浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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こういうのが好物なんです

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「あなたみたいな人が、そんなもんに執着して何になるんです?あなたならば、若い男、しかもお金も持ってて、将来性もあるようないい男とまた一緒になれますって」
この人は何をいっているんだろうな?
最初はそんな印象だ。
「言いたいことはあるでしょうが、今は先生にお任せください」
何かを喋ろうとしたのを、その弟子という人間が止めてきた。
「まずは手始めにこういう、知ってます?今はいい男をまとめた、冊子があるんですよ」
先生はその冊子とやらを虚空にいる誰かに向けて見せ、まるで人がいるかのように楽しく話始めた。
「じゃあ、善は急げ、せっかくその気になったんだから、すぐに見に行きましょうよ、ご案内しますよ。どうします?向こうも一目でその気になったら、その準備はしておかなくっちゃね。えっ?化粧をしたい?着飾りたい、女心ですね、そういうのは男の俺にはわからなくて、じゃあ、その準備が出来そうなところにまずは行くとしましょう」
先生の姿が見えなくなると。
「もう喋って大丈夫ですよ」
「一体何が、いや、なんというか、あれはしばらく会ってはいないが、私の母親だったんたが」
「そうですね、あなたに執着して、七夕だというのに会いに来てしまった」
「七夕になんで来るんですか」
「思い起こす何かがあったんじゃないんですか」
「うちの地元、七夕に地域のお祝いあるわ」
「じゃあ、それでしょうね、思い出したのでしょう」
今、何時かとスマホを見ると。
「あれ?スマホが壊れている」
「えっ?」
表示に×マークが出ていた。
「こんなことってあるの?全部じゃなくて通信が、あのすいません、通信障害なんかは?」
「ないですね」
弟子が確認してくれると、弟子のものは使えるらしい。
「すいませんが連絡したいところがあるのですが」
「いいですよ」
スマホを見ると、彼から連絡があった途中にスマホの通信機能が壊れているようなので、借りた電話でかけ直す。
「もしもし」
「えっ?どうしたの?」
「スマホがいきなり壊れて、あなたからの緊急連絡っぽかったから、借りてかけ直した」
「変なことをいうようだけどもさ、何か嫌な予感があったんだ、大丈夫だった?」
「その話も、無事ではあったんだけども」
「今の件片付けたら、すぐにそっちに行くから」
「そこまでしなくてもいいわ、あなたの方に嫌な予感もうしないでしょ」
「…そうだけどもさ」
「お仕事終わったら会いましょう、だからそっちも頑張って、無理はしないでね」
とまでいってから電話を切ると。
弟子が、これは良い、という顔をしていた。
「何か?」
「いや~いいですね、クール系の娘さんが、愛の前でそうなっちゃうのは」
「ご冗談を」
「こういうのが好物なものなんで、この仕事をしています」
「それは随分変わってると思いますよ」
「そうですかね、でも、普通の人間ではあんなの対処しようもないでしょ」
「気味が悪いわね、自分の母ながら」
「面白いお母さんですね」
「やっぱりそう言い切るのは、普通ではないわね」
「こういう案件で昔から食ってきているのが我々ですから」
「そう…ごめんなさいね、私はそういう人たちを知らないので、何か失礼なことはしてないかしら?」
「問題ありませんよ、むしろ丁寧な口調なので、そういう人は最近は少なくなりました」
「…あなた、もしかして…」
「おや、尻尾でも見えてしまいましたか?」
「あっ、やっぱりそうなのか」
「でもあなたは気づいたところで、態度は変わりますまい、そこが良いのでお助けしたところがある、そして先生にも私の方から頼んだんですよ、あなたを助けることにはメリットがあるってね」
「何を求めるの?お金とか?」
「いえいえ、この人手不足の中で、仕事ができる人というのはいくらいてもいいわけですからね」
「そこは…そうね、これからとても大変になるのは決まっているので」
「猫の手も借りたいといいますし」
「あなたは猫ではないでしょう」
「はっはっはっはっ、やはり話が上手いお嬢さんだ」
「あなたの先生には負けるわよ、あれは本当になんだったの?」
「それはあなたが良く知っているのでは?私には男を選ぶ基準が金であるということ、自分の娘は道具と思っている女ってところですかね」
「そうね、ただ男を選ぶ基準が金だということについては、さっき知ったわ」
「人間というのはなかなかに面白いですね」
「そこまでだとは思わなかった」
「ようやく化けの皮が剥がれましたか」
「剥がれたよ、あれは…」
「でもあなたもあの女を前にして、本当のことは言いませんでしたね」
「その責任は取るよ、自分の身を守るにしても、いや、あの人を守るためにしろ、矛先を他人に変えて逃げようとしたんだからさ」
「面白いな」
「なんです?」
「そこも責任をとろうとするところが、口約束とはいいませんが、ただの話題ならば知らぬ存ぜぬで逃げればいいのに」
「生憎とそういう仕事はしてないし、本当はやってはいけないことなんだ…」
「そこまで気を病むことではありますまい」
「いや、病むさ、これは…」
「あんなのから無傷で逃げようなんて考えるからダメなんですよ、あれは、あれは初めてではない、他にも何かを犠牲にしている」
「それは知らないわよ、えっ?聞いてないんだけども」
「そうでなければあの腐った脂の乗り方はしないですから、あれはもう少しで…収穫期って感じですから」
「収穫期って」
「さっき先生が紹介する金も持ってて美形で将来性抜群の男って、人だと思います?」
「…最初は人を紹介して、それでダメならばそうでなはない、って感じかな」
「やはりそこまでお読みしますか」
「むしろその人は大丈夫なんですか?」
「それがね、大丈夫なんですよ、むしろそこを楽しんでいる素振りさえある、悪い男です」
「遊んで捨てられるのかな」
「どうでしょうか、男の方は大事にしますよ、でもそういう男の方はモテるでしょ?」
「他の女か、問題は」
「熱烈なのがたくさんおられるようで」
「怖い」
「あの怖さを知らぬのは、その人に恋をする女ぐらいでしょうよ、あそこは美形であることも仕事のうちですからな、そういう一族といいますか」
「なんかそちらの世界と関わらないのが一番な気がした」
「が、あなたは今までの世界では解決しませんよ、それこそあんなのがやってきたら、破滅するしかないし、周囲が助けてくれるわけではありません、我々の世界はそれはありませんから、あなたには住みやすい世界かもしれませんね」
パサァ
そこで弟子は穂のような尻尾を出した。
「そちらの先生にお礼のお菓子を贈りたいのですが、ご住所を、送り先を教えていただけますか?」
「おお、それは、それは、喜びますね」
と連絡先を交換した。

結局この騒ぎで、スマホのSIMカードを破壊状態にされ、交換ぐらいで、先生と弟子からは別途請求などはなかったが。

「先生、やっぱり助けて正解だっただろう」
「うん、そうだね、助けた方がいいって言ってたから、助けたわけだけどもさ」
「毎月十年、菓子折りを届けるなんてのを結ばれたら、やっぱりわかっている相手だったし、見てみろよ」
綺麗な宝石のような菓子が並んでいる。
「これとここのは、わざわざお願いして、似合うようにって作ってくれたものなんだぜ」
弟子は先生と二人だと本来の口調が出てしまうものだ。
「老舗和菓子店には台帳というものがあって、どこの誰にこのようなお菓子を作ったのか、書き付けておくから、そういう意味でも対応は満点だよ」
「そこまで誉めるなんて珍しいな」
「何しろここ20年ほどそういうことをやるやつはいなかったし、もう絶えたと思ってたが、本当に人間は面白いな」
そういって弟子はひょいと菓子をつまみ上げて、そのまま食べ始めた。

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