浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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冬季限定スノーベル

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シャラン
と鳴らせば雨は降り始める。


その日は夜から儀式が行われるとされていたのだが、昼前に集中豪雨になった。
雨が上がる頃に、ずぶ濡れの人間たちが何人か姿を見せる。
「あれ?午後に来るとか言ってなかったっけ?」
「この雨見たら、そうも言ってられるか」
「そうだね、控え室にみなさんもう揃っているので、挨拶してくるといいんじゃないかな」
「そうする」
タオルを受け取り、身なりを整えてから挨拶するようだ。

控え室
「正直心強いですよ」
そう女は言うと。
「そうですかね?」
アイシスの松灰(まつばい)は答える。
「儀式代行に強いところなんて少ないし、実際に依頼してくれるとなると、さらに絞られますよ」
「うちはそれを強みにしているわけではなかったんですがね」
アイシスの勾飛(まがとび)は考えながら口にした。
「儀式代行がそもそも危険極まりないですから、大金が絡んでいても、引き受けてがいないのが現状ですよ。というか、新規参入なんでしょ?」
「そうですね、一年前は別の仕事をしておりました」
「よく集めたというか、…しかもサメまでいる」
ペコッとアイシス所属のイチイくんは頭を下げた。
「今日は楽とは言いませんが、安全に仕事出来そう」
「我々がいないときは、イチイくんにあなたを守ってもらいますので」
「そういっていただけると助かりますよ、実はね、先日ね、儀式失敗したんですよ」
「えっ?」
「それは話して大丈夫なんですか?」
「むしろ話さないとダメなやつなんで」
「ということは原因は人ですか」
「そうですね、たぶん話しているうちにどこの事かはわかるでしょうが、そこはまぁ、お察しくださればと思います」
そして話始めた。
「私は雨を呼び覚まします、ですからついたあだ名としてはこの鈴の関係から『レインベル』冬限定だと『スノーベル』って言われますね」
ここは笑うとこだよ。
「温度までは調整できないというわけですか」
「そそう、それがあんまり理解してもらえないから、キョトンとされるのが悩みかな」
「雨水が得意なのがお家芸からですか?」
「いえ、お恥ずかしい話ですが、人身御供に選ばれたことがありまして」
親しくなったと思っていたのが人ではなかったので、それを知った親戚に、それならば人身御供にとされたのだが。
「そういうことをするために、話をしていたわけではないと、親戚は怒りをかったわけですよ」
「それはまた…」
「なんと声をかけたらいいか」
「そのまま、一度そうなるとね、技術を学ぶまでは半分自棄ですよ、後ろ楯もないから、都合のいい存在としてしばらく仕事してましたね、でもそんな私がこれが出来るようになると、話は変わると」
「そりゃあそうでしょ、何しろ今は…」
「人手不足ですからね、ここはまだいいですが」
そこに先程の雨の中急いで駆けつけただろう地元の人たちが、挨拶に来る。
挨拶が終わったあとに心配そうに聞いてきた。
「これも儀式への不満なんでしょうか?」
さっきの集中豪雨も、彼らからすると儀式がいつもと違うことが原因なのではないか、そう感じてしまうようだ。
「いいえ、大丈夫ですよ、この雨には怒気も嫉妬も含まれてないから、本当にただの不安定な気象条件が重なっただけかと思うし、本当に含まれていたら、儀式できないですよ」
そうレインベルが言うと、一同ホッとしているようだ。
「怒気や嫉妬が含まれると、そこをまず解消しなければなりませんから」
勾飛の言葉に。
「そっか…でも本当に、あんな雨の降り方この時期にも降らないので」
「お気持ちはわかりますが、そんな中駆けつけた人たちをこの地を治める上位の方々は微笑ましく見ていると思いますよ」
「サッ」
「このサメは何といっているんですか?」
「たまたま、この雨は降ったが、この雨の中でも今日の儀式を心配して駆けつけた人たちは、好感度が上がっているだろうから、次の儀式の際にはそのメンバーを中心にした方がいいよ、だそうです」
「そういうものなんですか?」
「サッ」
「人を守ろうとする、ここの地は、鳥なのかな?羽がある、今、こっちを見てる」
「えっ、イチイくん、どこにいるの?」
「サッ」
「神社の松の木の上にいるそうです、カメラとかはそっちには向けないようにって言ってますね」
「写真NGなんだ」
「サッ」
「撮影したい気持ちはわかるけども、遠慮してねだって」
「あの~まるでこのサメの方はお話ししているようにも」
「ああ、河川ザメには人間には見えないもの、聞こえないものが見えているんで、たまにこうして教えてくれますよ」
「年一でこのサメの御方だけでも都合つきませんかね」
「一匹だけは引き受けてないんですよね」
するとなんか揉めた声が聞こえる。
「なんで俺がお役引き受けれないんだ」
「そう決まったんだから、しょうがないじゃないか」

「あちらの方は?」
「さっそくサメの御方の言う通り、雨の中駆けつけなもの、それのみでお役を執り行うつもりにしたんですが、あいつは本来のお役で」
「ということはお偉いさんのご子息ですか」
「はい」
「素直に聞いてくれるといいですが、あれではごねっぱなしですよ」
するとそこで実力で排除し始めた。
「いいんですか?」
「元々素行もね、よろしくないんで、いいんですよ、御言葉がこちらについているから、何怖くありません」
儀式あるある、人との揉め事の采配は上位存在任せ。
「なんでしょうね、あれを見たら、私、すきっきりしました、今ならば最高のテンションで儀式手伝えそうです」
その輝く気持ちのまま儀式は始まり、滞りなく一年の感謝は伝えられた。

シャラン
鈴の音で始まった儀式は、鈴の音で終わるのである。
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