の問題ですね、それならそこはなんとかなるように」
そういって彼女は自分の世界に入っていく。
「この子はこういうところがある」
「可愛いですね」
「…」
「すいません」
「あっ、ちょっとトイレに行ってきますね」
彼女が席を立った後に。
「好きなの?」
「いい子だなって」
「そう」
「でもそれだけですね」
「結構人生諦めているのね」
「諦めたくもなりますよ」
「そっか」
「魔法使いのみなさんならば、そのような悩みはないのでしょうが」
「気づいている?」
「えっ?」
「君には誰かの影がある、その影はうちの子の話をすると、君の力が強くなって、影を押さえ込めているのを」
「そりゃあ、彼女の話をすると楽しくなりますもん」
「その影は君に結構悪さをしている、うちの子は気になる程度だけども、私の目にはガッシリと掴んでしまっているのが見える」
「どうすれば…」
「私たちは助ける方向に動きたい、話している限りは君はいい奴そうだし」
「そんなんで人を助けてしまうのですか?」
「するよ、それが我々だし、他のやつらは何か言うかもしれないが、私はうちの子にもそう教えた、ただまあ、ろくでもない奴はいるからね、そこは心配だった」
「それはそうですよ、ろくでもない奴等はいる」
「君を助けることで、人間のそういう部分を見ることになりそうでね、そこが怖い」
「それなら助からなくていいです」
「そこまで諦めるものではないよ、君は極端だな、そうなる理由もわからなくもない、ではこうしよう、うちの子には課題として君の影を緩和させる、が、私の目から見てダメならばさっさと私が出向いて終わらせる」
「…」
「うちの子を頼む」
そこに返事ができなかった。
「あれ?どうしたんですか?」
「やはりこの人は影の影響が大きいようだ、だからね、しばらくはこれを課題とする」
「わかりました、きっちり守ります」
すごい情けなかった。
ここで気持ちが折れてはいけないともおもったが、折れた方がマシなのではと思ったぐらいだ。
「ではせっかくなので、お約束は近いうちにおでん屋さんにでもつれていってあなたの口からしてもらえると、うれしいかな」
「なんでおでん屋さん?」
「ああ、有名な魔法使いの力を借りる話があって、その時おでん屋さんで意気投合したからというものがあるんだが、そこから?」
「はい、そこからですね」
「これはうちの子、相当君を気に入ってると思うよ」
「そうなんですか?」
「そのエピソードを知った上で、なぞらえるんだもの。…しかしだ、これはなぞらえすぎないように、結末は悲劇だからね」
「わかりました」
と、まあ、そんな感じで魔法使いの子と知り合うようになったのだが。
「何、その女」
「そういう言い方はするな」
「なんですか?この失礼な人は、初対面の人に対して心証を悪くするのがやけに上手な人ですね、プロですか」
「なんだこいつ」
「おや…あなた、ずいぶんと人に恨みをかってますね、今は好きなように喋らせておけって、口の悪さを録音されてますよ」
「はっ?録音?」
そういって鞄を指差した。
「何をいって」
「開けた方がいいですよ」
これがなんだというんだよと鞄をあけると。
「何もないだろう」
「いえ、その奥」
「奥って…」
鞄の底の方に光が当たると、機械のようなものが見えた。
その時さすがのあいつも、そして俺も固まった。
「あっ、時間ですから、行きましょうか」
「いいの?」
「あれは中にいれた人と話し合うしかないですよ」
少し離れたところで。
「本当にあなたは…そのびっくりしますね、よくその程度で済んでいるというか」
「そうかな」
「そうです、普通ならば生きていくのも躊躇するものですよ」
「最近は楽しいよ」
「今までは楽しくなかったんですか?」
「あんまりね」
「もっと楽しいことしたほうがいいですよ」
「じゃあ、どっか行く?」
「どうしてそんな話に、デートみたいになるじゃないですか?」
「そうね」
「なんなんですか、あなたは」
「俺の心が折れそうなときに助けてくれるのは、君だけだ」
「そこまでこの世は酷くはないと思う」
「それなら君の前に助けてくれる人はいたはずなんだけどもね」
「…」
「ごめん」
「いえ、今日のことは忘れませんよ、しっかり人のためにも慣れるような修行をしていきたいと思います」
「そこまで思い詰めなくても」
「あなたのことを見ていると、そうなりますよ、ああ、時間ですか、それではまた来ますから」
「うん、待ってる」
「もう魔法使いなんかいなくても大丈夫ぐらいになってくださいよ」
「それはない、そんな日はいらない」
「はっはっ、では、また」
彼女、あの魔法使いの師弟に出会えてから、俺の心に喜怒哀楽が戻ったような気がした。
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